第106話 忍術で捕縛
恐れていた事態が発生してしまった。
ダンジョン内の魔素の過剰侵食により、ダンジョンコアの最大許容範囲の魔素内包量を超えようとしていたらしい。
もし、これを超えてしまうとダンジョンコアは爆発!
それにともなって、コアを体内に埋め込まれている俺自身も爆発してしまうところだった。
また、ダンジョンコアの爆発はダンジョンの消滅という事態も起こして、ダンジョン内の人々はすべてダンジョン外へと排出される。
つまり、日本にダンジョン内にいる人すべてが排出されるわけだ……。
「フゥ~、フゥ~、ようやく落ち着いたな……」
「大丈夫ですか? マスター」
「颯太、もういいの? 大丈夫?」
「ああ、ありがとう。もう何ともないから、心配いらないよ」
心配するみんなを宥めながら、俺は原因を探そうとして思い出す。
確か、誰かが魔素の増加の原因を探し当てていたような……。
「ところで、原因は分かったの?」
「はい、凛さんが見つけてくれました」
ミアがそう言いながら、ダンジョン操作を行いコアルームにいっぱいに表示されていた何十枚もの画面を消し、残した一つの画面に原因を映しだす。
「この男たち、三人です。
レストールに繋げていた外泊の町からの扉を見つけて、こちらへ侵入してきました。
この男たちの正体ですが、おそらく帝国に関係ある者たちかと……」
「帝国? 帝国の関心を引くようなことって……」
「お忘れですか? マスター。
帝国は勇者を召喚して囲い込んでいます。今現在も」
確か、勇者召喚の目的はすべてのダンジョンの消滅。
なるほど、レストールの町にダンジョンが接触してきたと察知して、こちらを調べてきたということかな。
「勇者は、ダンジョンを討伐するために呼ばれたと思われる帝国の戦力。
そして、レストールの情報を収集しているのは私たちダンジョン側です。
そうすれば……」
「敵対は、避けられないか。
でも、討伐だけなら勇者と帝国戦力をぶつけてくれば終わるだろう。
こんな斥候と思われる連中を使うのは何故だ?」
ん~、もしかしてダンジョンを討伐するつもりはないってことか?
ダンジョンを見逃す? 何故だろうか?
「……分からないことだらけだな。
エレノア、この三人を捕らえることはできる?」
「この程度なら問題ないけど、どうするの? マスター」
「帝国側の真意を確かめる」
「……ミア、ソフィア、尋問をお願い。
凛さんは、マスターの側にいてあげて。まだ、体は本調子じゃないと思うから」
「「了解」」
「分かりました」
三人から返事をもらうと、エレノアはコアルームを出て第七階層にある外泊の町に向かった。
外泊の町は、町の様相をしてはいるが住民は一人もいない。
また、商店なども出ていないからゴーストタウンとなっている。
ただ、レストールと繋がっている扉を隠すためにある町だな。
▽ ▽ ▽
Side ベルガ
領主様のご依頼で、レストールの町を隅々まで調べていると空間が歪んだ場所を発見した。
これは何かあると、仲間を呼び歪みの中へと入っていった。
この歪み、ダンジョン内にできる歪みと似ていたため躊躇することなく中へと入ったが、本来であればギルドなどに知らせて調査させるのがスジだ。
だが、今回は依頼者が領主となると話が別だ。
依頼達成には、書類にまとめて提出しなければ失敗扱いとなり報酬金が払われないなんて話は結構ある。
だからこそ、ギルドを間にかませて探索を中断するわけにはいかないのだ。
「ドーズ、何だこりゃあ……」
「町だろ? でも人が全くいない……どうなっているんだ?」
「……何か気味悪いな」
俺たちは、ダンジョンに潜る感覚で歪みに入ると、そこは誰一人いない町が広がっていた。
人々が、生活する音が全くなく明かりさえも無い。
「だが、これでここがダンジョンだということが分かった。
ドーズ、キルザ、証拠を集めよう。
ここがダンジョンだということが証明されれば、勇者が隊を率いてくるはずだ」
勇者隊の総大将である勇者は、世代交代していてすでにダンジョン討伐からは一線を退いていた。
また、勇者は一人ではないのだ。
帝国はことあるごとに、勇者召喚陣を使用し異世界から勇者を召喚している。
そして、送還もできないことで諦めさせ、帝国の戦力として使ってきた。
だが、最近の勇者様たちは故郷への未練が再燃していた。
そこへ、ダンジョンが出現したのだ。
これを機に、勇者様たちの心を故郷への未練から、危険なダンジョンの討伐へともっていきたいのだろう……。
ダンジョン討伐で、思いっきり戦えば気分も晴れるだろうな……。
▽ ▽ ▽
Side エレノア
外泊の町の屋根伝いに捜索していると、見つけた。
レストールから入った斥候と思われる者たちだ。
「見つけた。町の中を結構移動していたわね……」
三人一緒に行動しているのは、何か意味があるのだろうが私には関係ない。
私はすぐに『霧隠れの術』を発動させ、斥候の周りを霧で覆い隠す。
これで、何も見えずに斥候のみが右往左往するはずだ。
「な、何だ! この霧は!」
「ま、周りが、何も見えん!」
「敵か?!」
遅い! 霧隠れの術は、ただの霧を出す忍術でも隠れる忍術でもない。
ターゲットたちの周りに霧を発生させ、昏倒させるための術なのだ。
霧の中には、睡眠薬や昏倒薬などの薬品が混ぜられている。
そのため、この霧に包まれ息をすればもう終わり。
後は、何が何だか分からないうちにその場に昏倒してしまうのだ。
「うう……」
「も、もう、ダメ」
「ガク……」
三人が倒れこんだ音を感知し、私は霧隠れの術を解く。
すると、目の前の地面には三人の男たちが倒れていた。
後は、こいつらを運び出し情報を聞き出した後は、ダンジョンパークから出て言ってもらえればいい。
ただし、無理やり出て行ってもらうがな~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます