第143話 新ダンジョンの階層



Side 五十嵐颯太


さて、まずは最初のダンジョンをコピーした新しいダンジョンをチェックする。

階層は、空間を限界まで広げているので十階層と少ない。

新しいダンジョンも同じように、空間拡張をメインにして階層は最低限の十階層で固定。


第一階層の住人が住む町などは、誰もいない町となっているのですべて破壊して更地へ戻す。

町を新たに造るにしても、テイム能力の追加で造りなおさないといけないんだよな。


第二階層の畑階層、第三階層の放牧地階層、第四階層の海階層、第五階層の山岳階層は、そのまま使用する。

この階層たちは、最初のダンジョンにあるそれぞれの階層と繋げて利用することになる。

もちろん、行き来もできるからそれぞれのダンジョンから出荷することも可能だ。


第六階層のダンジョン階層は、テイム可能な魔物がいるダンジョンを用意する階層になる。

ここは、第一階層と繋げてそこから来られるようにする。

後、最初のダンジョンとは繋げないで単独とする。


第七階層と第八階層は、テイムした魔物や幻獣などを預かる牧場階層にする。

広大な場所に、いろいろなテイム獣を預かり世話をする予定だ。

また、呼び出す際は召喚腕輪などの魔道具で呼び出せるようにする。


第九階層は、最初のダンジョンの第九階層と繋げてトレントを繁殖させてダンジョンの魔素の確保に役立ってもらおう。

最初のダンジョン同様、あっという間にトレントだらけの階層になるだろう。


第十階層は、最初のダンジョンと同じくダンジョンコアの神殿を造って放置だな。

何に利用できるか、暇なときにでも考えよう。



「……こんなものかな。

後は、問題が起きたときに修正を加えていけばいいはずだ」

「マスター、テイム能力はどうやって与えることにしましょうか?」

「現代人に付与なんてできないから、スクロールを使うしかないな。

テイム能力は、魔法能力じゃないし、魔物との主従契約は魔道具を使えば大丈夫なはずだ」


テイム能力とは、いわば魔物などに好かれる能力のこと。

この人と一緒にいたいと思わせることで、テイム魔法にかけやすくするのだ。

テイム魔法は、主従契約を結ばせる、いわば奴隷契約のようなもの。


ただし、奴隷契約と違い主従契約を結んだものとの好感度がなくなると、自動的に解除されるようにできている。

だから、テイム獣を乱暴に扱ったり強制時に従わせるような命令をし続ければ、自然とテイム獣が離れるような仕組みになっている。


「テイムできる魔物などの数はどうしますか? マスター」

「数か……」


モフモフに囲まれたいという変態は多いと思うが、ここは少数といておこう。

……三体まででいいかな。

少ないとクレームが来たら、その都度調整すればいいだろう。


「うん、基本三体まで。

クレームが来たら、その都度調整するということで」

「分かりました。

スクロール作成時には、そのように条件を付けておきます。

後は、テイムできる魔物などの種類についてですが……」

「これは、どう決めたものか……。

弱い魔物から、強い魔物へ階層を移動するごとに出てくるようにするが、テイムできない魔物も出現させた方がいいかな?」

「そうですね……、テイム目的次第で出てきてもクレームはないでしょうが……」

「……ここは、ゲームを参考にしよう。

テイム可能魔物以外も出現させることにする」

「分かりました」


テイム可能な魔物は、ダンジョンでテイムできるようにした。

後は、幻獣とかだな。


「テイム可能な幻獣は、試練を受けて仲間になるという仕様でいいかな?」

「試練は誰が出すのですか?」

「テイムされる側の幻獣本人が出す形にしようかと……」

「……それは良い考えですね。

幻獣は基本、頭がいいものですから契約を結ぶなら幻獣本人を納得させろ、ということですね」


幻獣の中には、大変な試練を出すかもしれないものもいるけど大丈夫だろう。

出題する問題は、ダンジョン内で完結するものと条件をこちらから出しておこう。

後は、幻獣の数か……。


「幻獣の数はどうするかな……」

「おそらく、有名な幻獣は誰もが仲間に欲しいと思われますからね。

固定数が少ないと、知らせておきますか?」

「……それしかないかな。

誰も彼もと、同じ幻獣をテイムできるわけじゃないからな……」


「妖精のテイムは、選ばせますか?」

「いや、妖精側に選ばせようか。

妖精は基本、気まぐれだ。

どんな人物でも、興味さえ惹かれれば容姿に関係なくテイムを望むからね」

「……問題は、熱しやすく冷めやすいところでしょうか。

すぐに好感度が下がり、契約解除されましたとクレームが来そうです」

「それも含めて、妖精だからな。

一応注意書きくらいはしておこう。それで、クレームは少なるはずだ」


さて、後は精霊だけど……。

精霊の場合は、精霊魔法と関係してくるからテイムというより契約となるんだよな。

それに、魔法の使えない地球人では、精霊との契約はまずできない。

……これも、注意書きしておこう。


「……こんなものかな。

あ、あと動物のテイムはどうしようか?」

「動物ですか?

ダンジョン内にいる動物をテイムするものは、いないとは言えませんがかなり少ないと思いますよ?」

「でも、いることはいると思う。

何せ、向こうの異世界の動物たちだ。

中には、見たことない動物も混ざっているし、テイムしようとしてもおかしくはないだろう」

「……そうですか?

でも、動物テイムなら魔物と同じテイムの仕方でいいと思います」


魔物と同じということは、基本弱らせてから主従契約を結ぶ。

これで、すべての対象の調整が終わった。

後は、この夏の開園に向けて父さんたちと調整をしていけばいいかな……。




▽    ▽    ▽




Side ???


「カール、例の動画は見たかい?」

「ああ、拝見したよ。

あの国は、相変わらずやることがクールだ。

私たちには、思いもよらないことを平気でしてくる……」


ある施設の廊下を歩いていると、同僚のジャクソンが話しかけてきた。

今俺たちは、日本にあるファンタジーダンジョンパークなる施設について調べている。


突如、工事期間も無しに現れたダンジョンパークなる施設。

中は、映画も真っ青なファンタジー世界だ。

地球人には、魔法が使えないとあったが、魔道具なる物を介して使えるようになるらしい。


何度か、その魔道具なる物を手に入れられないか打診してみたが、何度上手く持ちだせたとしてもダンジョンパークのトンネルを出るタイミングで消えてしまうのだとか。


不思議な場所だよな。

また、興味を惹かれる場所でもある……。


「そういえば、今度の休みにでもダンジョンパークに行くんだろ? カール」

「ああ、一度この目で見ておきたくてね。

それに、ファンタジー体験ができるって言うなら体験してみたいじゃないか?」

「確かにな」


ジャクソンと笑い合いながら、ダンジョンパークと今の日本のことについて話し合う。

やっぱり今の日本は話題に事欠かないよな……。







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