第107話 尋問
Side ベルガ
……ここは、どこだ?
確か俺たち三人は、ダンジョンへの入り口を見つけて侵入。そこで……。
そこで、何を見たか思い出せない……。
「グッ、な、何だ?」
拘束されている? しかも、椅子に座らせられた状態でか。
腕に拘束具の感触がある。後ろ手に腕を拘束しているのだな……。
しかし、目を開けているのに何も見えない。
……いや、これは黒い布で目隠しをされているようだ。
ということは、俺は敵に発見され拘束までされたということか。
「な! 何だこれは!」
「その声! ドーズ、ドーズか!」
「その声、ベルガさん! ベルガさん、これは一体どうなっているんですか?!」
「俺にも分からん。だが、敵に捕まったことだけは、お前にも分かるだろ」
「クソ……」
右から、仲間のドーズの声が聞こえる。
どうやら、俺とドーズは同じ場所で同じように拘束されているようだ。
だが、問題はこれからだな……。
俺たちを拘束した連中は、俺たちから情報を聞き出すつもりだろう。
そして、頑なに拒否し続ければ……。
拷問は辛そうだな……。
▽ ▽ ▽
Side ???
レストールにある歪みに潜ってから、ベルガたち三人の生存カードが反応しなくなった。
この生存カードは、今は亡き勇者ナナカ様が考案して職人たちが作った魔道具だ。
このカードのおかげで、冒険者などの生存確認がしやすくなるばかりか、救助などがしやすくなった。
「ポーグ、どうだ?
誰か、中へ入っていったか?」
「いや、今のところ誰も近づいてきていないし中へも入っていない。
それより、中へ入ったベルガたちの生存カードの反応が無いんだが……」
「まさか……。本当だ、生死不明になっている。
でも、救援要請は出ていない……」
生存カードには、何項目かの表示があってその表示を押すことでパーティーを組んでいる人物の生存カードに表示されてわかるのだ。
今、パーティーを組んでいる俺の生存カードには生死不明の表示のみが記されていた。
ここに、救助要請表示があれば、ベルガたちの危機が分かり仲間とともに救助に向かえるのだが……。
「今は動けないな……」
「とにかく、今は様子を見るしかない。
明日には、勇者隊が到着する予定だ。それまで生きていてくれれば……」
「リュード、他に潜入している連中がいるだろ?
そいつらにも、このことを知らせた方がいいかもな。不用意に近づくな、と」
「……分かった」
リュードはそう言うと、ポーグの場所から離れた。
そして、ポーグは再び、歪みの見張りに戻るのだった……。
▽ ▽ ▽
Side エレノア
外泊の町の建物の一室に、潜入してきた男たち三人を椅子に拘束して放置している。
もしかしたら、この三人を救出に来るかもしれないからね。
でも、半日待ってみたが誰も救出に来る者はいなかった。
もういいだろう。
そう確信して私は、拘束している三人の前に姿を現す。
だが、三人は目隠しをしているから私の姿は見えないでしょう。
「誰だ! 敵か!?」
「敵かって、敵じゃないわよ」
「女? 敵じゃないということは、俺たちの味方か?」
「ん~、味方かどうかは私の質問に答えたならわかるわ」
正面で喋っていた男が黙る。
私を、敵か味方か判断がつかないのだろう。右隣の男はまだ気絶しているようだし、左隣は黙ったまま。
「さて、あなたたちは帝国の者で間違いないわね?」
「……間違いない」
「じゃあ、所属を詳しく教えてくれる?」
「……ロスオーディス帝国レストール領コルハード支部斥候ギルド所属のベルガ・クルザーだ」
「……クルザー、と。名前まで教えてくれてありがとう。
次に、両隣りにいる男たちだけど?」
「両隣? ドーズは確認したから、もう一人はキルザだな」
「ドーズと、キルザ、ね」
どっちがどっちか分からないけど、三人の名前は分かった。
それにしても、帝国の名前がロスオーディスというのね。今までは帝国とだけ言われていたけど、これで分かりやすくなったわ。
「それで? ダンジョンに侵入してきた理由は?」
「……」
「ん? 言えない理由なの?」
「いや、今の質問でお前がダンジョン側の女であることが分かった。
何故だ? ダンジョンは滅ぶべき存在だろう!」
……この男、本気でそう思っているのね。
ということは、誰かにそう洗脳されているのか?
「……誰に、そう吹き込まれたの?
ダンジョンが、滅ぶべき存在だなんて」
「教会と帝国政府の決定だ。
ダンジョンが存在することで、魔物が生まれ魔王が出現する。
二度と、魔王を出現させてはならないと、勇者様方がダンジョン討伐を決意され実行されたのだ!
そして、ダンジョンは討伐されこの世界にダンジョンは無くなった。
だが、勇者様は言われた。ダンジョンはいずれ復活すると……」
教会と帝国政府、ね。
確か、封印の魔法陣だったかしら? 教会の所有する神殿に安置されているとか。
そして、その魔法陣に魔王を封印してつかの間の平和を矜持しているとか。
昔、聖王国の言いなりだったころ、取引相手の教会関係者が偉そうにそんなことを教義の一説で話していたのを今思い出したわ。
魔王は、勇者をもってしても滅ぼすこと敵わず、神より封印の魔法陣をいただき、勇者の聖剣の力を持って封印の魔法陣へ封印したとか。
だが、聖剣の力は万能のものではないため魔王は時折復活する。
その時、ダンジョンの存在が魔王に力を与えて復活を速めるとか何とか。
全くの事実無根だわね。
「……あなたたちは、それを本気で信じているのね?」
「もちろんだ! 現に世界は平和だった!
それに、もうすぐ勇者隊がここに来るだろう。
そうなれば、このダンジョンなどすぐに滅ぼされる!」
そう叫びながら、笑い出した……。
これはダメね。これ以上の情報は言わないわね。
せっかく、自白剤を霧隠れの霧に混ぜていたのに……。
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