九話、魔物と魔法
限りなく小さな声で、それでも聞こえるようにとアルスの耳へと
当然で、しかし知りたくなかった必要な情報を。
「あの
「ッ」
落ち着いてきた身体の中、目だけを周囲へと走らせる。
背の低い草、動いてない。木の
(
木を
姿は見えないがそう遠くない場所には
包囲
(どうする。どうすればいい。
(
天に
むしろ悪化するように、
「アルスさん」
「
歯を食いしばるように、強く目を閉じて。それでも絶対に少女だけでも森の外に
しかしそこにアルスはいないだろう。
アルスは
それよりも先に、少女が口を開いた。
「います。見て左、
「……本当だ」
時間はない。それも限りなく。
「だから
「できたらいいんだけど、ごめんその方法を思いつかない」
「方法はあります。一回限りですが」
いやに冷静に、少女は落ち着いたように話を続ける。
アルスが
しかしそれよりも発した言葉だった。
「――本当に?」
「はい。しかし問題が一つ。
「それは
「
「――
少女の言うことが事実なら、確かに
それを少女が使えることへの
「どうですか?」
「分かった、それでいこう。移動は任せて。ごめんけど
「――……はい」
活路は見えた。どちらにせよ
すぐにでも走り出せるようにと立ち上がり、少女を
「…………背中でもいいんですよ」
「君の無事が大事。そもそも
「そう言うことでは……いえ、わかりました」
こそこそと動く
「――行きますよ」
「――
呼吸を合わせるということはしないが、合図ははっきりしている。
少女が
「【
「ッ!」
乱雑に放たれたそれは、一直線の
複雑に
そして少女を
行き先は
⚔
「なんとか、難を
「はぁ……はぁ……そう、だね……」
アルスは火の付いた
そして少女は、
危機を
「リノちゃん、でいいんだよね」
「はい」
少女から人
目線は立った状態で使えるようにと固定された
「それ、確か
「そう、ですね。
(本当にそうなったのは
通常の
「
「……この感覚も数日の付き合いです。確かに失った分、きついですが。慣れないわけじゃありません」
「それでも大変なことには変わらないんじゃない? いいよ、無茶しなくて」
(ああもうっ。
無茶をさせた罪悪感が、
しかし一
(言わなきゃ、危険だって。これで二回目なんだ。生きてるのが
気が進まないと手をこまねくが、アルスのそれは正論であり生きるための
両親から教わったのか、それとももしかしたら良いとこの生まれで
(言おう。勇気を出せアルス・リーン。もし三度目なんてことがあったら
自身を
立ち上がり、
「よしっ」
少女の方を向き、しゃがみ視線を合わせ、アルスは警告を口にする。
「いいかい、リノちゃん。この際なんでここにいるのかは聞かない。だからこの先のことをちゃんと聞いてほしい」
「……」
「さっき見たあれはね、
なるべく伝わるようにと、ゆっくりとした調子で言葉を
(うーん……説教っぽくなってないかな?
名案を思いついたように、アルスはある単語を付け加えようとする。
大好きで、
「
「……」
近づかない、それを強調する。危ない場所には近づかない、危険だからもうしない。
返事はない。
(体力は回復してきた。少し日は落ちるけど、もう少し時間を待って準備を整えてから森を出よう。
(何度も何度も
言い聞かせるようにしつつ、道のりや危険要素を思い出す。そしてなるべく最短に近く安全な場所を探す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます