第8話 階層の状況
「それじゃあエレノア、第一階層から頼む」
「はい、先ほどミアからも報告がありましたがもう一度報告します。
現在、第一階層には四つの町と三つの村が存在します。
また、それぞれの町や村から他の階層への道が、直接繋がっています」
この俺が作ったダンジョンは、全部で十階層に分かれている。
ダンジョンコアのポテンシャルを考えれば、これは極めて少ない。いや、少なすぎる。
では、なぜこんなにも少ない階層になっているのか。
それは、それぞれの階層を限界まで広げているからだ。
また、階層の空間をドーム状にしているため、感覚的にかなり広く感じられる。
まず、一階層の広さだが、北海道が丸々すっぽりと入ることができるほど広い。
その上で、ドーム状になった空間が十階層続くのだ。
これが、どれだけ無茶苦茶なダンジョンか分かるだろう。
通常のダンジョンは、空間をこんなにも無駄に使わないので階層も深くできるらしい。そのため、新しくできたダンジョンでも十階層以上が当たり前らしい。
ただ俺の場合は、旧聖王国絡みの件があったため仕方なかったが……。
「最初の町から東に位置する『農業の町』ですが、封鎖された現在も安定した収穫ができており混乱は少ないようです。
農地階層と呼ばれる、第二階層への道も特に問題ありません」
「ん、ダンジョン内の階層への行き来は問題ないようでよかった……」
旧聖王国領内を賄えるほどの、農作物を育てるには一階層を丸々畑に変える必要があったが、今思えば無茶な命令だった……。
だからこそ、階層を限界まで広げ畑階層を作ったのだ。
本来なら、階層移動は階段などにするのだが、俺はDPを使って転移街道なるもので階層をつなげたのだ。
この転移街道とは、転移の魔法陣が施された街道で普段使っているときはただの街道としか見分けがつかず、使ったものに気づかれぬままどこかに転移させることができるとか。
そこで俺は、農業の町から第二階層へ階段を使わず行き来できるように転移街道を設置した。
「第二階層はどうだ? 収穫物とかに問題は?」
「ありません。
ダンジョン内で実る食べ物には、病気なども無いようですし連作障害も耕し直すだけ解消され、豊作続きとか」
さすが、ダンジョン内の畑。
というより、これは修復とかいうダンジョン階層の機能が働いているからだ。修復は、DPがある限り自動で行われる。
そのため、畑で一度収穫すると、すぐに無くなった土の栄養などを修復してしまう。
それと、農民の人たちが助かっているのは、ダンジョンで貸し出している農業ゴーレムの活躍も大きい。
地球であれば、農業に使う機械類を異世界で農業ゴーレムとして作ったのだ。
素人の俺が、思いつく限りで作った農業ゴーレムだから万全とはいかないが、ある程度の助けにはなったようだ。
今度、地球の農機具などを調べてゴーレムを作り直さないとな……。
「第三階層の現在は?」
「放牧階層の第三階層も、今のところ問題ありません。
肉食を敬遠している方が少ないので、需要に応じた肉の確保が可能となっています。
ただ、最初の町から西にある『牧場の町』の人口が減りつつあります」
町の人口が、減っている? 何だろう、嫁問題か? それとも出生率か?
「何か病気が発生したのか?」
「いえ、それが、町の牧場関係者が、第三階層に家を建てだしてそこに住んでいるみたいです。家畜の世話をするには、近くにいたほうがいいとかで……」
まあ、分からんでもないが放牧階層には、家畜になる動物だけではないはずだ。
自然が広がるエリアもあるから……。
「第三階層に住むのはいいけど、自分の身は護れているのか?」
「住居エリアを作って、高い塀で囲っているようです。
また、時々冒険者などが護衛に着くことがあるとかで……」
第三階層には、熊に猪にと危険な動物もいる。
確か、地球でいう虎に似たランバーとかいう動物もいたな。肉が美味いんだが、人を食うこともある動物だからな。
冒険者などの護衛は必要になるが、階層の奥のエリアにいるから、まあ襲われることはないだろう。
「第四階層はどう? あそこもエリアは区切っているとはいえ魔物のいる階層だからね」
「海階層の第四階層は、養殖が始まりました。
魔物が生息していないエリアの浅い海になりますが、結果はこれからでしょう。
また、最初の町の北にある『漁業の町』からは、運搬ギルドの活躍で新鮮な魚介類が手に入りやすくなりました」
海階層と繋がっている漁業の町は、新鮮な魚介類が手に入るのだが、異世界あるあるの一つの運搬ができずに困っていた。
だが、運搬ギルドとダンジョンの提供する魔道具のおかげで、遠く離れた町へも運搬が可能になった。
これにより、運搬ギルドの需要が爆上がりしダンジョン外への貿易品の一つとなったのだ。もちろん、外の世界の海に近い町などからも運ばれるが、時化などがないダンジョンでの魚介類の方が需要は高かった。
「第五階層はどう?」
「山岳階層の第五階層は、現在休業状態です。採掘などは行われていません」
「ん? 枯渇したってわけじゃないよね?
ダンジョン内なら、DPがある限り修復で鉱石も復活してしまうし……」
山岳階層には、いろいろな鉱石の取れる山を用意した。
鉄鉱石やミスリルにアダマンタイトなどなど。金策なら、文字通り金や銀に宝石類などを採掘できるようにしたのだ。
また、この山岳階層に続く洞窟は、農業の町と漁業の町の間にある『採掘の村』から通ることができる。
そして、すべての採掘は『採掘ギルド』によって管理され、市場に出回る鉱石などの量も調整されていた。
「いえ、そうではなく『採掘ギルド』が採掘作業を止めるようにと通達を出しているのです」
「ギルドが規制しているのか。
……もしかして、ダンジョンの外との貿易ができなくなったから止めたのか」
「おそらくは」
ということは、ここが一番ダンジョン封鎖でわりをくっているってことか。
確かに鉱石の使い道は、ほとんど決まっている。武器や防具を作るのがほとんどだ。それに、ここは枯渇することないダンジョンの採掘場。
ギルドで調整しているとはいえ、需要はある。
ただし、ダンジョンの外にということか……。
「……今のところ、解決策はないな。
それに、山岳階層にも修復の制限を設けないといけないかな……」
「そうですね……」
今のところ、地球の日本でダンジョンを解放する気はないからな。
ここまで確認したけど、問題だらけな気がしてきたよ……。
「それじゃあ、次の第六階層はどう?」
「第六階層と第七階層は、旧聖王国の兵士たちを強化するために解放しましたが、現在は冒険者たちの魔石採掘場と化しています。
この二つの階層だけですからね、このダンジョンで魔物とまともに戦えるのは……」
ああ、そうだった。
旧聖王国の兵士強化のために、この第六と第七階層を使っていたんだった。本来なら、ダンジョンのあちこちで出現する魔物を、この二つの階層に集めて兵士たちの強化訓練にしていたんだ。
さらに、兵士たちには死なないように保護までつけて戦わせていたか。
おかげで、強化兵士たちはかなりの戦果を挙げていたよな。
まあでも、一般兵士とかを強化しただけだからすぐに対策をされて、敗北を重ねていたらしい。旧聖王国の侵攻も、最初の頃は連戦連勝とか言っていたし……。
「う~ん、今のところ確認だけだから、今のままにしておいてくれ」
「よろしいんですか?」
「今は、ね。そのうち考えないといけないけど、今はそんな時間もないし」
「分かりました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます