第20話 三人の話し合い



昨日から毎日、放課後に三人で集まり、場所は、教室や帰り道にある喫茶店にファストフード店などで話し合った。

主に話題は、ダンジョンをテーマパークにするにあたってどんな施設を作るかだ。


入り口は、場所を確保してからとしても入場口はどんなものにするのか考えた。

そこで出た案は、他のテーマパークと大差なかったが一年間有効のパスポートはどうする? という質問で、ある考えが浮かんだ。


「で、冒険者ギルドカードを利用できないかな?」

「冒険者ギルドカード……」


凛はピンときていなかったが、陸斗は考えながら頷いている。

冒険者ギルドカードは、登録申請して登録者専用のカード型の魔道具になる。再発行にお金は取るものの、偽造などは魔道具ということもありダンジョン外ではまず不可能。


それに、一度カードを作っておけば入場がセンサーにかざすだけで入れるようにする予定だ。


「それいいね、かざしてピッで入場できれば時間短縮になるし」

「大勢がさばけるけど、お客がたくさん来れば助かる機能だよな……」

「颯太、心配するな。お客は必ず来る、しかも、行列ができるほど来るって」


凛は、駅の改札口を思い浮かべているみたいだけど、俺は不安だな。

陸斗は、相変わらず自信があるみたいだが……。



次は、入場してすぐの町『最初の町』だ。

ここは、ファンタジー体験のできる町でありチュートリアルの町にする予定だ。

ここで何日か過ごしたりして、人族以外の人たちと交流を持ったり、ギルドでクエストを経験したり、ダンジョンへ来たというお土産なんかを販売する予定になる。


「ねぇ、ダンジョンのお土産って何があるの?」

「……ダンジョン饅頭、とか」

「……」

「そういうのは、後回しでいいだろ? 今決める問題じゃない!」


まあ、ダンジョンのお土産ってどんなものがいいか、一応考えと見よう。

ファンタジー体験は、魔法とかだろう。ただ、ダンジョンの外から来た地球人は魔素を体内に留めておく器官を持っていないから、魔道具で魔法を使う体験となる。


杖やタクト型の魔道具を使用して、魔法が使える体験をしてもらう予定だ。

剣や槍などの武器を扱ったり、皮の鎧に金属鎧の装備体験もいいかもしれないな。とにかく、地球に暮らしていては体験できない、ファンタジーの世界を体験してもらおう。


ギルドでのクエストは、せっかく最初に冒険者ギルドに登録してもらうなら体験してもらってもいいと思う。

定番の薬草採取から、町の雑用などを。


魔物との戦闘は? と考えるが、ダンジョンの第一階層に魔物は湧かない。

町での安全な生活を考えて作ったので、魔物は出てこないのだ。だが、ここまで来て魔物と戦ってみたいと思わない人はいないのではないだろうか。


そこで、最初の町から北に行った『中央の町』から第六階層へ転移の街道を通っていった先にある『迷宮都市』で、用意したダンジョンに潜るように考えた。


「ダンジョンの中にダンジョンって、大丈夫なの?」

「それは心配いらない。ダンジョンの中に新しいダンジョンを造ることは、何も珍しいことじゃないんだよ。

異世界にあるダンジョンも、ダンジョンの中に入り口を作っているものもあったし」

「へぇ~」


俺もダンジョンでいろいろやっていたが、異世界のダンジョンのことは調べていた。

いつか、行ってみたかったし。

でも、結局時間が無くて行けなかったな……。



俺のダンジョンのダンジョンは、全部で十二造る予定だ。

星座の名前で造ろうと思ったが、陸斗が反対して十二支の名前を付けることになった。子・牛・虎・卯・辰・巳・馬・羊・猿・鳥・犬・亥の十二支ダンジョンとなる。


でも、これだとダンジョンボスが何なのか分かりやすいな。

十二支ダンジョンで、最も難易度が高くなりそうなのが『辰』となるわけだ。龍がダンジョンボスとは、踏破できるのか?


「この十二支ダンジョン、どれが人気になりそうかな?」

「俺は、牛か鳥かな。解体かドロップ品に肉がありそうじゃねぇ?」

「ダンジョン内の宝物も、どのダンジョンかで変わりそうだな……」


凛には、卯か犬ダンジョンがいいかもな。

中には、かわいいウサギや犬が出てくるかもしれないし。でも、それだと倒すことが難しくなるのか。

一番不人気は、子ダンジョンか? まあ、開放してから分かるか……。



あとは、町の様子とかか。

各ギルドの位置や町の様子。どんな人たちが住んでいるのかで、どんな暮らしになっているのか考えないとな。

町の、運営に関係のある人たちばかりが暮らしているわけではない。


コンビニやホテル、レストランなどダンジョンの外から出店してくる業種もあるかも。


「あ、颯太、最初の町では、携帯が使えるようにできないか?」

「携帯を? もしかして電波が通じるようにしろと?」

「そうそう、最初の町は体験の町だろ? ダンジョンパークに来て体験したことをSNSに上げて宣伝に利用しようと思ってな」


確かに、最初の町で体験したファンタジーは絶対SNSに上げるだろうな。

そして、それが賛否をよぶか。

本物か手品かCGか。それとも……。


まあ、騒ぎになることは間違いないな。


「分かった、最初の町だけ携帯の電波が通じるようにしておくよ。

でも、最初の町だけだぞ? 他の町で使えるようにすればネタバレになるからな」

「分かってるって」


陸斗も、電波の通じる場所には賛成のようでよかった。

ダンジョン全体で通じるようにすると、どこに何があるのか探索する楽しみが無くなるからな。

せっかく、ダンジョンのほとんどで魔物が出ないようになっているんだ、いろいろなところへ旅をするのも面白いと思う。


そのため、ダンジョンの階層の大きな変化はしないように心掛けている。

大きく変わる階層は、主に三カ所。


まず第一階層。

ここは、町を増やしてダンジョンパークに備えた造りに変える。

町を増やし、ダンジョンの外から人を入れることができるようにする。移住を考えることもするが、今は住人整理が先だろう。


次が第六階層。

ここは、旧聖王国の兵士を鍛えるための魔物が湧く階層だったが、ダンジョンのための町『迷宮都市』を作り、十二支のダンジョンを用意することになった。

各ダンジョンの階層は、これから決めるがそれぞれの難易度別に潜ることになるだろう。


最後が第七階層。

ここも、旧聖王国の兵士を鍛える階層だったが変更する予定だ。

だが、今のところ使い道が決まっていない。そのため、第六階層からの通路と第八階層への通路があるだけになるだろう。


一応、ここはダンジョンなので第一階層から、最深部の第十階層までは通路があるのだ。ただ、目立つ場所に設置してないのだが……。

それはともかく、第七階層に関してはのちのち何かの階層になるだろう。



「ねぇ颯太、ダンジョンパークの名前はどうするの?」

「……そういえば、決まってなかったような」


凛の質問で、俺はダンジョンパークに名前が無いことに気づいた。

そして、陸斗に視線を流すとサムズアップに笑顔でいるので決めているのだろう。


「陸斗、決めているのか?」

「もちろん! このダンジョンは『ファンタジーダンジョンパーク』、略して『FDP』ってどう?」


俺と凛は、顔を見合わせて頷き、陸斗に向くと同時に答えた。


「「却下で」」

「えぇ~」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る