第137話 空賊退治
Side ディアナ
冒険者ギルドの持つ訓練所を、一時的な避難所として避難してきた私たちの前に空賊の男たち三人が姿を現した。
町を守る冒険者や警備兵を相手に、無傷で圧倒する空賊。
地上に降り立って戦っているというのに、圧倒的な戦力で好き放題暴れているようだ。
そして、避難所の入り口に立ち、誰も逃がさないと仁王立ちしていた。
そんな空賊と戦っていた冒険者四人が、この避難場所に逃げ込むも人々のことを考え直し、空賊に改めて立ち向かおうとしている。
だけど、誰が見ても負けそうであった……。
私の側にいるシーラさんは、私の腕を強く掴んで緊張している。
出来れば、この場から逃げたいのかもしれない。
だけど、今動いたら空賊に目を付けられてしまいそうだ……。
「おいおい、よえぇ町の衛兵が何粋がってんだよ!
それとも、冒険者の方か?!」
大きなナイフを構えると、傷だらけの冒険者たちに威嚇する空賊の一人。
その後ろで、入り口をふさいで仁王立ちしている男。
表情はニヤニヤと、嫌らしい笑みを浮かべていた。
そして、もう一人の空賊の男は周りにいる避難民を見渡し、お宝と一緒に攫う者を品定めしているようだ。
女性を見るたびに、ニヤッと笑ったりムスッと不機嫌になったりしている。
「こ、ここは、お前たちの襲撃から逃げてきた避難場所だ!
戦うなら、表に出ろっ!!」
「ふはははっ! お前らが先に逃げ込んでおいて、何だその言い方は!!」
「おいっ! 売れそうな女に目星付けた! 外の連中呼んで、片付けさせろっ!!」
「分かったぜ、リーダー。
おいっ! 何人か来いっ! リーダーが攫う女を見つけたぞ!!」
そう外に向けて叫ぶと、次から次へと黒い軽鎧を付けた空賊と思われる男たちが避難所のロビーに入ってくる。
もともとここは、冒険者ギルドの訓練場なので大勢の冒険者が利用できるように、ロビーは広く造られているので、空賊連中が中に入ってきても狭くは感じない。
それどころか、ますます傷ついている冒険者たちが委縮しだす。
町の衛兵にいたっては、絶望的な表情だ。
「ディ、ディアナちゃん。ど、どうしましょう……」
「落ち着いて、シーラさん。
たぶん、私一人で何とか出来るから……」
私の言葉に驚くシーラさん。
そして、私は一歩前へ歩き出す。
腰の鞘からショットガンを取り出しながら……。
「ん? 何だ、あんた。俺たちと遊びたいのか?」
「イイねぇ~、良い身体してんじゃねぇか!」
「お、おい! そいつらに近づいて…は……」
私を止めようとした冒険者に、威圧し黙らせる空賊。
そして、ニヤニヤ笑いながら両手を広げ、空賊の男が私の前に立ちふさがる。
「戻りなお嬢ちゃん、夜のお相手なガッ!!!」
ドンッ!!! という発砲音とともに、白目をむいた空賊が転がるように外へ吹き飛ばされる。
何が起きたのか理解が追いつかない、冒険者たちに町の衛兵たち。
そして、一番呆然としていたのは空賊の連中だった。
シンと静まりかえる中、私が起こしたポンプアクションの音だけが響いている。
そして再び、ドンッ!!! という発砲音が響き、空賊の男が外へと吹き飛ばされる。
私のポンプアクションの音が響く中、ようやく理解が追いついた空賊が叫んだ!
「な、何だっ!! その武器はガッ!!!」
ドンッ!!! と発砲音の後、私が再びポンプアクションを起こすと、まず空賊の連中が武器を構える。
さらに、冒険者や町の衛兵たちが気づき、武器を構え直した。
「ぼうっとしてんじゃねぇよ! ……なんてね」
「ふ、ふざけるな!! 女っ! 何のつもりだ!!」
「何のつもりって、空賊退治ですけど?」
「ふ、ふざけんなァガッ!!」
ドンッ!!! と発砲し近くで粋がっていた空賊を避難所の外へと吹き飛ばし、ポンプアクションを起こす。
すると、カランと薬莢が床に落ちる音が鳴った。
「どうしたの? さっきまでの勢いがないわよ?」
ショットガンの銃口を空賊たちに向けて、一歩一歩近づいていく私を見て、空賊たちの顔色が変わり始めた。
青くなるものは、ゆっくりと後退し始める。
赤くなるものは、全身に力が入りすぎていて震えている。
ドンッ!!! と発砲音とともに外へと吹き飛ぶ空賊。
だが、一人の空賊の男が何かに気づいたのか、ニヤリと笑みを浮かべた。
その間も、私はポンプアクションを起こした後、空賊を撃ち、外へと吹き飛ばしていく。
「う、うわあああぁ!」
「お、おい! 逃げるなあ!!」
「じょ、冗談じゃねぇ!!」
「あんな攻撃あんのかよっ!!」
何人かの空賊が、恐怖のあまり避難所の外へと逃げ出した。
それを入り口に仁王立ちしていた男が止めようとするが、逃げ出す者たちは止まらない。
その間に、私は腰に付けていたポーチから弾薬を装填していく。
地球武器のショットガンの弾薬に、魔法の爆発力を付与したダンジョンマスター様が考案された特別な弾薬を。
まあ、そうでなければ人を何十メートルも吹き飛ばすほどの、威力のある弾薬なんてあるわけないでしょ?
地球武器のショットガンだけでは、銃身の方が吹き飛んでケガするわよ……。
「後は、あなただけのようだけど?」
ショットガンの銃口を、仁王立ちしていた空賊の男に向ける。
だが、その男はニヤついた表情のまま、私の方を見ている。
何を考えているのか分からない……。
そう思った瞬間、男が動いた。
すぐに私は、引き金を引こうとした指が止まる。
「……ひっひひっ、やはり女だな。
子どもを盾にすれば、動けなくなるのは……」
「何言っているの? 女だろうが男だろうが子供を人質に取られて、攻撃できるわけないでしょう……」
「動くなよ? 動いたら……」
「………」
私は、銃口を空賊の男に向けたまま動けないでいた。
男の胸の前には、首を掴まれナイフの刃を向けられている女の子がいる。
どうやら、避難所に入ってきたところで捕まったようだ。
外から、母親であろう女性の子供の名前を呼ぶ声が聞こえる。
じりじりと、下がっていく空賊の男。
私は、動かずに銃口を向けて狙いを定めていた。
膠着状態で、このまま逃がしてしまうのかと思われた時、男の後ろから一人の女性が飛びかかった。
「なっ! 何だ、この女はっ!!」
「娘を、放してっ!!」
「ママっ!!」
揉み合いになり、空賊の男のナイフが女性の右腕を切りつける。
それと同時に、女性は娘の救出に成功した!
腕を切られながらも、しっかりと娘を抱きしめる女性。
女の子も、母親にしっかりとしがみついた。
「くっ、くそガアッ!!!」
私は母娘が男から離れたことを確認すると、躊躇なく引き金を引く。
ドンッ!!! と発砲音が響き、空賊の男は白目をむいて避難所の外へ吹き飛ばされた。
私はポンプアクションを行い、薬莢を床に落とすと避難所の外へ走り出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます