第94話 プレゼントを
俺は自宅の自分の部屋で、世界樹の巫女を名乗るエルフの二人の行動を見ていた。
そう、彼女たちの言う通り監視していたのだ。
「……怖い、この二人」
「でも、いいの? 颯太。エルフ至上主義の人たちを捕縛するだけで……」
今日うちに遊びに来ていた凛が、一連の事件を知り捕縛だけでいいのか心配している。
本来であれば、今回の騒動を起こしたエルフたちや黒幕的なエルフの二人も処刑してもおかしくはない。
「呪いもかけるから、捕縛だけというわけじゃないけどね」
「……やっぱり、この間話してくれた特殊解放スキルが理由なの?」
「まあ、ね」
特殊解放スキルとは、ダンジョンマスターのみに与えられた目標を達成すると与えられる特殊なスキルである。
その一つに、拡張階層というものがある。
そう、今のダンジョンの階層はこの目標を達成して拡張された階層の大きさなのだ。
そのため、一つの階層の大きさが北海道が丸々入るぐらいになったのだ。
ただし、デメリットもあり、それが階層減少だ。
ダンジョンが十階層で、限界になったのはこのデメリットのせいである。
そして、次の目標であるダンジョン内の人数が百万人を超えることを達成しつつあるのだ。
「現在のダンジョン内人数が、九十九万人を少し超えたところだ。
これが百万人を達成すれば、新しい特殊スキルが解放される。
そのスキルこそ、異世界道だ」
「異世界道? ……もしかして、異世界と繋がるってこと?」
「その通り。
ただし、デメリットとして俺が行ったことのある異世界のみだけどね」
普通に考えたら、使えないスキルになる。
何故なら、このスキルは異世界から召喚された人だからこそ役に立つスキルとなるからだ。
もし俺が、ファンタジー世界で生まれその世界の記憶しかない場合、他の異世界へ行くことはできない。
「それって、颯太のためのスキルってことじゃない?」
「そうなるね、異世界に召喚されダンジョンマスターになり苦労したかいがあったってことだよ」
「……でも、異世界と繋がって何をするの?」
異世界と繋がって、何をするか。
まあ、繋がる異世界は俺が召喚された異世界だから、あれからどうなったかが分かるだろう。
俺を召喚したレストゥール聖王国は、すでに滅んでいるし、聖王国が支配していた領地はどこが支配したのか分かるだろうし、何よりダンジョン内の住人を故郷に帰せるのだ。
それだけでも、意味はあるはずだ……。
「まずは、ダンジョンの住人の里帰りかな」
「……そっか、そうだよね。
ダンジョンの住人の人たちは、異世界の地球に連れてこられて大変なんだよね。
異世界と同じような環境を、ダンジョン内に造っているとはいえ異世界は異世界なんだよね」
「俺も、向こうの世界では心細かった時があったからな。
だから、まずは里帰りでもしてもらおうと……」
……いや、待てよ。
確か、むこうとこっちじゃ時の流れが違ったはずだ。
ということは、向こうに帰ったとしても何年も過ぎた後で、知り合いも生きていないってことに……。
いやいや、長命種がいるんだ。
全て、生きていないということにはならないだろう。
何かしら良いことが必ずあるはずだ。
「あ、そうだ! ねえ颯太」
「ん?」
「今度のクリスマスプレゼント、スキルスクロールっていいかな?」
「え、スクロールほしいの?」
今日は、凛に今度のクリスマスプレゼントを何にするか相談するために部屋の呼んだのだが、あんなエルフ達の事件が起きて対処していたのだ。
で、今はそれも終わり当初の予定通り、クリスマスプレゼントの相談だ。
「ほしいわね。
……ただ、どんなスクロールを強請ればいいか分からないのよね」
「強請るって、何か使えるようになりたいスキルはないの?」
「……いざ考えると、今の世の中で使えるようになりたい特別なスキルって思いつかないわ」
確かに、今の地球で特殊なスキルを身につけても、変に目立ってたいへんなことになる気がするんだよね。
だから、今のところ思いつくかぎり『言語理解』スキルが一番じゃないかな?
どこの国の言葉も、理解しペラペラに話せるようになるスキルだ。
異世界召喚された地球人のテンプレスキルの一つだ。
後は、鑑定とアイテムボックスか。
「でも、前に颯太が地球人は魔法が使えないって言ってたけど、スキルもそうじゃないの?」
「レベルを上げれば、スキルを身につけることができるよ」
「レベル? レベルってゲームなんかの経験値をためて上がるっていう?」
「そのレベルじゃないよ。
俺の言っているレベルは、浸透レベルってやつだ」
俺たち地球人には、魔物を倒して経験値を獲得してレベルを上げるということはできない。
強くなるには、筋力を上げて素早さを上げてというように能力を上げるしかない。
それも、数字表記されているわけじゃないからどれだけ上げたのかとかを確かめようがないのだ。
だが、今回俺が言っている浸透レベルとは、魔素にどれだけ浸透しているかということだ。
魔物などを倒すと、倒した魔物から魔素を吸収することができる。
これは、地球人でもできることが分かった。
ただ、地球人はいくら魔素を吸収しようが魔法を使うことはできない。
何故なら、魔法を使うためには魔導管という血管に似た管を持っていないといけないからだ。
では、何故俺は魔法が使えるのか。
それは、体の中にダンジョンコアが埋め込まれて使えるように作り変えられたからだ。まさに、仮面〇イダーと同じ改造人間である。
まあ正確には、ちょっと違うのだが……。
ともかく、吸収された魔素はスキルスクロールで与えられたスキルと地球人の身体を繋げている接着剤のような役割を果たしていると分かった。
だからこそ、魔素の浸透レベルでスキルをスクロールからのみ覚えることができるのだ。
「とにかく、覚えたいスキルを考えておいてよ。
クリスマスプレゼントとして、渡すからさ」
「分かったわ」
ダンジョンでの、レベル上げツアーも付けないといけないかな……。
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