テイマーズの章

第168話 狙う者たち



Side カール


俺は今、ダンジョンパークの農場を視察している。

ここで、主に働いているのは農業用ゴーレムとかいうロボットのような存在だ。

しかも、人型というクールな形をしていた。


「人型にこだわるのは、非効率だと思うが……」

「そこが、日本人のクールなところではないですか?」

「そうだな、ボブ」

「俺は好きですよ、そういうこだわり」

「ボブは、日本のアニメに染まりすぎだ。

昨日のあれは何だ?

異世界物だか何だか色々見せられたが、あんなことあるわけないだろ?」

「あるわけないから、面白いんですよ」

「……」


どんなところが面白いかは、人それぞれだがボブは本当に日本のアニメが大好きなようだな。

そのうち、移住を考えるかもしれんぞ、これは……。


まあ、異世界物アニメはとにかく現実にこういう世界があるとはな。

エルフやら獣人か、実際に見て驚いたものだ。


特殊メイクかと思ったが、どうやら違うようだ。

それに、今目の前で動いているゴーレムも、ロボットとは違う感じだ。

俺は、スマホの写真機能を使い、どんどん写真を撮っていた。


「景色もそうだが、すごいところだなダンジョンパークは……」

「この施設、アメリカにもほしいですよね」

「大使館経由で、日本政府には打診しているんだろ?」

「もちろんです。

ですが、まずは日本国内をと断られていますが、考えてはくれているみたいですよ」

「まあ、他の国からも要請は出ているようだからな……」

「お隣ですか……」

「あとは、ヨーロッパの方面だな」

「人口が多いところは、特にほしいでしょうね。

日本の食糧事情が改善された一番の原因が、この施設ですから」

「ということは、アフリカの諸国からも打診があるわけか……」

「日本政府は、今後どう出るんでしょうか?」

「さあな、どう出てもちょっかい出してきそうな連中はいるだろう……」

「大変ですね……」


どんなものでも、使い方次第で変わるもの。

戦争時の避難場所に、災害時の避難場所、宇宙での利用なら月基地や火星基地か。

そこで、このダンジョンパークの技術を使えばすぐに基地ができて人が住めるみたいだからな……。


俺でも、これだけ考えられるんだ、他の連中が何を考えているのか注意はしないといけないな……。


「そういえば、ここを造った天才は見つかったか?」

「それなんですが、ダンジョン企画は運営を任されているだけのようですね」

「そうなのか?」

「ええ、ダンジョン企画に就職したうちのスパイの話では、ですが」

「バレている?」

「いえ、そんな感じではないようですが、働いてみて運営だけに集中しているとか」

「ん~、ならこの施設を造った天才はどこにいるんだろうな……」

「引き続き、調べてもらいます」

「頼む」


アメリカにもこのダンジョンパークができれば……。




▽    ▽    ▽




Side ???


「それで、誰が造ったのか分かったのか?」

「いえ、ダンジョン企画なる会社の社員は知らなかったようです。

ただ、ダンジョンパークの運営だけをしているとかで……」

「何としても探しだせ!

ダンジョンパークなるあの技術、おそらく空間拡張なる技術だと思われるが構造が想像できん。

我が国の研究機関をもってしても、だぞ?

その天才には、ぜひとも我が国のために働いてもらいものだ……」

「引き続き、調べてみます」

「頼むぞ!」


まったく、日本はビックリ箱だな。

次から次へと、アニメのような世界が現実になっている。

確か、今度は魔物をペットにか?


本来なら、日本を併合なり支配した方がいいのだろうが、それではあんなアイデアは生まれないと研究機関から通達が来たからな。

裏で政府を支配しつつ、我が国のために様々なアイデアを現実にしてほしいものだ。


次の総選挙で、我が国の息のかかった候補が当選し政権を握ることを目指すか……。

まったく、面倒なことをしなければならないとはな……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐太郎


「……で、この企業の裏を取るように政府から注意を受けましたので、現在調査中です」

「なら、それまでは傘下にするわけにはいかないな。

現在ある打診は、断るようにしてくれ」

「分かりました。

では、次の企業からの参入の打診ですが……」


現在、会議室で幹部会議が行われている。

といっても、初期からのメンバーだけが集まっているのだが、最近は気軽に話すこともなくなったな……。


颯太たちが友達で、ダンジョンを利用してテーマパークをするとか言い出した時は、何を考えているんだと頭を抱えたものだが、ダンジョンを見て経験して価値観が変わった。


これは、人類を救うことのできるものだと、な。


だが、ダンジョンマスターに颯太以外がなる方法が分からない。

颯太たちにも、調べてもらっているがいまだにわからないらしい。

何とか、ダンジョンマスターになる方法が分かれば、世界各地にダンジョンを造ることができるし、有効利用することもできる。


ラノベや漫画などで、いきなり世界各地にダンジョンができて大変なことになるなんて話があるが、それは制御できてないダンジョンだからだ。

制御さえできれば、これはすごい便利なものになる。


今の人類を救うことだってできる。

そのうち、科学で再現だってできるだろうが今は、このダンジョンを利用して人類を救いたいものだ……。


「五十嵐さん、聞いてました?」

「あ、す、すまない。

少し頭が、ぼ~としてしまってな……」

「なら、少し休憩しますか」

「ですね」


今は会議中だというのに、他のことを考えてしまった。

いかんな……。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る