第87話 あたえる罰



孤児院の応接室の扉がノックされる。

コン、コン、と軽い音がして扉の外から声がかけられた。


『ミアです。入ってもよろしいでしょうか?』

「ああ、構わないよ」


俺が入室を許可すると、扉が開きミアが入ってきた。


「失礼します。

マスター、強姦犯たちを捕まえました」

「強姦犯? 福井さんを襲った?」

「はい、こちらが強姦犯たちの写真です。

あまり見たいモノではないと思いますが、一応確認をお願いしてもらえますか?」


確かに、福井さんからしたら見たい人たちじゃないよな。

自分を強姦して、孕まされて苦しんだ原因を作った連中だし……。

でも、一応確認はしないと罰をあたえることができないからな。


俺はミアから預かった写真を、福井さんの前に裏にして置いた。

心の準備ができてから見たほうが、幾分かショックも和らぐはずだ。


「福井さん、今、あなたを襲った連中を捕まえたと報告を受けた。

この写真に、福井さんを襲ったと思われる犯人たちが映っている。

こいつらで間違いないか、確認をお願いしたい……」


福井さんは、テーブルの上に置かれた裏返しの写真を震えながら凝視している。

どうするか悩んでいるのだろうな……。


「こいつらに罰をあたえるにしても、警察につき出すにしても確認が必要なんだ。

辛いかもしれないが、確認してみてくれないかな?」

「………わ、分かりました」


そう言うと、震えながら福井さんは写真を表にした。

そこに映し出されているのは、バンの車内の写真。

五人の男たちが映っていて、窓際でスマホを見ている男がリーダーらしい。


「! こ、この男!! この男が、私にぃぃぃ!!」

「福井美穂さん!」

「ハァ!! ハァ…ハァ……ハァ………」


息を整える福井さん、精神耐性や恐怖耐性があってもトラウマの克服には繋がらなかった。

写真で男を見ただけでこの反応では、本人を目の前にしたらどんなことになるか……。


「大丈夫ですか?」

「……あ、ありがとうございます」


福井さんの隣に座り、肩を自身に寄せて気遣うミア。

ようやく気持ちが落ち着いてきた福井さんが、写真の人物たちについて話してくれた。


「写真に写っていた人たちで間違いありません。

私を襲ったときは、三人だったと思いますけどよく覚えていない……。

でも! あいつの顔だけは覚えています!」

「分かりました。

ありがとうございます、福井さん」

「う、うう、うああぁぁぁ~………」


俺がお礼を言うと、福井さんは涙を流しながら泣き出してしまった。

泣きじゃくる福井さんを、そっと抱き寄せて気遣うミア。


俺は、その泣き声を聞きながら写真に写る連中を睨みつけていた。




▽    ▽    ▽




泣き疲れた福井さんを、応接室から来客用の寝室へエレノアに連れて行って休ませるように言ってこの応接室から連れ出してもらった。


「ミア、関わっている連中は、この写真に写っている五人だけか?」

「さすがマスターです。

この男たちは、アンロブトという会社を作ってアダルト動画を売っていたようです。

その企画の中で、レイプ犯罪を繰り返していました。

さらに、社員の中には薬物に手を出しているようで、証拠の品が見つかりました」


……何というか、本物の屑集団だったというわけか。

しかも、アダルト動画を撮るためだけにレイプ犯罪を繰り返していたなんて、被害者がどれだけになるか想像もつかない。


「警察はすでに動いているの?」

「はい、薬物関連で動いています。

捜査は進展していますが、薬物の発見に苦労しているようです」

「……ミアたちは、良く見つけたね」

「虫ゴーレムに、捜索できない場所はありません。

連中に罰をあたえた後、警察に隠し場所も教えるつもりです」


警察につき出すのは仕方ないとして、こちらはこちらで罰をあたえておくか。

で、どんな罰がいいかなんだが、やはりこんな連中の子供なんて残したくないし、今後も性犯罪ができないように不能にしてしまうのが世のため人のためかな。


「ミア、アンロブトという会社の社員全員に、エロに反応しない、一生治らないEDともいう【反応ゼロ】の呪いをかけて、二度と性犯罪に手を出さないようにしてくれ。

後は、薬物の証拠を持たせて警察へ」

「了解しました」


福井さんをはじめ、連中にひどい目にあわされた人たちの慰めになればいいんだが……。




▽    ▽    ▽




Side 小松信也


都内の雑居ビルの一室で、俺はアダルト動画の編集をしている。

石井さんたち実行班が、各地で素人の女性を引っ掛けて同意を得てエッチな動画を撮っているって言ってたけど、編集している俺にはわかる。


これは石井さんたちが、無理矢理やった強姦の動画だ。

こんなの、商品として売れるわけないだろう……。


「ま、それを俺が売れるように編集するんだけどな……」


今日も、石井さんたちはいつもの黒いバンで流しているはずだ。

どこかに言いカモはいないか、って。


去年は、Jkブームとかで各地の女子高生を狙って攫って無理矢理、て犯していた。

あいつら、一人の女子高生を複数の男でやるのが良かったとかぬかしやがって、全然売れなかったじゃねぇか。


あれにはもう、関わりたくねぇな……。

編集してても、胸糞が悪いし。


少しイライラしながら編集作業をしていると、同僚の健二が飛び込んできた。


「おい! 石井たちが捕まったぞ!!」

「何っ!?」

「ここにもすぐに、警察が調べに来るぞ!

すぐに荷物まとめて、逃げろ!!」


って、編集作業している俺が、すぐ逃げれるわけねぇだろ!

データやら何やらと、犯罪の証拠がそろっているんだ。

……ヤベェ。



―――ピンポ~ン、ピンポ~ン。


『警察です! アンロブトがどんなことしてるか調べはついてます。

おとなしく、協力をお願いしますよ!』


ああ、終わった……。







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