第22話 ダンジョン改造



日曜の親たちとの話し合いも終わり、後は夏の開園まで準備を進めていくだけとなった。

場所はまだ決まってないが、ダンジョン内の改造は済ませておかなければならない。


「さて、ダンジョンの改造を済ませておこう」

「了解です。関係各所への通達は前もって終わっていますので、いつでもどうぞ」

「ありがとう、ミア」


いつもの最下層にあるダンジョン操作室で、俺とミアの二人だけでダンジョンを改造する。

だが、今回のダンジョン改造は大きなものにはならないはずだ。


「マスター、今日、陸斗様と凛様は?」

「陸斗は、企業名を決めるために学校終わったら、すぐに帰ったよ。

凛は、友達と買い物だそうだ。

だから、今日は俺とミアだけでダンジョンの改造をする」

「畏まりました」


ミアが丁寧に一礼すると、俺の目の前にダンジョン操作のための操作画面が出現する。

この操作画面で、ダンジョンの大きさや階層の広さなどいろいろなことが操作できる。もちろん、事細かにだ。


「まずは、第一階層の町の位置だな。

入り口をトンネルにして、トンネルを抜ければそこはダンジョンの中。そして、最初に見えるのはゲートと併設した登録所だ」

「登録所ですか?」

「そ、この登録所で冒険者登録をしてもらうことで、入場が簡単になるんだよ」


ギルドカードによる、入場ゲートでの認証が簡単にできるのだ。

もちろん、本人が使えるようにラノベなどである登録時の血の提供もしてもらうつもりだ。血の提供後、受付嬢の回復魔法で傷を回復すれば話題にもなるし、期待値も跳ね上がるだろう。


また、登録所とトンネルの間に駐車場などのスペースを入れることにした。

これは、三人の親たちから必要だと言われていたことだ。

そこで、多くの車が駐車できる場所とバスなどの大型車が駐車できる場所を用意する。後は、ダンジョン内で作った野菜などの食料を、ダンジョンの外へ運び出せる場所も作っておく。


「後々になる予定だけど、ダンジョンの外との売買のための場所も用意してほしいって」

「それで、駐車場の反対側に?」

「ああ、父さんたちからの要望だったからね。

俺も、ダンジョン産の食料が受け入れてもらえるなら嬉しいしね」


ダンジョン産の食料が、日本の食糧事情の助けになればいいのだけど……。


入場ゲートをくぐれば、そこは最初の町の南側。

まずは、宿屋通りを作っていろいろなお店を置いていく。突き当りの町の中心に冒険者ギルドを置き、そこを中心に区画で整理する。


北側に門を設置して、中央の町への街道を作る。また、北門の側に乗合馬車の停車場を作りゴーレム馬車の乗り合い場も設置する。

あとは、注意書きも設置しておかないとな。


「これは、乗合馬車の時間表ですか?」

「それもあるけど、注意事項のお知らせ看板でもある」

「何か、注意することが?」

「ああ、この先、携帯電話は使えません。とね」

「なるほど」


あとは、最初の町の街並みだが、ここはヨーロッパのような街並みといっておこう。

石畳の地面に、主に石でできた家など。

区画整理しているものの、住宅街にあたる区画で商売してはいけないわけではないので、そこにお店を出すこともできる。


また、大きな屋敷が並ぶ区画もあるが、立ち入り禁止にはしていない。

何故なら、貴族は最初の町にはいないし、住んでいないからだ。

最初の町で大きな屋敷に住んでいるのは、町やギルドの責任者か町長ぐらいだ。


あと冒険者もいるにはいるが、魔物退治などは最初の町に無いので新人が町の手伝いなどにいそしんでいる。

そのため、武器屋や防具屋は儲けにならず数が少ない。

その分、食事のできる店や宿屋、後はお土産屋が多くなるな。


「そういえば、ダンジョンのお土産は決めましたか?」

「う~ん、みんなにもアイディアは出してもらったんだけどね~」

「これといったものが無いと……」


こればっかりは、起業後の企画部署に任せよう。

ダンジョン産のお土産……、DPで交換できるものを用意するのもいいかな。

これぞ異世界の商品といった物は、ダンジョンの外にもっていくと騒ぎになりそうだし難しいよな。


「あ、あと両替屋を用意しないとな」

「両替屋ですか?」

「ああ、ダンジョン内の通貨は金貨や銀貨などの硬貨だろ?

今さら、日本の紙幣や硬貨を流通させるわけにはいかないだろう」

「……そうですね、慣れない通貨は混乱を招きますね」


だからこそ、両替屋が必要なのだ。

実は、この両替屋での両替はダンジョン内の通貨から日本の通貨への両替もできるのだ。つまり、ダンジョンで冒険者として働いてもらった報酬を日本円に両替すれば……。


ダンジョンに住み着く人が増えそうだが、いろいろと問題もあるだろう。

まあ、そこは運営の会社に丸投げだ。


「マスター、西門と東門は?」

「最初の町には、設置しないことにしたんだ。

必ず中央の町を経由して、他の町に行くようにしたかったからね。

それに、十二支ダンジョンに行くには、中央の町からでないと行けないからね」


異世界ファンタジーに、獣人やエルフなどの住人、魔道具でという制限があるものの自分で使える魔法が存在し、ダンジョンに潜って魔物と戦う。

これだけ、現実で体験できる場所があれば、当分は飽きられることはないだろう。


また、ダンジョンでお金を稼ぐことができるとなれば、世界中から人が来てもおかしくはない。

さらに、ダンジョン内の住人に言った住人が百万人になれば、向こうの世界への扉を開くことができる。

この扉は、空間の扉といって、DP交換リストに存在していたのだ。


空間の扉を開くことができれば、もしかすれば、地球と向こうの異世界との間をこのダンジョンが繋ぐことになるかもしれない。

まあ、あくまでも予想の範疇なのだが……。




「……よし、これで第一階層の改造は完了。

あとは実行するだけだけど、今の時間は大丈夫かな?」

「えっと、問題ないと思います」


操作画面で改造を終えて、ミアに完了のタイミングを聞く。

するとミアは、小さな画面を出現させて確認後、颯太に問題ないといった。

それを頷いて確認すると、颯太は完了画面をタップした。


すると、颯太とミアの周りにいくつもの画面が出現し、第一階層が改造されていく様子が表示される。

それに驚いて、家から飛び出したり慌てたりしている人々の様子も映し出していた。


「……かなり驚いているな」

「変ですね、通達はしっかりしておいたのですが……」

「もしかして、忘れていた人がいたってことかな?」

「それか、信じていなかったとか」


まあ何にせよ、第一階層の改造は行われる。

それは、そんなに時間のかかるものではない。こうして考えている今も、町が広がり、家が建ち、道が整備され、今までなかったゲートや入り口が出来上がる。


そして、ものの十分ほどで第一階層の改造は完了した。

あとは、混乱する人々をどうするかなのだが、後で迷惑料でもギルド経由で払っておこう。



「第二階層から第五階層は、改造する必要は無いからそのままにして、次は第六階層だ」

「第六階層は、ダンジョン階層にするのでしたね」

「そう、十二支ダンジョンを設置して、中央に迷宮都市を造るんだ。

迷宮都市に住む人もいるだろうから、大きく造らないとね」


第一階層の中央の町からの街道も作る予定だ。

街道を作って、転移の街道を設置し第一階層から第六階層へ転移することができるようになる。


迷宮都市を中心に、北の鼠ダンジョンから時計回りに十二支のダンジョンを設置していく。また、第六階層のフィールドには、弱い魔物の出現場所も設置しておこう。






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