第55話 暗躍



ダンジョンの十階層にあるダンジョンコアの部屋。

ここには、もう一つの俺の部屋がある。

今日は、ミアたちと一夜を共にするためここに来ていた。


「闇ギルドは、今回の件に関しては白ということか?」


キングサイズのベッドの上に座り、最近ダンジョン内で起きている強姦未遂事件の報告書を読んでいた。

そこへ、シャワーを浴びた後バスローブに身を包み、髪をタオルで拭きながらミアが俺に近づいてくる。


「はい、マスター。

どうやら、闇ギルドが動いているかのように装って暗躍している人がいるみたいなんです」

「ん~、このミアの報告書だと、日本人と書かれているけど」


俺の隣に座り、髪を拭いていたタオルを畳んで俺の見ている報告書をのぞき込む。

ミアから、イイ臭いが香るが今は報告書の内容が大事だ。


「闇ギルドのギルマスがスマホを手に入れていましたし、それにこれです」

「これ………、そういえば父さんが、ダンジョン企画に最初の町以外でも携帯などが使えるようにしてほしいと、強い要望が来ていたって言ってたな。

まさか、それもかな?」

「おそらくは……」


日本にある電化製品や、携帯などの通信機器や技術がダンジョン内に流れていることは知っていたけど、こうも犯罪に利用されるとはな。

エレノアたちも動いているけど、ダンジョンの外にいる者たちの仕業だとするとこちらも手が出せない。


そのエレノアとソフィアは、俺の後ろでシーツに包まって寝ている。

すでに何回戦かの後、ミアから報告を聞いていたのだ。


「それで、ダンジョン内の通信網はどうしますか?」

「それは、変わらない。

最初の町以外で、携帯などが使えるようには考えていないよ。

こうも犯罪に使われていたら、対処のしようがないからね」


「では、このまま放置を?」

「いや、対策はする」


まず、入り口ゲートの設定を少し弄ろう。

それで、ダンジョン内へ何をしに来ているのか判明するはずだ。もし、犯罪をしに来ているときはゲートを通さないようにする。


次に、ダンジョン内ではギルドを通さない依頼やバイトを禁止する。

スマホなどの携帯で、依頼を受けることも禁止だな。

必ず、ギルドを通しての依頼とする。


さらに、警察ギルドの創設を考える。

衛兵にすべてを任せるのも、かなりの負担となって見過ごしも出てくるはずだ。

現に、冒険者ギルドを使っての見回りを依頼しているからな。


後は、身を守れる魔道具の開発か。

少し考えてみるか……。



「マスター……」


ミアが、甘えた声で俺の右腕を掴んでくる。

これは、ミアがおねだりしてくる時の甘え方だ。


「ん? どうした?」

「私、マスターとの子供が欲しいです」

「………」


これは、どう反応していいのか分からないんだが……。


ミアたちが、俺の側に仕えるようになって十年以上が経つが、今のような深い関係になったのは、ここ最近のことだ。

実をいえば、異世界にいた頃の俺はそれどころではなく、日々、旧王国の無茶ブリに悩まされていた。


そのため、ミア、エレノア、ソフィアの三人と男女の仲になっていなかった。

つまり、俺は童貞だったということだ。

ちなみに、俺の初めての相手はエレノアだ。ミアではない。


「……もう一度、一緒に風呂に入るか?」




▽    ▽    ▽




Side ???


「晃さん、どうやらバレたようですね。

闇ギルドに所属していた奴との連絡が切れました」

「もう一人の方は?」

「そっちは、まだ生きているみたいですけど最初の町にいないみたいっスね

電波の届かない所って、アナウンスしているっスから」


闇ファンタジー計画が、ダンジョンの巫女たちにバレたらしい。

ダンジョン内のファンタジー生物のメスを使って、金を稼ぐいい考えだったんだがな。


掲示板を使い、バイトを募集。

仕事は、ダンジョン内のファンタジー生物のメスを強姦して心を折り、奴隷商に売る。

そしてその売り上げを日本円に交換すれば、俺たちはお金持ちだ。


最近は、募集者が誰なのかバレないような細工もできて身バレすることもないらしいからな。

それに、ちょっと応募してきた連中の性欲を刺激してやれば、あっという間に考えるってことをしなくなる。


「面白い計画だったんだがな……」

「あの男が持ち込んだ企画としては、合格点だったんじゃないっスかね?

こっちの利益も結構集まりましたから……」


都会の夜の自販機の側で、男が二人で話をしている。

缶コーヒーを飲みながら座り込んでいる俺と、スマホを片手に立ったままで話す男の二人がダンジョン内で起きた強姦事件の首謀者だ。


何度かファンタジーダンジョンパークに通い、この遊びを思いついた。

ただ、身バレは怖いのでパーク内に協力者を作り作戦に興じた。


痴漢騒動はうまくいった。

それを動画にあげて、少ない小遣いを稼いだ。

だが、強姦はうまくいかなかった。

どうやら、最初から対処されていたみたいだ。


「向こうに、頭のいい奴か感の働く奴がいるんだな。

俺たちの計画が、こうもうまくいかないなんて……」

「晃さんのせいじゃないっスよ? 中の協力者が、役立たずだっただけっスよ。

知ってます? その協力者の友人って奴が、婦女暴行で捕まってるって」


後輩の話では、ストーカーでダンジョンの巫女の三人を自分のものにしようとして、警察に捕まったとか。

他の奴った連中も、全員が警察のお世話になるそうだ。


「……潮時かな?」

「まだいけるっスよ、晃さん。

あともう一回、もう一回だけ仕掛けるっスよ」


「……分かった、これで最後にする。

パークの協力者に連絡してくれ。募集掛けて、襲わせろって」

「了解っす!」


都会の夜の自販機の側が、俺たちの暗躍の場だった。







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