第23話 ダンジョン改造完了



「では、第七階層はいかがしますか?」

「ん~、今のところ造りたい物は無いから、六階層からの入り口と八階層への入り口を作って終わりかな」


実はダンジョンの階層は、それぞれで独立しているものではない。

もちろん、俺のこのダンジョンもすべての階層が繋がっている。だが、傍から見ればそれぞれの階層が独立しているように見えるだろう。


何せ、次の階層へ行く道が分からないようにしているからね。

その分、転移街道というトラップを使い、目的の階層へつないでいるのだ。それで、すべての階層が一つに繋がって広大なダンジョンになっているのだ。


まあ、一つの階層だけでも北海道がすっぽり入るぐらい広いのだがな。



「……マスター、冒険者ギルドのギルドマスター、ライアス・ブラント殿より通信が入っていますがどうされますか?」

「ん、苦情かな? ミア、繋げて」

「了解です」


ダンジョン各地の様子を映した、宙に浮いたいくつもの画面が左右に分かれると、中央にギルドマスターのライアスを映した画面が開く。


「こんにちは、冒険者ギルドのギルドマスター。何かありましたか?」

「お久しぶりでございます、ダンジョンマスター様。

それと、何かありましたかではございません。ダンジョン改造を行うなら、直前にも連絡をもらわないと混乱します!」


……なるほど、近いうちに改造するとは言ったが、いつするかは知らせてなかったのか。

それに、ミアからの通達でも詳しい日時は知らされていなかった、と。


「それは申し訳ない。事前の通知だけでもしておけばよかったと、反省する。

今後は、ダンジョンに関する大きなことがあれば、必ず知らせることにする」

「……ありがとうございます。

不躾なことを言って、申し訳ございません」

「いやいや、ギルドマスターは何も間違ってはいない。

こちらの思慮が甘かったのだ。これからも、何かあれば忠言を頼む」


そう言うと、ギルドマスターは一礼して通信を切ろうとした。

そこへ、ミアが割り込んできた。


「ライアス殿、今回はご迷惑をおかけした。

そこで、ダンジョンより迷惑料として金貨二枚を住人全員に支給したい。冒険者ギルドで告知をお願いする」

「告知ですか?」


冒険者ギルドは、俗にいう『何でも屋』だ。そして、ダンジョンの住人達との距離がギルドの中で一番近い。

そのため、冒険者ギルドで告知をすれば住人のほとんどに知らせることができる。


「冒険者ギルドならば、うってつけだろう?」

「それは構いませんが、受け取りはどうすれば?」

「それは、こちらで送ることができるから心配ない。とにかく告知だけ行ってほしい」

「……分かりました。ギルド前の掲示板などに貼りだしておきます」


そう言うと、ギルドマスターは通信を切った。

昨日時点のダンジョンの住人は、確か13万7022人。一人金貨二枚だから、全部で27万4044枚の金貨が必要ということになる。


金貨一枚がDP100で交換できるから、全部でDP2740万4400ポイント必要ということだな。

DP約四京ある今の俺にしたら、微々たるものだ。


「マスター、DPでの金貨交換をお願いします」

「了解、すぐに用意するよ。ついでに、入れ物の袋も付けるか」

「ありがとうございます」


俺は操作画面を呼び出し、DP交換を選んで金貨と交換。ついでに金貨を入れる小物の袋も用意して、この場に出現させた。

それをミアが、無限収納袋に入れていく。


ミアたちもアイテムボックスのスキルは持っているが、今回は量が多いので魔道具の無限収納袋に入れる。

そして、さらにダンジョン操作で住人全員にこの小袋に入った金貨二枚を配っていく。


「……いきなり目の前に表れたら、驚くんじゃないかな?」

「そのための告知です。

あと、出現時間も設定しておきましょう」

「了解」


ピッピッピッと、操作画面を操作して時間設定すれば終了。

これで、ダンジョンの改造が終了した。


「……よし、これで終わり」

「お疲れさまでした、マスター。

あとは、十二支ダンジョンの設定をお願いします」


新たに作ることになった、十二支ダンジョンの設定はランダムに設定する。こうすることで、どんなダンジョンになるか神のみぞ知るというやつだ。

ただし、難易度に関してはしっかり設定しておかないと死人がすぐに出て、放置されることがあるので難易度だけはこちらで設定しておかないといけない。


「難易度固定のランダムでいいだろう」

「……それでも構いませんが、地球人用の初心者ダンジョンは用意しておかないといけないのでは?」

「そうだな、地球人用は必要だな」


すぐに十二支ダンジョンの中で、初心者用になるダンジョンを選び、難易度を最低に設定する。

難易度最低は、ダンジョン内で死んでも復活できる仕様なので安心だ。


「まあ、他のダンジョンに行ってしまうと関係ないんだが……」

「どうかしましたか? マスター」

「いや、難易度最低の設定が終わったって話だよ」

「そうですか……」


あとは、運営をする会社ができてからだ。




▽    ▽    ▽




ダンジョン改造から二か月後、親たちの尽力のおかげで新会社『ダンジョン企画』が立ち上がった。

会社名は、またしても陸斗が名付けた。


まあ、キラキラネームの会社名ではなくて良かったが、シンプルな名前だ。

後で聞いた話では、陸斗は本当にキラキラな名前をいくつか出してきたが、そのことごとくを親たちに却下されそれならと今の名前になったらしい。


「やっぱり陸斗らしいエピソードだな」

「そうね……」


俺と凛は、親たちの力を借りて本当に良かったと感謝している。

ダンジョン企画のオフィスは、駅前の空き店舗を借りて構えている。本来は、商店街の一角の店舗だったらしいが、入る店もなくずっと空いていて安かったそうだ。


そこに、機材などを持ち込んで仕事を始めている。


「まずは、山を買って開園の準備よ」

「これで、ようやく『ファンタジーダンジョンパーク』が世に出るわけだ……」

「いや、その前にPV、宣伝映像を撮って動画投稿サイトで宣伝しないと!」


確かに、今の宣伝方法はPVが主流だよな。

動画投稿サイトは、有名どころでいいとしてPVってどんなものを撮るんだ?


「どんなPVにするんだ? プロに任せるのか?」

「何言ってんだ、これこそ素人で撮った方がいいんだぞ颯太」

「そうなの?」

「さあ、私には分からないけど来たくなるようなPVにしないとダメよね……」


ファンタジーを前面に出した、PVにすればいいのかな?

それとも、ダンジョン内の景色などを映したPVにすればいいのか?

後は、ファンタジーの住人と仲良くしている映像とかか?


まあどんなPVになるにしても、見れるものにしてほしいよ……。






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