おとうと

ナツメ

のろい

 君が髪を伸ばすのは俺への当てつけだと知っている。あるいは呪いか。後ろ姿が日に日に彼女に似ていく。その姿で俺の名前を呼ぶ。呼ぶな。前は義兄にいさんと呼んでいたくせに。そうやって彼女のフリをして俺が苦しむのを喜んでいる。彼女を喪ったのは俺も同じだと言ったところで君の耳には届かない。細く柔らかい黒髪は嫌になるほど君の姉によく似ている。その黒髪がすっかり伸びて、君がすっかり壊れてしまうのを、俺はただ見ていることしかできない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おとうと ナツメ @frogfrogfrosch

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る