第82話 解決策と新たな事件
「とりあえず、その彼女の方は心のケアが必要だけど……」
「やったことは、犯罪ですからね。
ダンジョン企画の方から、警察への報告はしておきますが…」
「いや、こっちで預かってケアを行う。
こういう時は、レベルを上げて精神耐性のスキルを覚えてもらう方がいいだろう」
耐性スキルは、地球人でも覚えられるスキル系で魔力が必要な魔法系ではない。
そのため、ダンジョンなどを探索して覚えてもらえれば心を強くすることができるはずだ。
また、スキルレベルは魔物などを倒すことで上がるので小説などの創作物である精神攻撃でレベルが上がることはない。
だからこそ、置き去りをしてしまった彼女には精神的に強くなってもらいたいのだ。
「では、福井美穂さんをこちらで確保してレベル上げをしてもらい精神耐性スキルを覚えてもらう、ということで?」
「うん、確か耐性スキルのスクロールがあったはずだよね?」
「ダンジョンポイントで交換可能です。
ダンジョン企画を通して、福井さんに連絡をとって来園してもらいます」
「彼女はそれでいいと思う。
で、孤児院の方は……ソフィア?」
ダンジョンコアルームで、俺とミアの話し合いを聞いていたエレノアとソフィアは同じように話を聞いていた。
「はい、最初の町の孤児院は冒険者ギルドから北門との間に建設しました。
孤児たちの世話をしてくれるシスターは、中央の町より派遣してもらえるそうです。
ただ、種族はまだ決まってないそうですが……」
「種族で、シスターの質が変わるわけじゃないだろ?」
「もちろんです。みなさん、シスターとして頑張っていますから」
「ならば、問題なし。
どの種族が来ても、文句は言わせないように」
「分かりました」
実を言えば、こういう種族差別というのはよくあることだ。
だが、ここダンジョンの町では種族で差別というよりも能力で差別していることの方が多い。
まあ、魔法が得意な種族に力仕事は向かいないし、脳筋に計算の仕事は無理だからな。
でも、前回のエルフ至上主義のような連中は時々現れるようだ。
何とかならないものか……。
「さて、エレノア。君から何か報告はある?」
「……言いにくいんだけど、ダンジョンの住人の連れ去りが見つかったわ。
それで確認したところ、三人の行方不明者が出ていたわ」
「ダンジョンの住人の行方不明者? 入り口ゲートを通らずに?」
ダンジョンの住人は、人間ではない。
誤解があるかもしれないが、人と呼ばれている者も人間ではなく人族なのだ。
つまり、人という種族なのであり、地球人という人間ではない。
サルから進化したといわれる人ではなく、人族という種族の人。
向こうの異世界では、神が創り出した種族の中の一種族とされていた。
「ええ、どうやら手引きした者がいたようで、今、捜索中よ。
それと、誘拐犯も今調べてもらってるわ」
「その三人の名前と年齢、あと種族は?」
「一人目は、スイニー、十二歳の女の子。種族は天使族。
二人目は、ミルカ、十歳の女の子。種族は兎人族。
最後は、エリアス、十二歳の女の子。種族は魔族よ。
全員、中央の町の孤児院から消えたそうよ」
「いつ、いなくなったか分かるか?」
「いなくなったのは二日前。
二日前の夕食の席で、三人をその孤児院のシスターが目撃しているわ。
次の日の朝食という時に、三人が席にいなかったので孤児院中を捜索するも見つからなかったそうよ」
エレノアの話では、その後、シスターたちは、町の衛兵に届け出て探してもらうと町を出たことが判明。
行先は、この最初の町。この町の衛兵事務所に連絡されるも、捕まえることができずに潜入され、しかも入り口ゲートを通らずにダンジョンの外へと連れ出されてしまったそうだ。
しかし、ダンジョンの外では捜索のしようがないか……。
「エレノア、どう捜索する?」
「虫ゴーレムを使いましょう。
それに連れ出されたのが昨日だったのは、彼女たちが所持しているギルドカードが教えてくれたわ。
ダンジョンを出るとき、入り口ゲートを通らなくてもダンジョンを出るだけで分かる仕組みになっているからね」
そういえば、そうだった。
言語理解スキルを、ダンジョン外でも使わせないため回収する仕組みとともに出入りの記録もさせていたの、すっかり忘れてたな。
「それに、昨日出ていったのだったらそう移動していないはず。
虫ゴーレムで捜索は可能です」
「よし、すぐに虫ゴーレムによる捜索を開始。
三人を攫った連中を、必ず捕まえてくれ!」
「「「了解!」」」
まったく、異世界の住人を何だと思っているのか。
それに、赤ん坊を置き去りにした福井さんに何があったのか……。
ミアたち三人が、コアルームを出ていくとダンジョン内の気になる場所を視聴する。
ダンジョンマスターの、これもお仕事の一つだ。
本来であれば、福井さんの件はいろいろな心の葛藤とか、両親との話や襲った連中への憎悪とかいろいろ考えなければいけないんだけど、そこは異世界ファンタジーの力を借りて解決してしまおう。
精神科医などの医者の力や、警察に裁判などなど現代社会では解決しないのではないかと考えてしまったのだ。
被害者本人の精神の耐性を強くすれば、次へ進めるかもしれないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます