第54話 闇ギルド
Side ???
最初の町の奥深く、人知れず立っている建物の中に闇ギルドを名乗る非公式ギルドが存在する。
元犯罪者のギルドマスターをはじめ、現犯罪者や暗殺を生業にしていたものなど闇を生きてきた者たちが数多く所属していた。
もちろん、このギルドの存在はダンジョンマスターの颯太やその秘書のミアたちは把握している。
そして、何か動きがあるとダンジョン内での犯罪でない限り黙認していたのだ。
が、ここにきて元の世界と繋がっていないことで、ダンジョン内での犯罪が増えてきていた。
「クフッ、このスマホという機械道具は便利ですねぇ~。
それに、ネットとかいう別世界での仕事募集などは、ミア様たちにバレることなく連絡や依頼ができる」
ソファに座り、右手に持つスマホを弄りながら、ここ最近の闇ギルドからの依頼のやり取りを思い出す。
一昔前までは、ダンジョン内の仕事は全くできなかったが、このスマホやネットの活用でダンジョン内での仕事の依頼を受けていたのだ。
「しかし、スマホを手に入れて初めての依頼が女奴隷の確保とは……」
「良いではないか、闇ギルド復活の仕事だ。
こういう優しい依頼で、肩慣らしというものだろう。
しかし、成功率が低すぎないか?」
中央の町の奴隷商からの依頼で、女奴隷の確保を依頼されたが、今もって確保にいたっていない。
昔からのギルド員を使わず、ネットに応募してきた外の人間を使っているのが失敗続きの原因だろうか?
「申し訳ございません。
外の人間は、魔法抵抗がなくすぐに『スリープ』の魔法で眠ってしまうため、捕まりやすいのです。
さらに、冒険者ギルドで出されている依頼の町の見回りが効果を表しています」
「確か、依頼主はミア様だったか」
「はい、巫女様の依頼ということで報酬が良く依頼を受ける者が殺到しているとか」
「……昔から、闇ギルドの動向に敏感だったな。特にミア様は」
まだ、外への闇ギルドの仕事があった頃、時々あるダンジョン内での仕事に対して徹底して取り締まっていたのがミア様だ。
ダンジョン巫女様と言われ始めたのも、闇ギルドのダンジョン内での仕事をことごとく防いできた実績だ。
「それに、外の人間は使い物にならんな。
女を襲うのに、仕事そっちのけで性行為に走るとは……。
ちょっと、刺激しすぎじゃないのか? 仕事は、奴隷商へ渡す女の確保だ。
確かに、処女だろうが非処女だろうが関係ないが、女を確保できなければ意味ないだろう」
女を確保する前に、味見をするのだと実行犯が女を襲っているところを冒険者ギルドの冒険者に確保されるとか……。
ど素人もいいところだ……。
「特に依頼の期限は無いが、闇ギルドの復活と信頼がかかっている。
次は必ず成功させるんだ、良いな?」
「了解しました!」
そう言うと、報告に来ていた闇ギルドの職員は部屋を出ていった。
ソファに座ってスマホを弄っていた男は、対面に座る闇ギルドのギルドマスターを見る。
「ガルフ、お前、ミア様たちを狙えるか?」
「……それ、本気で言っているのか?」
「本気だ。ミア様たちを何とか黙らせることができれば、このダンジョン内でも動けるからな。いや、狙えと言っても殺せというわけじゃない。
しばらく、動けなくなればいいんだ」
「フム、動けなくか。
……それは、物理的に? それとも精神的にか?」
ガルフのその答えを聞き、闇ギルドマスターは白い口髭のある口の口角を上げて笑う。
そして、答えた。
「両方だ。とにもかくにも、しばらく動けないようにできればいいんだ」
「……うまくいくか分からんが、やってみるか」
「準備できたら、コレで知らせろ。闇ギルドが、全面的にバックアップしてやる」
闇ギルドマスターも、懐からスマホを取り出しガルフに合図する。
ガルフは立ち上がり、スマホを闇ギルドマスターに見せながら了解の合図をした。
「まあ、やれるだけやってみるさ」
「……ところで、どんなことをする気なんだ?」
「ミア様たちの、大切にされている人を攫う」
ミア様たちの大切にされている人というのは、ダンジョン内の人たちでミア様たちを知っている人たちは存じ上げていた。
それは、ダンジョンマスター五十嵐宗太。
異世界からの召喚者であり、このダンジョンのマスターをしている。
ミア様たちが、自身の命よりも大切にされているお方だ。
また、ダンジョンマスターはミア様たちのような強さではない。
何故かは分からないが、ダンジョンマスターになって十年以上になるが、そこらの子供よりも弱いとの噂があるくらいだ。
「居場所は、分かっているのか?」
「ああ、コレで調べたらすぐにわかったぞ」
「フフフ、便利でありながら脇が甘すぎるな」
「そのおかげで、俺たちの仕事がやりやすい」
ガルフと闇ギルドマスターは、お互いに笑い合うと、ガルフは部屋を出ていった。
「さて、吉報を待つか……」
そう言うと、闇ギルドマスターはソファから立ち上がり本棚に隠してある秘密金庫を開けて、中から白いスマホを取り出した。
――――プルルルルッ、プルルルルッ。
「もしもし、闇ギルドマスターのローレンです。
先ほど、ガルフが帰りました。ミア様」
『ご苦労様です。その部屋での会話は見させてもらいました。
あなたが裏切るとは思いませんでしたよ?』
「裏切るとは人聞きが悪い。
うちのギルドを通さない依頼が、スマホの中でやり取りされている状況が許せないだけです」
『……まぁ、良いでしょう。
スマホのやり取りなどは、こちらですでに把握しています。
近頃の強姦依頼がどこから出ているのか、こちらで対処してもよろしいですね?』
闇ギルドマスターの口角が上がる。
やはり、ダンジョンマスターの巫女様たちを敵に回すものではない。
「よろしくお願いします」
『それと、ガルフ・オーレフはどうしますか?
こちらで対処してもよろしいのですか?』
「構いません。どうぞ良しなにお願いいたします」
『……いいでしょう。一応殺さないように対処いたします。
では、また』
「はい、長々とありがとうございました」
そこで、通話が切れる。
闇ギルドマスターは、スマホの画面を見ながらため息を吐いた。
我々は、必要悪として生かされているのだと再認識してしまったからだ……。
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