十六話、虚勢
「! アルスさ――」
「――えっ?」
月明かりに映らない黒の
それは勢いよく、アルスの反応
「【
キンッ、と。
⚔
「――
割って入る様にして中年の真人種が
「
その言葉通りなら先ほどまで酒を飲んでいたのだろう、しかしその顔は実に真
街中で
「……」
「おいあんた、相当な
「……」
疑問を口に出すホーレンへと、帰ってきたのは
その勢いのままに、黒の
「眼中にないってか?
守る様にして立つホーレンとは
「「っ!」」
応戦する様にして、アルスは
立ち直って見せたその時間で、
ましてや
(敵は今のとここいつだけ。
周囲に人
「アルス! そこの子を連れて酒場でも良い、とにかく人がいそうな方へ走れ! 早く!」
「……けどっ」
「はっきりいうそいつは
それは言外に、この場にいては足手まといだと
それが最善だ。そうするべきだ。力がないんだから。
「ッ
「はい」
リノの手を取り、
曲がり角を曲がる寸前、アルスはホーレンが
――
⚔
そうするよりも先に、リノが手を引いた。
引っ張られる様にして、むしろ転ぶ勢いで
「すみません。宿へと
発火したかのように、
例えそれにアルスが
「けどそれじゃホーレンさんの安否が分からない。戦ってくれるあの人を置いておくことなんてできない」
「しかしあの存在は、いえはっきり言いますが
「それは……」
安静にしていろと、そう言われたにも
標的はリノ。目的は
「あの男の人が、足止めとして戦ってくれています。今なら
「見捨てるなんてできるわけ」
「だから
アルスの性格を
(どうする。
そもそも
ホーレンの安否。リノの安全。最悪なことにアルスの
棒切れを
しかし
「……」
「――ッ!」
先に気づいたのは
「ホーレンさん……っ……」
時間
「……」
それに対して
アルスはリノを少しでも
「「……」」
二対一。
「目を
何者かの声が
ひゅんと、
次の
「走れ! こっちだ!」
声の主をアルスは知らない。だがそれは自分
いち早く回復したアルスは、
「うわっ!?」
「っ!?」
曲がり角を曲がり、足りないとばかりに走ろうとしたアルスは、その
少々
「しっ、静かに」
息苦しい中、
数瞬、数秒、数分。永遠と続くと
灰色の
「
小声で、リノはアルスへと質問した。知り合いの
「ごめん。
それに対してアルスは、同じく小声で返した。
目を凝らす。光
「――
「はい、ありがとうございます助けてくれて」
ようやく
礼を言い、アルスは頭を下げる。
「良いさ、困っていたんだろう?」
「それはまぁ……そうなんですけど。正直
落ち着いて男を見る。変わらず
男は、
「そうか。しかし気を付けた方が良い。一番街で起きた
「いえ、本当に助かりました。気を付けます。……えっと、さっきの人もそれ関係なんですか?」
いや、自身の近くにいる少女関連なのは知っている。貴族たちが良く姿を見せる一番街に
しかしそれが
ここ三番街から近い場所、王国内に
「あまり
「……そうなんですか。分かりました。気を付ける事にします」
「ああ。出口はそっちだ。家なり宿なり、早く帰ると良い」
「はい」
男が指し示した方向を見て、そして少女を連れてアルスは歩く。少女は何も言わず、それに合わせた。
そこから数歩、
「……」
⚔
何とか、そう何とか宿へと
片や初めての経験に
「あれが……
「……はい」
何かを言おうにも、言葉が出てこない。
ホーレンはどうなったのか。それを調べようにも、もしまた
「あの男の人が言っていたことが真実なら、
「……それは真実です。
「だとするのなら、確実に
ホーレンの安否を
(それでも)
どうにかするしかない。
「取り合えず、どうしよう。一応
「まぁ、数ある場所から特定は難しいかもしれませんが可能性がないわけじゃありません。一度
「だよね……。一応
「構いませんよ。あるだけマシです。それでも節約はしておいた方が良いかもしれませんが」
ついでに少しだけアルスは食べた。
「うん、味気ない」
「……節約はしておくべきですが?」
「空腹で注意が
アルスも、別に考えなしにそうしたわけじゃないが、
まだ空腹にはなってない。ちゃんと夕飯を食べている。それでも口に
「はぁ……じゃあ
「そうなると……
「
ため息の後、リノは窓の近くに
宿の一室、出入りできるのは
明かりについては、付けるかどうかを
「そういや一番街で、あー……
「分かりませんが、街並みがあったのは覚えています。その一番街とやらに行ってみないとそこだったのかは判別付きませんが、
「…………すみませんでした」
「責めていませんので気に
明かりの消えた宿の一室で、
一方的に窓から
それが間をおいて、ぽつぽつと
長い、長い時間が始まった。
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