第139話 ダンジョンコア



Side 五十嵐颯太


「……再び、この世界に足を踏み入れるとは思わなかったな」

「マスター……」


コアルームからゲートを抜けて、異世界の地を踏む。

忌まわしい過去の記憶がよみがえるが、俺を苦しめた連中はもうこの時代にはいない。

聖王国自体が滅び、何百年と経っているんだ。

そう納得させて、今は別の目的のために頭を切り替える。


「それでミア、野良ダンジョンを発見した場所はどっちの方角?」

「……あちらです、マスター。

あちらの方角に、ダンジョンの口が開いていたと報告がありました」


俺が再び、異世界の地に立ったのも調査報告の中に、レストールの町跡から少し離れた場所にダンジョンの口を発見したとあったからだ。


ダンジョンの口といったのは、まだダンジョン化していない真新しい状態のダンジョンだからだ。

ダンジョンはまず、洞窟のような口が開く。

そこへ動物なり、魔物なりが入りコアに触れるとダンジョンマスターとなって、自動でダンジョンが形成されていくらしい。

階層が生まれていくのも、生存本能で死ぬことに恐怖を覚えるかららしい。


つまり、階層が多いほどダンジョンマスターは死への恐怖に駆られているということだ。


「とりあえず、まずは案内してくれミア」

「はい、お任せください」


そう返事をすると、こちらですと俺の前を歩き先導してくれる。


さて、目的地まで少し暇なのでダンジョンについて少し話しておこう。

先ほど、俺が野良ダンジョンと呼んだことを覚えているだろうか?

ダンジョンには、大まかに分けて三種類が存在する。


まずは、この世界の大半のダンジョンである『野良ダンジョン』だ。

これは、ダンジョンマスターが、動物や魔物などの思考能力の低いものがなった場合に造られるダンジョンだ。

その場合のダンジョンの階層などは、さっき説明したように、マスターとなった動物なり魔物の生存本能が影響する。


また、本能のままに造られるダンジョンであるため難易度は、ダンジョン内に出現する魔物などの強さによって決まる。



次の種類は、『知識ダンジョン』と呼ばれる。

その名の通り、知識あるものがダンジョンマスターになった場合に形成されるダンジョンだ。

このダンジョンの特徴は、ダンジョン内に出てくる宝物の価値が高いこと。

また、階層などは野良ダンジョンと同じ生存本能によるため、多くなる傾向にある。

だから、よく野良ダンジョンと間違えやすいのだが、宝物の価値で判断するとすぐに分かったりする。


それと、このダンジョンには、休息所が存在する。

所謂、セーフティーゾーンというものだ。

そのような場所に、町や村を冒険者ギルドや探索者ギルドが作ることがあるとか。



最後は、『神のダンジョン』もしくは『転生ダンジョン』と呼ばれるダンジョンだ。

その名の通り、神々の都合や魔素の状況に応じてダンジョンマスターが送り込まれて形成されるダンジョンだ。


このダンジョンの特徴は、平和なダンジョンが大半だということ。

そして、ダンジョン内に町が必ずつくられ周辺諸国との関係も良好になることが多い。

ただし、マスターを怒らせるとすぐに牙をむき、滅ぼされることがあるので要注意だ。



……こんな感じかな?

一括りにダンジョンといっても、多種多様なダンジョンがあるらしい。

後、俺のダンジョンは、三番ではなく二番が近い。

何せ、無理矢理に俺の身体にダンジョンコアを埋め込まれて、ダンジョンマスターとなったから特別な力とかほとんどない。



ダンジョンについてのちょっとした知識を考えていると、目的の場所に着いた。


「マスター、あれが発見したダンジョンの口です。

中に何も入らないように、見張りのゴーレムを絶たせておきました」

「そうか、ありがとう。ミア。

それじゃあ、早速中に入ってダンジョンコアを確認しよう。

まだ、ダンジョン化していなければ入ってすぐの場所にダンジョンコアがあるはずだ」

「はい」


見張りの騎士ゴーレムに挨拶をして、俺とミアはダンジョンの口から中へ入った。

すると、思った通りダンジョンコアが部屋の中心で鈍く輝いている場所が出現した。


「……どうやら、真新しいダンジョンコアのようだな」

「はい、これでマスターのダンジョンが増えますね」

「ああ、父さんの要望通り、ファンタジーダンジョンパークをもう一つ造ることができる」


そう言いながら、俺はダンジョンコアに近づき手で触れる。

すると、ダンジョンコアと俺がひときわ輝き、そしてダンジョンコアが消える。


「消えた……」

「大丈夫だよ、ミア。

ダンジョンコアは、俺のもう一つのダンジョンコアと一つになって存在している」


俺の心臓の側にあるダンジョンコアに、もう一つのダンジョンコアが吸収されたことが感じ取れた。


「それじゃあ、外に出るか」

「はい」


ダンジョンコアの無くなった空間から外に出ると、ダンジョンの口がゆっくり閉じて消えた。

だが、消滅したわけではない。

何故なら、ここのダンジョンコアは俺の中に存在しているのだから……。


「久しぶりに、俺のステータスを出してみるか【ステータス】」



名前 五十嵐 颯太 (いがらし そうた)

年齢 17歳

職業 彩桜大付属高校二年/ダンジョンマスター×2

称号 異世界帰還者 

能力 異世界言語理解 アイテムボックス ダンジョン創造×2



「……あれ? 能力とか称号が増えてないな。

でも、ダンジョンマスター×2ってなんだよ、コレ……」


いろいろとおかし表示になっているが、増えたと思っていた能力や称号は変わらなかった。

もしかして、きちんと身につけていないと判断されているのかな?

……まあ、今は考えてもしょうがない。


第二の、ファンタジーダンジョンパークについて考えよう。

どこに設置するかは決まっている。

だけど、第二のダンジョンパークは最初のダンジョンパークとは差別化した方がいいかもしれないな……。


これは、みんなと相談して決めるか。








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