第41話 事件と呪い
オープン式典が終わり、お客さんが順番に登録カウンターに並んだ時、凛から俺の携帯に連絡が入った。
何でも、凛とソフィアが暴漢に襲われそうになったのだが、ソフィアが全員倒してしまったとか、ソフィアが強すぎるとか、カッコいいとか、最後は凛のソフィアに対しての推しに変わっていた。
「……とにかく、凛とソフィアが襲われたらしい。
ミア、エレノア、一緒に来てくれ」
「「はい!」」
俺は側にいた、ミアとエレノアを連れて現場に急いだ。
ファンタジーダンジョンパーク初日だというのに、もう問題が発生するとは……。
現場といっても、式典会場から三百メートルと離れてなかった。
そこには、手足を縛られ地面に転がさられている男たちが三人。その側に、凛とソフィアが見張るように立っていた。
「凛、ソフィア、大丈夫か? 体にケガは無いか?」
「颯太!」
凛は俺の姿を見つけると、すごい勢いで抱き着いてきた。
どうやら、かなり怖かったらしい。俺にしがみついている手が震えている。
そんな凛を俺は、少し力を入れて抱きしめると、安心したのか凛の震えが止まった。
「ソフィアも、大丈夫だったか?」
「はい、マスター。このくらいで、どうにかなる私ではありません」
「そ、そうか。それで、こいつらが強姦魔か?」
「はい、待っている間に『鑑定』をしてみましたら、他にも女性を襲っているようです」
地面に、縛られて寝転がされている男三人をどうするか考える。
警察に突き出すのが正解なのだろうが、ここはダンジョンならではの罰をあたえておこう。これからも、犠牲者が出ないように。
「ミア、父さんに連絡して警察を呼んでくれ。前科のある強姦魔を捕まえましたってな。
それとソフィア、こいつらに呪いをかけてくれるか?」
「分かりました」
「呪いですか?」
ミアは返事をすると、携帯を取り出し父さんに連絡を入れる。
すると、すぐに繋がり俺が言った通りに伝えた。
ソフィアは、俺が呪いを掛けろということに疑問を持ったようだ。
「ああ、このまま警察につき出しても、こいつらはまた、同じことを繰り返しそうなんでな。ここで呪いをかけて、二度と女性を襲えないようにしようと考えたんだ」
「……なるほど、さすがマスターです。
では、どのような呪いがよろしいですか?」
ソフィアの掛ける呪いは、椅子の足に足の小指が必ず当たるといった呪いから呪殺といったことまでできるほど多才だ。
闇属性をマスターして、さらに地球の呪いに関する知識まであるのだ。
俺の側にいる三人の女性は、マスターの俺より強いよな……。
「こいつらに掛ける呪いなら、やっぱり一生不能になる呪いだろう」
「不能? ああ、生殖機能が、ですね」
「ああ、ソフィアの呪いならどんな薬でも治らないだろう?
だから、こいつらにとっても世の女性たちにとってもいいと思ってな」
「分かりました、では。【反応ゼロ】!」
ソフィアは、気絶している三人に対して両手をかざすと、呪文を唱える。
すると、三人の体に地面から出てきた黒い霧が纏わりつき、そのまま体内へ入っていった。
これで、この男たちは一生不能になったのだ。
この呪いには、薬も効かず子種も取りだすことはできないのだ。
子どもも作れず、一生悩み続けることになるだろうな……。
まあ、それだけの罪を犯した罰ということだ。
落ち着いた凛と、ソフィアたちと一緒に男たちを見張っていると、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
そして、父さんが三人の警察官を連れてくる。
「父さん! こっちこっち!」
「現場はあそこです。あの倒れている三人が、強姦未遂の犯人です」
そして、近づいてきた警察官の女性に声を掛けられる。
「どうも! それで、襲われたという女性は……」
「私たち二人です……」
そう言って手を小さく上げる凛、手だけ小さく上げるソフィア。
それを確認し、警察官の女性は他の警察官の男女と話をして、パトカーをここまで乗ってくるように男性の警察官に言う。
「分かりました」
そう返事をすると、男性の警察官はパトカーに向かって移動する。
残った二人の女性警察官は、縛られている男たちを確認し手錠がいらないことが分かると、二人で黒いワゴンの車内の確認し始めた。
こういう時、車内から何か出てくると応援が来るんだよな……。
「村山さん、これ、注射器じゃないですか?」
「どれ?」
「ほら、そこのシートの隙間……」
「ん~、確かに注射器に見えるわね。
これは応援を呼ぶわ、早苗ちゃんは車内をもう一度確認してくれる?」
「了解です」
その後、応援のパトカーが到着し連中の乗っていた黒いワゴンの車内から注射器が複数と違法な薬が発見され、別件でも逮捕されて連れていかれた。
また、ソフィアへの事情聴取はその場で済まされ、警察署へ行くことはなかった。
まあ後日、ダンジョン企画の方から被害届が出されたけど。
ある意味、大騒ぎな出来事となった。
去っていくパトカーを眺めながら、俺は大変なオープン日になったなと思う。
だが、本当の大変なことは警察から解放されて入り口ゲートに戻ってからだった。
「ねぇ、まだなの? 一時間も待ってるんだけど~」
「全然前に進まねぇな」
「何やってんだ? 前の連中は……」
そんな文句が、並んでいる人たちの中から出ていた。
よく見れば、登録カウンターでも文句を言いながらもめている人がいるようだ。
俺はカウンターに近づこうとしたが、父親に止められる。
「待て、ここは俺たち大人に任せて職員の方を手伝ってやってくれ」
「……分かった。ミア、エレノア、ソフィアも手伝いに入ってくれ」
「「「はい、マスター」」」
「凛はどうする? 俺たちについてくるか?」
「今は、颯太たちといたいからついて行く」
「分かった。じゃ、父さん」
「おお」
父さんとその場で分かれて、俺たちはカウンター内へと移動する。
まず、入り口ゲートで職員用のゲートを通り、そのままカウンターのある建物へ移動する。扉を開けて、忙しそうな職員に交じってミアたちと一緒に手伝いに入った。
「これ、そっちに」
「カードが足りなくなりました、予備をお願いします!」
「はいよ!」
すべてのカウンターにある窓口を開けて、登録作業をしているが全然並んでいるお客さんが減らない。
そのため、注意事項などの説明を口頭ではなく冊子に切り替えて時間短縮することにした。
これで、少しは早く人を捌くことができるといいが……。
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