五話、翠髪の少女
それからも視察は続き、手にとっては
ここ
(ちょっと
結局
通りを
「ただい――」
ま。とは続かなかった。
金具の音を立て扉を開いた先を見て、アルスは石の様に固まった。その手から、
アルスの視線の先、
姿は朝と変わらず、ただ横から起きただけ。だというのに意識があるというだけでこんなにも印象が変わってくる。
幼いとしか思えなかった外見に、不思議と
「お――はよう。それともこんにちは? えーっと、初めまして?」
何はともあれ少女は目覚め、そしてアルスはしどろもどろになる。
起きる事を望んでいたが、いざそうなればどう接して良いか分からない。少女からすれば知らない
何より、思ったよりも少女の様子が想像と違った。年不相応化の様な落ち着きがある。
「はじめ、まして」
と、同時に
「あ、これ! 水!」
しかし少女は受け取ることはしても飲もうとはしない。
アルスは疑問に思い、
(
考えて、考えて。
そうして
アルスが可能性が高いと
(
安全をその身で証明するように。
「口付けた物で悪いけど、ほら」
そういって自分の
「中に入ってるのは近くの
相当
「ぅ……」
一息つくようにして、少女は下を向いた。
(さて、どうしたものか)
意識はある。すぐにとは言わないけど話すことも
聞きたいことは山ほどあるが、
まだ幼い少女だ。きっと心細さもあるだろう。
「えっと、そうだな」
迷っては、何を口にしていいのかと
乗りかかった船みたいなもの。ここで放り投げるのは無責任だ。
「――そうだ。
「…………リノ」
「リノちゃんか。じゃあリノちゃん。ここは
エルライン王国。ここ
近くの村からの
周辺の村出身。もしくはここに住んでいるのなら名前は知っているし安心も
「……エル、ライン?」
(っ。そっかー……)
「分からない?」
「聞いたことは、ある」
「! なら」
けど、どういう国なのかも風景も知らない。
思い出そうとしても、
表情と、
可能性は二つ。
一つは近くの村出身だけどまだ
二つ目はここ
(けど水が安全かどうか疑う事をこの年齢でするかな)
頭が勝手にそういう方へと
「けど、知らない」
つまり、目の前のリノと名乗る少女はエルライン王国周辺の村出身ではないという事。それなのにドレストの森にいた。傷だらけで。
(どうしたものか)
いよいよ明るい未来の可能性が消えていく。
会話はできた。意識もはっきりとしている。ないなりの知識でなんとか
「……」
水を
考えようとする身体は不思議と外を向いていた。
先ほどの少女と同じように
「じゃあエルラインの事でも話そうか」
アルスが
同業者である可能性が高まったと、そう喜ぶにはまだ早いだろう。
ちらつく
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