第140話 追加要素



Side 五十嵐颯太


夕食後の五十嵐家。

家族全員がそろって、新しく入手できたダンジョンコアを使って第二ファンタジーダンジョンパークをどんなものにするか話し合っていた。


「それで、父さんは第二ダンジョンパークはどんなものにするか考えているの?」

「いや、考えていないな。

というより、今のダンジョンパークと同じで構わないんじゃないのか?」

「そうよねぇ。

ダンジョンパークのウリは、現代でファンタジー世界が体験できるってことでしたし……」

「下手に、現存するテーマパークと同じような感じは出さなくていいんじゃないか?」


……確かに、ファンタジーダンジョンパークは、魔法の世界を体験できることが重要で集客を目的にしていない。

人が来なくても、ダンジョン内の住人でダンジョンの維持はできるし、食糧なども保持できる。

このまま、ダンジョンのみで隠匿生活もできたけど、ファンタジーを体験させたいというある意味上から目線の提案で開放しているわけだしな……。


もしかして俺、現代におけるダンジョン生活を間違えたかな?

……いや、こうなったら行けるとこまでとことんだ!


「麗奈はどう思う?

何か、新しい要素か何かを取り入れるべきか、それとも最初のダンジョンと同じようなものでいいのか……」

「ん~、私もお父さんたちと同じかな。

このままで、大丈夫だと思うよ?」

「そうか……」

「お兄ちゃん、もし、新要素を取り入れるとしてどんなことをするの?」

「え、そ、そうだな……」


妹の麗奈に聞かれて、何も考えてなかったことに気づいた。

新要素? 第二ダンジョンパークにだけの新要素って何だろう……。


「……あ」

「何か思いついた?」

「テイム能力はどうだ?

魔物、幻獣、精霊に妖精などなど、友達になれたり仲間になれたり従魔になれたり……」

「!! モフモフ賛成っ!! 

お兄ちゃん! それ絶対取り入れるべき能力だよ!!」

「それ、いいわねぇ。

私、猫派だから猫の従魔なんかほしいわね~」

「俺は、狼の従魔がいいな。

いや、スライムで夏ヒンヤリ寝るのも……」

「ハイ! ハイ! 私は妖精と友達になりたい!

後、子供の狼や子供の虎とか子供の幻獣とかと一緒に戯れたい……」


ということで、即決で第二ダンジョンパークにテイム能力が追加されることになった。


そうなると、テイムした魔物なんかを預かってくれる場所などが必要になるから、こちらで用意しないといけないな。

後、従魔を召喚したり送還したりする魔道具も必要か……。


いろいろ調整が増えたような気がするが、これで第二ダンジョンパークも成功するか……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


「で、テイム能力を第二ダンジョンパークで追加されることになったんだが……」

「良いわね、テイム能力!

私は断然、犬系統の魔物をテイムしたいわね」

「凛は犬派か? 俺は猫派だから、猫系統の魔物をテイムしてみたいな!」


「おいおい陸斗、猫なんて気まぐれで言うこと聞いてくれねぇぞ?

それよりも、俺は狐系の魔物をテイムしてみたいな!」

「狐ぇ~? 悟、まさかお前……」

「フッ、分かってしまうか、同士陸斗よ。

そうだ、狐系の魔物を育てて『人化の術』を覚えさせるのだよ……」

「おま、天才かっ!!」

「その時育てるのは、メスの狐だよな!」

「当たり前だろ? 同士恭太郎!

オスの狐を育てて人化させ、誰が喜ぶんだよ……」

「す、すまねぇ。当たり前のことを聞き返してしまった……」

「良いってことよ……」


陸斗、悟、恭太郎、気づいているか?

周りの女子たちの視線が痛いことに……。

せっかく失恋から復活したっていうのに、陸斗の奴は変わらないな……。


それにしても、人化の術か。

確かに、そんな能力があったはずだ。

DPで交換することもできたはず……。


「颯太? あなたもあのアホたちと同じじゃないわよね?」

「凛、俺はそういうのには興味ないな。

それに、今からテイム能力を追加するための準備をしないといけないから大変になりそうだよ……」

「あ、そうか。

いくらダンジョンマスターといっても、何でもすぐにできるわけじゃないのね」

「ダンジョンマスターは、DPが無いと無能と同じだからな……」

「そんなことないと思うけど……」


まあ、みんな賛成みたいだし使い要素はこれでいいか。

後は、どんな施設を作るかだけど、基本は最初のダンジョンのコピーで第二ダンジョンを造る。


人などの生命体はコピーできないから、最初はだれもいない、設備だけが存在するダンジョンになる。

そこから、階層ごとに何が必要か追加していくわけだが、おそらくあのトレント階層にはトレントがいないだろう。

魔物も生命体と認識されるから、最初のダンジョンから引っ張ってこないと……。



……いや、最初のダンジョンと第二ダンジョンの階層を繋げてしまえばいいのか。

同じダンジョンのマスターだからこそできる、裏技的なものだな。


後は、テイム能力追加に基づく設備を充実していけば完成かな。

……ミアたちの確認を取っておこう。




▽    ▽    ▽




Side エレノア


ダンジョンの空間座標位置を、レストールの町跡から東の誰もいなくなった町中へと移して一週間が経ちました。

レストールの町跡の調査はまだ続いているし、この東の町の調査も始まっている。


調査といっても、どこに何の建物があるのかとかを調べてダンジョン住人の中から、移住者を募って移住してもらうだけなのだけど……。


もちろん、最初に移住するのは各ギルド施設。

冒険者ギルドなんかは、すぐにでも移住をしてほしいところだが、この町でのギルドマスターがなかなか決まらないとか……。


ああそれと、町の名前をダンジョン内の各ギルドで募集している。

いろいろ候補が上がってきているが、一番多いのは私たちダンジョン巫女の名前が入ったものだった。


そういうのは却下したいところだけど、マスターが許可したら決まっちゃうのよね……。


「そういえばエレノア、この町の周辺は調べたの?」

「抜かりないわよ、ミア。

西にレストールの町跡があるのは承知の事実だけど、北に村が二つ。

南は、森が広がっていたわね。

森の中にも、虫ゴーレムや鳥ゴーレムを放って調べたけど遺跡の類はなかったわ。

東は、町が二つに都市が一つ確認出来たわよ」


もちろん、住んでいる人も確認できた。

ただ、この町から最初の東の町の前に大きな砦があったのよね……。


あれって、何のためにあるのかしら?







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