混乱と異世界の章

第89話 影響と始まり



『え、クリスマスイベントしないんですか?』

『はい、ここ、ファンタジーダンジョンパークは、異世界が体験できる場所です。

異世界に、地球の宗教行事であるクリスマスはおかしいですからね。

ですから、クリスマスイベントは行わないんですよ』


朝の情報番組の特集で、ファンタジーダンジョンパークのイベント情報を流していたが、今月のクリスマスにはあるだろうクリスマスイベントが無いことで、女性アナウンサーが驚いていた。


『でも、年越しイベントはあります』

『年越しイベントはあるんですね、良かった~』

『異世界でも、新しい年を迎えるにあたって町中でお祭りをやりますからね。

過ぎゆく年に感謝をし、来る年が良き年であるようにと』


新しい年の前後三日間で、お祭りをする予定だ。

二十九日から三十一日、新年の一日から三日までがお祭り期間だ。この期間には、いろいろな露店や見世物、さらに普段味わうことのない食材の料理が出るとか。

今から楽しみなイベントだな。


『ダンジョンパークでは、年越しイベントでアイドルや歌手の方のコンサートも行う予定だそうです。

また、年越しイベントだけの特別な劇も行われるとか。

年末にはぜひ、ファンタジーダンジョンパークへ足を運んでみてはいかがですか?』

『では、続いてはニュースです。

先日、衆院議員を辞めた奥光勝容疑者が逮捕されました。

奥光容疑者は、ダンジョンパーク内の孤児院から孤児を誘拐したとして逮捕された加藤容疑者に……』


そこで、俺はリモコンでテレビを切る。

そろそろ、学校へ行く用意をしないといけないからだ。



座っていた椅子から立ち上がると、キッチンで洗い物をしていた母が声をかけてきた。


「そういえば颯太、もう十二月だけど文化祭は何かするの?」

「ああ、今年の文化祭は延期になったんだよ」

「延期? 何でまた」

「宿泊研修の件で、今後の予定されていた行事の見直しが議論されているみたいで、文化祭はそのために延期するって。

他にも、球技大会やハロウィンなんかも延期や中止になったんだよ」


「そうなのね、高校生活の楽しみが減って残念ね~」


まったくだ。

その割には、クリスマス前の期末テストとかはちゃんとするんだから。

期末テストの方を中止にすればいいのに……。




▽    ▽    ▽




Side とあるエルフの女性


「私が何故、そのようなことをしなければならないのです!

メイドに任せればいいのです!」

「し、しかし、長老より身分ははく奪されたと……」

「それは、あの醜い裏切り者の前だからです!

そんなことはいいから、私に逆らわないで!」


また始まった。エルフの町から、この村に転送された人たちがいつものごとく身分をたてに何もしないで文句ばかり言っている。

村長も、もう相手にせずにシルフィラ様に報告すれば村から追い出してくれるはず。



私の村は、エルフの町への入り口といわれていたが、そのエルフの町はダンジョンの巫女様によって封鎖された。

そして、あんな偉そうにしている連中が町から追い出され転送されてきた。

それからは、エルフの住む村は混乱している。


住む場所、使用人、食事から何から自分でしたことがない人たち。

ハッキリ言って、村にいない方がいい人たちだ。だけど、シルフィラ様により各村に住む場所を決められたが何もせずに嫌われ始めていた。


「ねぇさま、行こ? 種まき終わらないよ?」

「……うん、そうだね」


村長も、あんな人たちの愚痴や文句を毎日聞かないといけないなんて大変だ。

何とかならないかと思っていたら、ある日を境に村からいなくなっていた。

それも、偉そうに言っていた貴族の身分をはく奪された人やその関係者たちが……。


私は、どうしたのかと不思議に思い、村長に聞いてみた。


「村長様、あの町のエルフ様たちはどこへ行ったのですか?」

「レレンか。それがなぁ、何日か前に別の村に住むことになったエルフたちが来てな、何か話し合いをしていたが、それと何か関係があるのかな……」


あんなに文句を言っていた人たちがいなくなるなんて、何かが起こる前触れじゃないのかな?


「村長様、シルフィラ様に相談した方が良くないですか?」

「……そうだな、何か嫌な予感がするし。

ちょっと、これから行ってくる」


そう言うと、村長は身支度を済ませて馬車で中央の町へ出かけていった。

エルフの町にいた貴族というエルフ達は、本当に迷惑なエルフたちだ。

でも、同じ町のエルフでも普通に町に住んでいたエルフ達は、村の生活に馴染み始めていた。


最初は、混乱したり取り乱したりしていたが、村に馴染もうと努力をしていた。

だからこそ、私たち村のエルフもいろいろと助けていたから今馴染んでいるのだと思う。



「レレン、今日はもう畑はいいのかい?」

「シーダさん、種まきは昨日で終わりました。

後は、芽が出てからですよ。シーダさんは、水汲みですか?」

「ああ、僕は水魔法が使えないからね。

それに、井戸も遠いから何とかならないかねぇ」


そう笑顔で話してくれるが、本当に困っているようだ。

こういう時は、村長に相談してダンジョン巫女への要望書を出すと採用されれば家の近くに井戸ができる。

どうやっているのか分からないが、要望が通ればその日のうちに現れるそうだ。


「村長に、相談してみようかな……」

「あ、でも、今村長いませんよ。

元貴族のエルフ達がいなくなったことで、中央の町へ出かけていきました」

「元貴族のエルフ? 

……それじゃあ、あの話は本当だったのか?」

「え? あの話って?」

「ああ、それがね……」


私は、シーダさんから元貴族のエルフ達がどんな話をしていたのか教えてくれた。

シーダさんの所にも、元貴族のエルフの執事という人が訪ねて来て、エルフの町の解放のために力を貸してくれということだった。


どうやって、町を解放させるのか詳しくは教えてもらってないが執事の人は確実に開放できると自信をもって話していたそうだ。


「……シーダさん、今の話、村長さんにもできますか?」

「ああ、それはお世話になっている人だし構わないが……」

「私、馬車を用意してきます!

シーダさんは、私と一緒に村長さんに会って、さっきの話をしてください!」

「わ、分かった。分かったが……」


私は、すぐに馬車を用意するため走り出した。

何か、大変なことが起きている気がするから……。


そして、絶対に大変なことになると思うから……。







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