第138話 空賊退治 その後



Side ディアナ


空賊たちを避難所から追い出し、それを追って私も外へ出た。

そして、出たと同時に持っているショットガンを構える。


が、そこには倒れた空賊を、この町の衛兵が捕縛をしたり冒険者と思われる人たちが押さえつけたりしている光景が目にはいった。


「おい! そっち、今のうちに捕縛しろ!」

「こっちの奴も捕縛してくれ!」

「こっち! ケガしているぞ!」

「……あれ?」


私は周囲を見渡し、構えていたショットガンを降ろす。

すると、すぐに衛兵の一人が近づいてきた。


「失礼! あなたが、避難所から空賊を投げ飛ばした方ですか?」

「なげ……、ええ、まあ、そうですが……」

「ご協力、ありがとうございます!

それと、町で暴れていた空賊は、ほぼ全員を取られることができました!」


笑顔で私にお礼を言った後、空賊の状況を知らせてくれた。

彼の話によれば、町に入ってきた浮遊帆船をまずは襲撃し、操舵ができなくして墜落させて町を混乱にさせた後、町への襲撃掛けたそうだ。


だが、町にはまだ別の浮遊帆船も止まっていて、それに貴族が乗船していたから護衛の冒険者や騎士たちが多くいた。

そして、その貴族が空賊退治に協力してくれたおかげで、町へ襲撃していた空賊の大半をここで討伐できた。

後は空賊のリーダーを討伐、あるいは捕縛するだけという時に町の避難所になっている冒険者ギルド所有の訓練所が襲われたと連絡がきて、駆けつけたのだそうだ。


「避難所の警備は、この町の衛兵や冒険者に任せていたので、襲撃しやすかったのでしょう。そのため、襲われてしまったと聞いて焦りました。

それで、すぐに人を集めて避難所に向かいましたところ、入り口から空賊が飛び出してくるところでした」


空賊が飛び出してきたとき、この衛兵さんをはじめ協力してくれた冒険者たちも驚いたそうだ。

まあ、飛び出してきた空賊は、白目をむいて気絶していたのだから当然か……。


「唖然としているところへ、大きな音とともに次々と飛び出してくる空賊!

何が避難所で起きているのか分かりませんでしたが、冒険者の一人が武術使いが投げ技で空賊たちと戦っているのだろうと予想してくれました」


避難所の中で、武術使いが空賊相手に戦い、必殺の一撃で吹き飛ばしているのだろうと予想されたとか。

なるほど、ショットガンの発砲音が武術の必殺の一撃の音と誤解されたのか……。


だがそこに、避難所に来た親子連れが衛兵さんたちとは反対側から侵入してきた。


「私もその母娘を見つけて、すぐに注意しようとしたんですが空賊の手の方が早く、娘さんを攫われてしまって……」


で、あの人質ってことか。

空賊が、娘を人質に避難所の入り口から姿を現したところで母親が後ろから掴みかかり、娘を救出した。

だけどその時、空賊の持っていたナイフが母親の腕を切りつけケガを負ってしまった。


「あの時はすぐに空賊を抑えて、あの母娘をと動いたのですがあなたの方が早かったようで、あの衝撃音とともに空賊は吹き飛ばされました。

そして、あなたが姿を現した……」


その後は、冒険者たちが素早く衛兵たちを促して空賊の捕縛に動いていたので、あの光景になったらしい。


「いや、本当にありがとうございました!」


衛兵は、もう一度私にお礼を言うと空賊たちを連れて行ってしまった。

去り際、私に冒険者たちが軽く一礼していたのが気になったが……。



「ディアナちゃん!」


そう言って抱き着いてくるシーラさん。

確りと抱きしめてくれるシーラさんは、本当に私のことを心配していたんだろうな。


ふと避難所の中を見れば、あの母娘の手当てが行われているところが見えた。

そう言えば私、あの母娘の心配よりも空賊の連中を倒す方に夢中になっていたみたいだ。

シーラさんに抱きしめながら、私は少し反省した……。




▽    ▽    ▽




Side リーナ


避難所のベッドで目を覚ますと、隣でディアナとルリィが寝ている。

窓の外を見れば、夜中だ。

確か、避難してきたときは昼間だったから到着してからずっと寝ていたのか。


「私、そんなに疲れていたのか……。

あ、そういえば空賊たちはどうなったのかな……」


窓の外を眺めるも、暗くて何も見えない。

明日、起きて空賊がどうなったか聞いておこう。


「ん?」


ベッドに戻って、眠りに就こうと窓から離れると机の上にショットガンを発見した。

……どうやら、手入れを行った後のようだ。


「地球武器だ……。ディアナが持ってきたのかな?

魔素のある世界だと、威力が少し落ちるらしいけど結構使えるんだよね。

そう言えば、ガンナーという職種があったわね」


ダンジョンマスターが考案した、魔導銃が作られ始めてガンナーという職種が誕生したとか。

確か、集中力が上がり命中率も上がるんだっけ。

ただ、魔導銃が主体の職種だから、地球武器の銃だと職種の恩恵を受けられないって聞いたな……。


「それでも、便利は便利だから使う人はいるらしいとは聞いたけど、こんな近くに使っている人がいるとは……」


私は、ベッドの上でルリィに抱き着かれて眠るディアナの寝顔を見る。

穏やかな寝顔に、少しほっこりした。


「それにしても、調査の方はどうすればいいのか……。

冒険者ギルドは、空賊のおかげで壊滅状態だし……。他のギルドでも調べることができるのか、朝になったら相談してみよう」


そう結論を出し、私は再びベッドに潜りこんで眠る







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る