第7話 ダンジョンの確認
「それはそうとエレノア、ダンジョンが閉鎖される前に帰れて助かったな。
帝国で、情報収集中だったんだろ?」
ダンジョンの出入り口が封鎖される前に、エレノアが戻れて俺がほっと安心しているが、ミアたちの表情は少し暗い。
……何かあるのか?
「違うのか?」
「……それが、私も分からないのです」
「分からない?」
「はい。確かに私は、帝国領内で情報収集をするため、町から町へ移動している途中でした。乗合馬車に乗り、次の町へ向かっている途中でここへ召喚されたのです」
この場所へ、召喚? いや、転移か?
俺たちが今いる場所はダンジョンの第十層にある、ドーム型の管理室だ。
この場所から、ダンジョンのあらゆる場所を監視し、時には調整するための部屋。通常のダンジョンならば、宝物の再設置やダンジョン内の魔物の強さの調整なんかが主な仕事だ。
だが、ここは通常とは違うダンジョンで、人が管理できるダンジョンだ。
しかしそれでも、調整は必要で、階層の天気や鉱石の採掘量などを決めていた。
「……マスター、私の見解をいいですか?」
「ああ、ソフィアの見解を聞かせてくれ」
「はい。おそらく、おそらくですが、エレノアがマスターの側付きで、ダンジョンで生み出されたホムンクルスだからではないでしょうか?」
ダンジョン産のホムンクルスだから?
それと、マスター側付きって……。
「……なるほど、私たちホムンクルスは、ダンジョンと同じでマスターのものというわけですか」
「んん? 俺の、モノ?」
ミアが納得したように言っているが、どういうことだ?
……ダンジョンと同じように、俺が造り出したから?
それで、俺と繋がりがあるためエレノアたちも、ダンジョンと同じように地球に召喚されたということなのか?
いや、正確には、ミアたちホムンクルスはDPと交換しただけなんだが……。
「それなら私とマスターは、一心同体ということですね!
マスター、末永くよろしくお願いします!」
「ん? ああ、よろしく……」
嬉しそうに、エレノアは俺に一礼すると、すぐにミアとソフィアに絡まれる。
「ずるいですよ、エレノア…」
「そうです! 私たちも、末永くマスターのお側に居たいです!」
……まあ、ミアたちに慕われているのは分かったから、これはこれでいいか。
それはそうと、今のダンジョンの状況を確認しておかないと……。
「オッホン! とにかく、中へ入ってダンジョンの現在の状況を確認したい。
ミア、エレノア、ソフィア、案内してくれるか?」
「「「はい!」」」
俺は、ミアたちを先に行かせ青い扉の中へ入っていく。
今の今までのやり取りは、俺の部屋で行われていたのだが、母さんが覗きに来ることはなかったな。
結構、声が大きかったと思うのだが……。
俺が召喚した青い扉の先は、懐かしいドーム状の管理室だった。
部屋の真ん中には、よく座っていた社長椅子が鎮座する。約一日ぶりだというのに、送還されたあの時の椅子のままだ。
「というか、よく考えれば時間の進み方が違ったよな。
何故、この椅子は三十年前の椅子なのにきれいなままなんだ?」
「マスターの備品のほとんどには、劣化防止の付与がされていますので、何十年経過しようとも朽ち果てることなどありません」
ミアが、少し自慢げに報告する。
ということは、こっちで着ていた俺の服とかにも劣化防止が付与されているってことか……。
俺は細かいことを気にすることをやめ、いつも座っていた椅子に座りミアに報告をお願いする。
「それじゃあ、現在のダンジョンがどうなっているのか報告してくれ」
「分かりました」
社長椅子に俺が座ると、ミアたち三人は俺の左側に並び報告を始める。
と同時に、ダンジョンの各階層の様子が空中の八つの画面に表示される。
「現時点で、ダンジョン内の人口は13万6773人となります。
