第109話 奴隷落ちの男と不審な気配
Side ミア
奴隷商の受付嬢に衛兵を呼んでもらい、気を失ったままの男たち二人は、私たちの証言を聞きそのまま犯罪者として奴隷落ちが決まりました。
しかし、奴隷期間は短く済むでしょう。
「それにしても、受付嬢だけで他の方たちはどこにいるのでしょうか?」
「あの受付さんに聞いてみますね」
そう言うと、凛さんは受付にいる女性に話しかけています。
二言、三言話すと戻ってきました。
「奥にいるそうです。新しい奴隷が騒がしいとかで……」
「……なるほど、あの男たちの友達という方ですか」
「たぶん、そうだと思います」
私たちは、受付嬢に許可をもらい店の奥へと進みました。
二十メートルほど続く廊下の先の部屋から、何か話声が聞こえてきました。
かなり大きな声ですね……。
――――コン、コン。
『はい! 今取り込んでいて「助けてくれっ!!」おいっ!』
『きさま! 自分の立場が分かってるのかっ!!』
『うるせぇ! 俺は客だぞ!! こんなもの嵌めて奴隷何て、人権侵害じゃねぇか!!』
『犯罪犯したんだ! こうなるのは当たり前だろうが!!』
『そんなの関係ねぇ! ここを出たら、訴えてやるからな!! 覚悟しとけよ!!!』
『この!!』
何やら、かなり揉めているようですね。
しかも、お客様は神様ですなどと本当に信じているのでしょうか?
お店にとって、害にしかならない客はお客じゃありません。
私は、ドアを開けて中へ入ります。
すると、そこには力強い男たち二人に取り押さえられる日本人の男が一人。
この人が、奴隷落ちした日本人でしょう。隷属の首輪を嵌めていますし。
「あ、あんたら運営の人だろ!
こんな奴隷落ちなんて聞いてないぞ?! どうなってんだよ!
早く助けてくれ!! 明日試験があるんだからよぉ」
男の視線で、私たちのことに気づいた男が話しかけてきます。
そして、もう一人の獣人の男が話しかけてきました。
「どちら様ですかな? もしかしてこの男の関係者なのか?
だとするなら、衛兵を呼びますが?」
「あなたがこの奴隷店の店長ですか?」
「ええ、ブルング奴隷店の店長のブルングといいます。
で、そちらさまは?」
私たちのことを、品定めするような目つきで睨んできます。
取り押さえられている男の、関係者と思われているようですね……。
「私は、ダンジョン巫女のミア。こちらは、私の友人の凛さんです。
日本人が奴隷落ちしたとかで、確認のために来ましたが……」
「ダンジョン巫女様ですか! こ、これは失礼しました!
こ、この男が奴隷落ちした、日本人という種族です。
今、奴隷落ちした経緯やこれからの罪の償い方を教えていたのですが……」
「言うことを聞かず、暴れまわって逃げようとした、と?」
「はい……」
取り押さえられている男を見ると、まだ放せだの帰らせろだの叫んでいますね。
ここでの犯罪は、日本での犯罪と同じであり、その償い方はここでのやり方に任されている。
と思われます。確認したわけではありませんが、マスターのお父様がそう仰っていましたね。
私は、取り押さえられている男の前に立つと質問しました。
「あなたは日本人で間違いありませんか?」
「そ、そうだ! 俺は日本人だ! 早くこれを取って解放してくれ!!」
「あなたは罪を犯しました。それは自覚していますか?」
「罪? 何の罪を犯したって言うんだよ!
さっきから、こいつらも罪罪って言うがどんな罪を犯したってんだ!」
どうやら、ココにも法律があって違反したことが分かってないようですね。
これはちゃんと説明しますか……。
「あなたは、性奴隷を購入しましたね?」
「……何を言うのか分からないが、性奴隷を購入することが罪だっていうのか?!」
「いいえ、奴隷購入は罪になりません。
しかし、性奴隷に対してしたことが法律に違反してあなたは犯罪者となったのです」
「は? はああああぁぁあ??!!!」
驚愕していますね。
ここまで驚いた人を、初めて見ました。
「な、何言ってんだ! 性奴隷にしたことって、みんなしていることだろ!!
セックスしようとして、何が悪いんだよ!!」
「別に、セックスが悪いわけではありません。
ただ、あなたは無理やり行為に及んだことが犯罪なのです。
それも、友人と称する複数の男たちとともに、ね」
この男を告発した女性奴隷は、男とだけの契約を結んでいたが購入されたその日のうちに複数の男たちとやらせようとしたとありました。
その男たちも捕縛して、奴隷落ちの手続き中ですが何を考えているのでしょうか?
奴隷なら何をしてもいいと、勘違いしているようですね……。
おそらくですが、そんなエロ漫画なりエロ小説なりの知識からなのでしょうが単純すぎます。
「いいですか? 性奴隷とは、日本で言う風俗のようなものです。
きちんと契約によって成り立っているため、契約以外のことは犯罪となります。
あなたも、性奴隷を購入するとき、いろいろと制約を結んだはずですが?」
「……そういえば、制約が何たらとか言っていたような……。
でも、長すぎて覚えられるか!!」
「ハァ~、契約を無視したあなたの落ち度です。
犯罪奴隷落ちした者は、誰であれ犯罪者です。ちゃんと罪を償ってもらいます」
「そ、そんな! だ、第一何でこんな場所に、独自の法律があるんだよ!
ファンタジー世界に法律なんて、おかしいだろうが!!」
やはり、こんな知識でいたのですね……。
もしかすると、ここに来ている日本人の大半がこんな認識なのでしょうか?
「人が町や都市を造れば、ルールが必要になります。
そうしないと、安心して隣の人を信用できませんからね?
だからこそ、法律が存在しているのです。
……分かりましたか?」
「……ク、クソッ!!」
男は取り押さえられたまま、拳を床に叩きつけて悔しがります。
こんな人たちばかりがダンジョンパークに来ているようなら、法律があることを宣伝しないといけませんね……。
▽ ▽ ▽
Side ルーゼ
ある程度情報を収集した私は、いったんダンジョンに戻ることにした。
ギルドにあげておかないと、情報が届かないんだよね……。
「……ん?」
こっちの世界に来た時とは逆に、ダンジョンと繋がっている場所に扉を出現させる魔道具を使って扉を出現させ、ノブに手を掛けようとした時、誰かの視線を感じた。
気になって周りを見渡すが、誰もいない。
気のせいか? と、扉を開けて中へ入る。
すると、レストールの町へ行っていた他のギルドの人たちが三人ほど、ギルド職員と話している。
ここには、当番制で各ギルドの職員が待機している。
その人に話して、情報を提出すれば再び向こうの町へ行くまでは休暇となるんだ。
依頼期間中に、何度レストールの町に行き情報を収集するかが決められているため、こんなやり方をしている。
また、多くの人たちが各ギルドから依頼として受けているためでもあるかな。
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