第133話 真実はどこに
Side ディアナ
私は町に到着後、早速リーナとルリィの二人を連れて冒険者ギルドへ足を運ぶことにした。
町にある冒険者ギルドは、中央辺りに建てられるのが昔からの決まり事。
この町も、他の町と同じだと思い歩いて探す。
「ディアナ、あったわ」
私たちの先を歩いていたルリィが、冒険者ギルドを発見。
その建物を指さして、教えてくれた。
「……冒険者ギルドの看板、間違いないようね」
「中に入って、資料室で情報収集ですよ」
「「了解」」
リーナとルリィの返事を聞き、ギルドの入り口から中へ入る。
ギルド内は、どこの冒険者ギルドとも変わらない造りになっていて掲示板に貼られている依頼書を横目に見ながらカウンターへ向かった。
「いらっしゃい、ようこそ冒険者ギルドへ。
ご依頼ですか? それともご登録ですか?」
「私たちの登録をお願い」
「では、こちらに必要事項を書いて提出をお願いします」
そういうと、受付嬢は三枚の紙を私たちの前に出した。
名前、年齢、得意武器、魔法か魔術が使用できるか、などを記入して提出する。
その中でも、名前と年齢は必ず記入するようになっている。
「これで、いいかしら?」
「はい、確認しますね。
………はい、きちんと記入されています。
では、こちらのカードに血を一滴たらしてください」
そう言って、白いカードを私たちの前に出してきた。
これが錬金術で作った、ギルドカードだ。
私たちは躊躇せず、腰のナイフを取り出し指先を少し切って血を出し白いカードに付ける。すると、白いカードは一瞬光ると白いカードに私の名前と年齢が刻まれていた。
「……名前が出れば、そのカードは皆様のギルドカードとなります。
依頼を受ける際は、依頼書とともに提出してください。
また、身分証としても使えますので大切に身につけるようにお願いします」
私たちは、白いギルドカードを懐にしまうと受付嬢に質問した。
「早速、ギルドの資料室を利用したいんだけど」
「では、あちらの階段から二階へどうぞ。
資料室は、二階にありますので」
「分かったわ、ありがとう」
「またのご利用、お待ちしております」
そう言って、笑顔で一礼する。
ここのギルドは、職員教育が行き届いているようだ……。
私たちは、階段を上がり二階の資料室へ入っていく。
「……冒険者ギルドにしては、置いてある本の量が多いわね」
「それで、まずは何を調べます?」
「まずは歴史。レストールの町で何があったのかとか、探してみて」
「「了解」」
返事をすると同時に、本棚へ移動を開始。
ここ百年ほどの歴史を調べて、今がどうなっているのかを知るのよ。
▽ ▽ ▽
Side ディアナ
この地の歴史書を読みふけること一時間。
ようやく、何が起きたのか大体のことが分かった。
ここに来る前に、ギルドから聞いた話から勇者隊の反乱があったとか言われていたけど、この歴史書には一切そんな記述はなかった。
それどころか、勇者オオノとダンジョン巫女のミア様との取り決めや取引の話も伝わっていない感じ。
だからある日突然、レストールの町に魔王が出現して十日間暴れまわり、帝国領の辺境にダンジョンを出現させ地下深くに潜り魔物たちをダンジョンから地上に解き放ったらしい。
そのため、辺境の地は大混乱が起き、人々は逃げ出し帝国や教会との戦いが始まったとか。
勇者オオノ率いる勇者隊が、ダンジョンに籠る魔王に対し戦いを挑むもそれまでの平和な時が勇者隊の弱体化を招き大惨敗して撤退したらしい。
その後、勇者隊は解散し魔王討伐隊を結成して再度戦いを挑んでいる。
また、勇者オオノもダンジョンでの敗北で大きなケガを負い、それがもとで亡くなってしまい、その後を勇者の子供たちが引き継いで魔王討伐隊の一人として戦いをしているとか。
「……どうも、捏造のような内容ですね。
真実はおそらく、勇者地の反乱、魔王の出現、勇者隊と勇者オオノの戦いを一時停戦し魔王にあたる。
が、魔王が強く勇者隊は逃走。勇者オオノは、大きな傷を負い撤退。
で、魔王復活を知らせて傷が元で死亡。
こんなところか?」
「ディアナ、よくそんな結論になるわね」
「ギルドから知らされた報告に、他に記載されている歴史書をまとめたものよ。
ここにある歴史書、全部内容がちょっとずつ違うのよ?
それをまとめたら、こんな予想になったわ……」
おそらく、横やりを入れたのは教会でしょうね。
プライドの塊みたいな連中がいるからね、神を信じる者が権力なんか持つなって話よ!
「それでディアナ、魔王との戦いは今も?」
「ええ、続いているみたいね。
ここ、ここに先月の話が載っていたわ。
……新生魔王討伐隊は、旧帝国領の東の辺境にあるルバンガ領ダンジョンに挑むも、第二十六階層にいるヴァンパイアの卑怯な罠にかかり、犠牲者が多く出てしまい撤退を余儀なくされた。
魔王はもっと深い階層にいるはずだが、これ以上は戦うこともできない。
新生魔王討伐隊は、随時隊員を募集中だ。
とあるわ。つまり、負けが込んで進んでいないってところね」
「……なるほど、だから町から逃げ出す人が増えているのか。
この町の人が少なく感じたのは、そんな理由があるからか……」
そこへ、ルリィが一冊の本を持ってきた。
「それだけじゃないわ。ディアナ、リーナ、これを見て」
「……帝国の皇族が隣の大陸へ避難?
!! それに、帝国貴族も避難を開始した?!」
「どういうこと? 確か帝国の皇帝は、賢帝だって聞いたわよ?」
「それなら、ここ。この記述を見ればわかるわ……」
ルリィが、本のページを何枚かめくって指さす。
そこにある記述が、真相を語っている。
「え~と、は?! 皇帝暗殺?! 犯人は妹?!
何これ、賢帝である皇帝を暗殺したの? 終わってるわよ帝国!!」
「ディアナ、静かに!
それに、この暗殺事件、皇帝の妹が起こしたって書かれているけど、こっちの記述を見て。
ここには、皇帝の妹は隣の大陸のフレンティア王国に嫁いでいることになっているのよ」
「??? もう、何がどうなっているのよ!
本ごとに、記述が違っているなんて……」
リーナが混乱している。
でも魔王復活の影響で、事態が悪い方向へ悪い方向へと動いているのね。
帝国は、次の皇帝を即位させたが前の皇帝がやり残した事業や改革を受け継ぐことはできずほとんどが元に戻ってしまう。
そして、貴族の傀儡となる皇帝。
そりゃ、魔王が復活してすぐに隣の大陸に逃げ出すわよ。
……でも、そういうことなら、今この地を治めている長はいないということになるわね。
各地でダンジョンも増え始めたおかげで、逃げ出す人もいるらしく放棄された村や町があるとか……。
この情報は、何かの役に立つかな……?
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