第一階層にある最初の町をはじめ、四つの町と三つの村に別れて人々は暮らしております」
さらに、ダンジョン内に暮らしている種族も様々だ。
人族、獣人族、ドワーフ族、エルフ族、天使族、魔族、龍人族と多種多様にいる。
中には、上位種のエルダードワーフや獣のような顔つきの獣人たちもいるらしい。
種族ごとの揉め事はあるものの、それぞれの種族のまとめ役が話し合いを頻繁に行っており、極端な迫害や戦争に発展することはないらしい。
「各ギルドの状況は?」
「現在、それぞれの町にギルドは、冒険者ギルド、商人ギルド、錬金ギルド、運搬ギルド、料理ギルド、鍛冶ギルドなどが存在し、様々依頼に応えているようです。
ただ、ダンジョンの閉鎖とともに、各ギルドそれぞれで現在混乱しているようですが……」
特に運搬ギルドなどの、ダンジョンの外と中を行き来しているギルドは暴動に発展しそうだな……。
何とか、解決できればいいんだが……。
ふと、八つの画面の一つに、ダンジョンの封鎖された入り口が映った。
そこには、多数のドワーフや鉱山夫の姿をした人たちが、何か行動していた。
「……あれは、ダンジョンの入り口を掘っているのか?」
「おそらくは、そうなのでしょう。
ダンジョンが、何故封鎖されたのか分からないので、せめて自分たちで外に通じるトンネルをと、最初の町のドワーフたちや鉱山の人たちに依頼したのではないでしょうか」
なるほど、行動力あるな……。
だが、あの封鎖した壁はダンジョンの壁だ。掘ったところで、DPを自動で消費して元の壁に戻るだけだ……。
「ミア、各ギルドや各種族の代表に通達してくれるか?
しばらく、ダンジョンの外には出られないからと」
「分かりました」
そう返事をすると、ミアは自分用のモニター画面を出し、どこかに連絡しはじめる。
……ダンジョン内の人たちとの連絡手段があるのか。
俺はその辺、うまくできなくて任せっきりだったからな……。
まあ、その代わりに聖王国の役人は俺が担当していたがな。
「連絡が付きました。
すぐに、依頼を破棄して引き揚げさせるそうです。
あと、ダンジョン封鎖の不安解消のための場所を何とかできないかと要望をもらいました」
「不安解消、か」
ダンジョンの外との繋がりが切れたからな、無理もない。
それなら、不安解消ができる施設を建てれば人々の要望に応えられるかな……。
DPで、第一階層に何か出すか。
「ん? 一……千……億……京?!
四京って、どれだけDPが溜まっているんだ?!」
ミアたちの管理で、ここ三十年ほどあまり使ってなかったから貯まる一方だったのか……。
DPは、生物の生命力で得られるポイントだからな。もちろん、魔力を変換させて得ることもあるけど、変換率が違う。
生命力をDPに変換するのは、生命力一に対してDP一だ。
だが、魔力をDPに変換するのは、 百対一になる。
そのため、ダンジョンマスターたちは生命力を吸収しようとあの手この手で、ダンジョンに入ってきた侵入者を、ダンジョン内で殺すのらしい。
だけど、殺せばその時だけの生命力が吸収できるが、生かせば吸収できる生命力は少ないが、その生物がダンジョン内で生きている限り、少しづつ少しづつ、塵も積もればで永続的に吸収できる。
こうして、溜まりに溜まったDPが約四京。
「マスター、一階層にどのような物を作れば?」
「たっぷりDPがあるから、話し合って人々の不安解消になる物を作ってくれ。
この件は、ミアに任せるよ」
「ありがとうございます」
ミアは俺に、お礼を言うと話し合いを始めた。
そこで、次は私がとエレノアが報告をしてくれる。
「では次に、各階層の状況を報告します」
「ああ、よろしく頼む」
「はい!」
エレノアは、嬉しそうに各階層の現在の状況を説明していった。
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