第48話 狙われる美人たち
Side とある男
「ハァ~、美しい……。何とかこの三人を、俺のモノにできない物か……」
男の自室で、壁に貼ってあるミア、エレノア、ソフィアの隠し撮りしたポスターを眺めながら考える男がいる。
ある日、偶然朝の情報番組で見たエレノアに一目ぼれし、ファンタジーダンジョンパークのオープン式典で姿を見せたミアとソフィアを含めた三人の美人に雷で撃ち抜かれたような衝撃を受けた。
それからは、何日もFDPに通うが、なかなか三人の美人に出会うことができない。出会えないということは、声をかけることもできない。
そのため、何とか居場所だけでもと探っていたが見つけることができなかった。
出会うことすらできずに、毎日が過ぎていく中、あるニュースが男の耳に飛び込んできた。
それは、ブルサース王国の避難民をFDPの町で一時的に受け入れるというニュースだった。引き渡しの時なら、あの三人の美人に出会えるかもしれない。
そう考えた男は、行動を起こした。
「フフフッ、出会うことさえすれば、俺の魅力で落とせる。
ようやく、俺たちの物語が始まるな……」
時に美しさとは、おかしな者たちを引き寄せるようだ。
▽ ▽ ▽
Side 宮近瀬里奈
「初めまして、外務省で事業の調整などをしている部署よりまいりました、宮近と申します。
この度は、避難民の受け入れをしていただきありがとうございます。
今日は、その避難民の住む場所の確認にまいりました」
総理大臣が、ブルサース国からの避難民を日本で受け入れることを表明してから三カ月が過ぎた。
本当なら、一か月以内に受け入れ態勢を整えなければならなかったのだが、ある県が受け入れるのか受け入れないのか、なかなか決まらず時間がかかった。
が、結局議会で受け入れないことが決定し、政府に断りの連絡が来たのだ。
遅すぎる! これが民主主義の弊害か?!
今の日本初の女性が総理になってから、とことんまで話し合うことが通常化している。
国会でも、地方議会でもだ。
そのせいで、良いこともある。それは、賛成派反対派双方が納得いって物事が決まるため、後になってごちゃごちゃと文句が出てこないことだ。
ただ、とにかく納得いくまで話し合うため、時間がかかってしょうがない。
「初めまして、私はミア。そして、こちらがエレノアです。
もう一人のソフィアは、最初の町に店を持っているので、今日はそちらにいます。
それで、避難民の受け入れ先でしたが私たちがご案内します」
「よろしくお願いします」
今話題の美人のお二方が、今回の案内を引き受けてくれた。
この二人、SNSの動画サイトですごい人気なのだ。しかも、女性人気が全体の半数以上を占めている。
何故なら、女性暴行をしようとした男どもを殴り倒し、捕まえたのだ。
その動画は私も見たが、スカッとした。
私もあのような屑な男は、殴り倒してみたいものだ……。
「では、行きましょうか」
「……あの、車は使わないのですか?」
いくらファンタジー世界とはいえ、長距離移動は車を使うのではないの?
いえ、ファンタジー世界なら馬車かな。
「ああ、いえ、歩いていくわけではありません。
ここでは、狭いのでこの先の大通りまで出てゴーレム馬車で移動いたします」
「ゴーレム馬車、ですか?」
よかった、この場所が狭かっただけなのね。
確かに、入り口ゲートの近くにある建物の側では用意できないわよね。
でも、ゴーレム馬車とは?
「ゴーレム場車とは、通常馬に引かせるところを自力の動力で走る馬車のことです。
みなさんの所なら電気自動車といったところでしょうか。
ガソリンを使わないので、空気を汚さず自然に優しいものとなっています」
「なるほど。では、電気で動く車ですか」
「いえ、電気ではなく魔力です。
魔力を使って自動で走るので、ゴーレムというわけです」
な、なるほど、ファンタジー世界ならではということですか。
どんな車か楽しみにしながら、私たちは歩いていく。
南門近くに、箱馬車のようなものが見えたが、馬が引いてなかった。
もしかして、あれがゴーレム馬車か?
「あのミアさん、アレが?」
「はい、あれがゴーレム馬車です。
地球にある自動車のような外観にしようとしたそうですが、センスの無さが原因で今ある馬車を改良して作ったそうです。
自動車会社と提携を結んだら、デザインをお願いしようか話しているところなんですよ」
「それは、それは」
日本の自動車会社なら、良いデザインで出来上がるだろう。
どこの自動車会社が引き受けるのか楽しみだな。
「セニカ! 旧貴族街の門のところまでお願いね」
「了解です、ミア様」
そう言うと、返事をした女性は馬車のドアを開けてくれた。
何か、お姫様のような扱いだな。
これは、もしかしてタクシーのような馬車なのだろうか?
「あのエレノアさん、この馬車ってタクシー何ですか?」
「タクシーというと、日本とかで人を運ぶ仕事をしている人たちだっけ?」
「ええ、車を使って人を目的地まで運ぶ仕事をしています」
「それなら、同じですね。
ゴーレム馬車ができてすぐ、こんな仕事ができたそうですよ」
考えることは、どこの人も同じようだ。
その後、ミアさんが補足してくれた話によれば、最初は物を運ぶゴーレム馬車が出て来て、その後人を運ぶゴーレム馬車が出てきたらしい。
私たちを乗せたゴーレム馬車は、大通りと呼ばれる道路を通っていく。
この道路、石でできている石畳のような道だ。少しデコボコしているのに、馬車にそんな振動は感じない。
良い馬車、使っているわね……。
「それで、その旧貴族街というのはどのような所なのですか?」
「元は、貴族が住むために町から隔離された場所です。
門を作り通行人の身元を確認して、城壁で町の住民が入れないようになっています」
ということは、避難民の隔離ができるってことね。
後、ブルサース国のような街並みを造ったと報告があったけど本当かしら?
ここで避難民を預かることが決まって、一週間も経ってないのに……。
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