第21話 親との話し合い



日曜日、陸斗と凛が両親を連れて俺の家に来た。ファンタジーダンジョンパーク(仮)の、運営を管理する会社を立ち上げる話をするためだ。

俺たち高校生には今一難しい起業のことを、親を交えて話し合おうとしたのだが、今、俺たちの親は頭を抱えていた。


「……」

「陸斗、起業するにあたっての準備ができてないようだが……」

「え、起業って届け出が必要なのか?」


起業に関しては、俺に任せとけと陸斗がやるはずだったんだが、どうも準備金が必要というところで止まっているようだ。

つまり、何もしてなかったってことだ。


朝方、陸斗と凛が両親を連れて来てそのままダンジョンジョンへ招待した。

俺のおやじと一緒に、陸斗と凛の両親も驚いていたが最初の町を案内しながら、ダンジョンのパーク化するにあたっての計画を話すとかなり乗り気になってくれた。


その際、入り口のゲートの話や駐車場の話も出て来ていろいろとためになる話が聞けたのは助かったよ。

また、シャトルバスの運営の話も出たのだが、そこで問題になったのが企業の話だ。


そこで、商人ギルドの会議室を借りて話し合いを始めたのだが、三人の両親全員が頭を抱えることになったのだ。


「五十嵐さん、これは私どもでやってしまったほうが早いのではないですか?」

「そうだな、子供たちに任せておくとすぐに倒産しそうだな……」

「颯太、起業の話だけど、私たちに任せてもらえる?」


陸斗の父親が、俺の父親に話をして俺の母親が俺に許可をもらうため話してくる。

なぜ俺に? と聞くと、ダンジョンのマスターが俺だからだと。


「父さんたちでしてくれるなら構わないけど……」


と、俺は陸斗の方を見ると、陸斗は腕を組んで考え込んでいる。


「陸くん、起業に関してはお母さんたちに任せてくれないかな?

いろいろと提出しないといけない書類もあるし、時間がかかるものもあるよ?」

「陸斗君、どうかな?」


陸斗の母親と凛の母親が、陸斗に優しくお願いしている。

陸斗は少し考えて、了承した。


「……分かった。企業は大人に任せる」

「ありがとう、陸くん」

「その代わり、企業名は俺が考えるからな」

「それは構わないわ。陸くんたちが始めた会社なのだもの」


こうして、起業は親にすべて任せることになった。

親に任せるにあたって、準備金のことは話しておかないといけない。


「それと陸斗のお父さん、準備金のことなんですが……」

「ああ、そんなことを陸斗に言っていたな。

こちらでなるべく抑えるつもりだが、もしかして、用意で来たのか?」

「ええ、これを売却して作ろうかと……」


そう言いながら、俺は空中に手を入れてそこから金の仏像を取り出した。

全長三十センチほどの、純金でできた仏像だ。

金の買取価格を考えれば、これで足りるはずなんだけど……。


「……これは、どうしたんだね?」

「ダンジョンのDPを金の仏像と交換して用意しました。

大きさとかは、金の買取価格を考えてこの大きさにしたんですが……足りませんか?」

「金の価格は変動するからわからないが、これなら問題は無いと思う。

だが、いいのかね? これを売っても……」


今俺のダンジョンでは、DPが四京以上あるのだ。

少しでも消費しないと、獲得DPと消費DPの量がつり合わない。


「構いません。ダンジョンがある限り、いくらでも用意できますから」

「ダンジョンがある限り……」

「いくらでも……?」


俺の言葉に、陸斗の母親と凛の母親が驚いている。

そして、俺の母親はなぜか笑顔で俺を見ていた。


「颯太、金の仏像以外のものでも用意できるのか?」

「ああ、できるけど……」

「じゃあさ、宝石とかどうだ? 金より軽いし、この前テレビの買取特集で結構お金になっていたからさ」


それって、質屋にブランド品や金とか高級品を持っていって買い取ってもらうやつだろ?確か、大きな宝石が付いたアクセサリーとかで大金が動いていたな。


「ダイヤモンドでもルビーでも、用意できるけど、俺の知識が無いとレパートリーが少ないぞ?

その関係の本とかで知識が増えれば、高級腕時計とか、センスのいい高級アクセサリーとか用意できると思う」


DPで用意できない者は、俺の知識が無いものだ。

だから、俺の知識が増えれば交換できるものも増えるのだ。


「ある意味、颯太ってチートだよな」

「そうね、チートな能力ね」


チートな能力とは思わないが、まあ二人がそういうならそうなのだろう。

陸斗と凛の三人で雑談をしていると、凛のお父さんから話しかけられた。


「颯太君、ところでさっき町を歩いていて武器を持った人たちを見たんだが……」

「冒険者たちですね。他にも衛兵や傭兵など、魔物と戦う人たちは持っていますね」

「いや、大丈夫なのかと心配になってね?

日本で遊園地を開園するなら、法律を守らないと……」

「ああ~!!」


そう、俺たちはすっかり忘れていた。

ここが日本という法治国家であることを。そして、銃刀法違反になることを……。



これはある意味、有難かった指摘だ。

ダンジョンパーク開園前に、このことに気づけて良かった。だが、すでにこのダンジョンに住む人たちは武器など珍しくも無いものだ。


それに、魔物がいる階層は決まっている。

これから、階層改造でダンジョンの中にダンジョンを作る予定で、魔物はそのダンジョン内のみの出現となる予定だ。

階層内で、魔物が出てくることはないようにする。


「とりあえず、第一階層での武器形態は考えないといけないな」

「でも、ダンジョン内の町に警察が常駐するのか?」

「そこなんだよな……。他の大型パークでは、常駐って見たことないからな」


ダンジョンパークは、階層ごとの土地は広大だ。

となると、警察は常駐するようになるのか?


「これは、ダンジョンパーク公開後に話し合いが必要だな」

「ですね。開園場所近くの警察署と話し合いの交渉はしておきますが、話し合いは開園してからになるでしょうね」

「今の状態で案内すると、話し合いにならずに強制で中止に追い込まれてしまいますね」


俺と父さんたちが話し合い、開園後に地元警察と話し合って決めることで落ち着いた。でも、その前に何度か話し合いだけはしておくらしい。

それこそ、これから起業する会社の役目だと言っていた。


「だから、颯太君にはダンジョンの改造に集中してくれ。

それと陸斗、ファンタジーダンジョンパークはいつ開園させるつもりだ?」

「今年の夏を予定しているぜ!」


ダンジョンの改造は、そんなに時間のかかるものではない。

だから、起業に時間がかかるのだろう。それを考えて、陸斗は半年後の夏の開園といったのだ。


「夏か……。猛暑に開園でいいのか?」

「もっと早い方がいいのか?」

「ダンジョン内の気温はそんなに変わらないぞ? 四季も無いし……」


ダンジョン内に四季はない。そのため、気温も一定に保たれている。

ただ、天気は変わる。雨が降れば風が吹くこともある。

それに、俺たちが天気を操作することもできるので、雪を降らせることもできるのだ。

だが、猛暑になることはないから、過ごしやすくなるだろうな……。






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