二十話、英雄になりたい
そういって、少女は
「――」
どれだけ、そうしていただろうか。
声にならないその声は、
目じりに
(何をしているんだ《ぼく》は。何が、何が良い人だ)
(リノだって、
一番
そのために、
(《ぼく》が、もっと強ければ)
王国が
種族の
伝え聞く
そのどれもにアルスは
(ちくしょう、ちくしょうっ)
けどここにいるのはただの
守るべき人に守られた、弱い人。
(《ぼく》は、《ぼく》がなりたかったのはこんなものじゃ――)
本来、成り得ていた自分。そんなもの、
それでも
『じゃあ、ぼくはそれを
『
それはいつの日の事だったか。
⚔
活発な
「おれは
棒切れを
耳を
「じゃあぼくは、どうしようか。
「
そうして、
小さな村の、両親が働いている子供にとっては
夕暮れすらもまだな青空の下で、
「けどさ。どうして
そんな問いかけに、具体的には何を目指すのかという質問に。
幼い少年は、
「………………」
けど何を話したのか、その単語すらも思い出せず。
思い出せるのは、それを聞いて
⚔
(そうだ、《ぼく》は)
一つ、氷が
「《ぼく》はっ」
二つ目が、
三つ、四つ。気付けば
今さらながら力の入る指に、
「
そのために、そうあるために。
今から死にに行くような少女
立ち上がれ、アルス・リーン。守ると約束しただろう。
(ッ)
「行かなきゃ……」
歩き出す。身体がぶれる。
それでも方向すら定めず、
結局
自分の中の何かが
「――なら、
道の先、
⚔
「あなたは……」
「
「情報屋……」
それは、文字通り情報を売る仕事。
だがそれが動いているという事は、やはり何かしらの事態が王国の裏で起きているという事。
だけど今気にすべきはそうじゃない。
「
「っ、なんですか?」
情報屋、レンドは
見てから、それがなんなのかに思い至った。痛みを中和して
「飲んでおくといい。気休め程度だが、ないよりは格段にましだろう」
「…………頂きます」
本来なら
閉じ
「金は返さなくていい。それほど
「どこに行ったか分かるんですか!?」
「正確とまではいかないが、想定はできる。運が悪いと言わざるを得ないが」
「何か問題があるんですか」
「
分からない。だが
「それは……」
それでも、自分から
「一番街のことも、少なくとも君たちに関係しているとまでは考えがついているのだろう?
エルラインには、大通りが六つある。一番街から、六番街。それぞれ異なった特色を持つ。そして王国の主要な出入り口、いや、城門があるのは一番街、三番街、五番街の三つ。
そのうち一番街は
「そして五番街には、今現在
「――」
それは本当に、運が悪い。と言っても、計画的なそれは運ではないだろうが、それでも悪態を
明確な
「薬は効いてきたか?」
「――はい」
調子を
痛みが
これならばと、
「最後の
問いかけるレンドと名乗る情報屋。
それに対してアルスは、
「……戦います。それでリノに会えるなら」
数日前のドレストでの
その眼光の光は夜の
「なら良い。
「信じますよ」
「ああ――
目的地は五番街。レンドの後を
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