第56話 裏切り裏切られて
Side ???
素早くスマホを操作し、SNSの掲示板へ仕事の依頼を掲載しておく。
ただし、今回は俺たちにとって最後の計画だ。
だから、募集する人数は少なくして俺の人脈を使うことにした。
「晃さん、俺の伝を使っていいっスか?
頼りになる連中に、仕事を任せたいんっスよ」
「連の伝って、知り合い?
報酬はどのくらいいるの?」
「報酬はいいっスよ。計画を聞けば、やることやって協力してくれるっス」
「……まあ、いいよ」
「ありがとうっス!」
俺はすぐにスマホでその男に連絡をとる。
まず、メッセージを送り既読がついたとき電話を掛ければ必ず繋がる。
しかも、俺からの連絡だということも分かるから、必ず出てくれるのだ。
「………既読がついた!」
素早く電話番号を入力し、相手に掛けた。
「……もしもし、連っス。新藤、いるっスか?」
『……何か用か? 今、会議中なんだが……』
「犯罪者の集団が集まって会議って、新藤はいつから偉くなったんスか?
この前会ったときは、コンビニのバイトしてなかったスか?」
『チッ、いいから用事言えよ。俺を揶揄うための電話じゃねぇだろうが!』
「まあまあ、そんなに怒るなって。
俺の相棒が、面白い計画を作ってくれたんスよ。乗らないっスか?」
『……お前の相棒って、晃さんだろ。
ちょっと待て…………、ここにいる全員が参加したいそうだ。いいか?』
「やることは簡単スから、問題ないっスよ」
『よし、計画を聞かせろ』
こうして、実力のある実行メンバーが確保出来た。
新藤たちの仲間は、高校の時からつるんでいた連中だ。
今では、十六人ほどいるらしいが、正確にはさらにその下にいるとか。
全員が、何度も警察沙汰になるようなことをしでかしている。
俺が電話越しに計画を伝えると、興奮しているのが新藤の返事から分かる。
『……いいじゃねぇか! みんな興奮してるぞ』
「それじゃあ、明日にでも向かってくれるっスか?
現地で、協力者が待っているっスから」
『分かった。じゃ、またな!』
そう言うと、すぐに通話を切ってしまう。
場所は有名だから、すぐにわかるだろう。後は、現地の協力者にこっちから連絡を入れれば完了だ。
俺たちが関与することなく、犯行は行われ実行犯は逮捕される。
クフフ、さすが晃さんだ。こんな計画を考えつくとは……。
▽ ▽ ▽
Side ガルフ・オーレン
「俺だ」
『お久しぶりっすね、計画はどうっスか?』
「何が計画だ、そっちの連中は何考えてんだ?
欲望に素直すぎじゃねぇか? 計画どころか、暴走してうまくいってねぇよ。
相手からも、商品が届かねぇって文句言われて、こっちの信用問題だ!」
この男、久しぶりに連絡してきたと思ったらこれだ。
話を持ってきたのはそっちだというのに、責任感ってものがねぇ。
『いや~、申し訳ねぇっス。
そこで、今回はちゃんとした奴を送ったっスよ。
明日には、そっちに着くと思うんで面倒見てほしいっス』
「……大丈夫なんだろうな?」
『何がっスか?』
「商品に傷つける連中かどうかってことだよ!」
『その辺は、大丈夫っス。こっちを信用してほしいっス』
「……いいだろう、今回だけだ。
もし、今回失敗したらこっちは手を引く。いいな?」
『了解っス。それじゃあ、明日よろしくっス』
クソッ! 会話のすべてが軽い奴だ。
奴の協力者、今度こそ大丈夫なんだろうな……。
どうも、奴隷商人と契約をした辺りからうまくいっていないんだよな。
……誰かに監視されている?
いや、ダンジョンの巫女が動いているんだ。警戒が厳しいというわけだ。
俺は、スマホに登録している連絡先の一つをタップし掛ける。
計画をした奴だけ、何もないというのはムカつくからな……。
「あ、俺だ。ガルフだ。
例の奴から連絡をもらった。すぐそっちに番号を送る」
『ああ、こっちで調べる。情報提供をありがとう』
「気にすんな。いいように使われているのがムカついただけだ」
『そうか』
俺はその会話の後、スマホを弄ってあの男の番号を送る。
これで、探し出して連中が罰を下してくれるはずだ。
世の中、悪い奴やそれを利用とする奴もいるが、さらにそれを利用する奴がいるからな。こうなると、誰が正義の味方かなんて言えなくなる。
誰が裏切り、裏切り返しているか分からない。
『番号の先が分かった。後はこっちで処断しておく』
「ああ、頼んだぞ」
そう言って通話を切断。
スマホの画面に表示された名前を見て、少し後悔してしまった。
「……俺は何やってんだろうな」
さて、明日は忙しくなる。
奴の送った、ちゃんとした奴を迎えるため準備はしておかないとな。
それと、何人送ったか言わなかったからな。
奴のことだ、一人送ったと見せて複数送ったのだろう。
前回も、前々回も、人数が複数だったからな。
▽ ▽ ▽
Side ミア
「探知成功しました、マスター。
これで、この事件の登場人物がそろったと思います」
「ようやくか。
計画者に実行犯に、その後の処理をする連中と用意周到だな」
この前報告した場所と違い、今回はマスターの実家のマスターの部屋で報告している。
側にいるのは、私と凛様だ。
「それで、警察への連絡は?」
「ダンジョンパーク内で捕らえた後、入り口ゲートでの引き渡しになります」
「その時、呪いをかけておくことを忘れないように」
「はい、もちろんです」
その会話を聞いた凛様が、どんな呪いか聞いてきた。
どうやら興味があるらしい。
「呪いってどんな呪いをかけるの?」
「一生不能の呪いだ。しかも、種無しになって子孫も残せない呪いも追加している」
「うわ~…」
凛様が引いている。
しかし、性犯罪者にはこの呪いが一番だと思います。
……まあ、心から反省すれば、マスターが情状酌量を認めてくれるかもしれませんが……。
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