第6話 講習
クララの所属するパーティ『シルヴァ・ホエール』はモンスター討伐を中心に活躍し、なかでも大型モンスターを得意としている。リーダーの
ゴーレムは粘土や石、金属などで作られた自動人形。知能はないが、制約を守って運用すれば主人の命令に従順だ。制約を破ると狂暴化するが、それを止める方法はある。
ゴーレムを造るためには、土を
さらに、クララたち『シルヴァ・ホエール』の使うゴーレム『タロス』は特別で、魔法を活かせるように魔法と親和性の高い希少金属ミスリルで作られた上に、体内に魔法のエネルギーであるマナを封じ込め、そのマナが漏れないよう
創造者は弱点を2つも持つことはないと考えたため、額のemethの文字とマナを詰め込んだ容器の栓である棘を一緒にした。ところが、キマイラ討伐の際に強烈な酸によりミスリルのボディは溶け、棘も抜け落ちてしまった。タロスのマナは漏れ出し、自動人形としても機能不全となった。
クララは単に鉱石と言っていたが、探しているのは希少金属ミスリルの鉱石だ。タロスのボディの修復と新しい棘の素材。ミスリルはマナの濃度の高い場所で採掘される。マナの溜まり場は自然の中にも存在するが、大抵は到達困難な険しい場所であり、ダンジョンの中などの方が、いっそ分かりやすい。マナプールで鉱石といえば、希少金属だと誰もが考えるだろう。
数年ぶりに帰郷したクララだが、故郷を懐かしむよりも冒険者パーティのことを第一に考えているのだろう。クララを知っているタムラが、まず口を開く。
「店の従業員には指示を出しておいた。マナプールの情報を集めて、店のお客さん方にも注文や会計のときに聞きこむように。しかし、まだ報告がない。自分で探さなきゃならないんじゃないか。クララの情報はどこからだ?誰にこの近くで鉱石が採れるなんて訊いたんだ?」
「元うちのパーティメンバーのデイヴっていう
「こんなこと言っちゃいけねえかも知れんが、信用できる情報か?ソーサラーのデイヴなんて名前は聞かねえ。この町に来たことあるのか?」
「信用できるかといえば、なんとも言えないのよぅ。もともと鉱石を探さないといけないのも、そのデイヴが絡んでることだから。」
「元のメンバーってのは、そういうことか。」
クララは下を向いて黙ってしまった。元のメンバーをあまり悪く言いたくもないのだろう。
「まあ、時間はかかるだろうけどね、自分でダンジョンの探索するんなら、応援するよ。うちの従業員に手伝わせてもいいよ。クッキーなら。ただし、クッキーも明日からはしばらく探索者ギルド、冒険者ギルドに通って講習だ。」
礼三が提案する。俺も協力することにやぶさかでない。が、講習・・・。
「え⁉」
「人手貸して貰えるんですかぁ?もちろんお礼はします。レイゾーさん、ありがとうございます。クッキーさん、宜しくお願いします。」
「クッキー、講習は全部及第点でストレートに終わらせるんだぞー。補習は無しで。履修するコースは僕が選んで申し込んでおくからね。それが終わらないと、役に立てないぞ。講習が済んだら、クララとレイドを組むってことで、鉱石探しだ。」
「わ、わかりました。」
この綺麗なお嬢さんとレイドを組むなら大歓迎なんだが。胡麻の調達はどうした?いや、それより講習が気になる。
「すみません、礼三さん。講習っていうのは?」
「ああ、そのままの意味だよ。ギルドでは、初心者から中級者に向けた講習をやってる。
「なるほど。自衛隊の訓練に近いような。」
頑張れば大丈夫なんじゃないかと思えてきた。それなりに体力と根性はあるつもりだ。
「
それは少し不安もあるが、礼三さんが使った火の魔法を見た限りでの自分の考えとしては、魔法とは言ってみれば飛び道具、自衛隊員にとっての89式小銃、戦車乗りにとっては滑腔砲みたいなものだろう。まあ、
かくして、
そして
複雑なのは魔法。大きく4系統あるとか。
魔法の習得は座学や実験も多いが、瞑想やイメージトレーニングを随分やった。
「マナには、シアン、マゼンタ、黄色、赤、青、緑、白、黒、グレー、クリアーの十色があって、それぞれ特徴が異なる。普通は分からないが、特殊な呪文や
教官に虫眼鏡のような道具を通して見せてもらったが、砂粒、いや、工芸のビーズのような物か。半分透き通り、風に揺れるかのように宙に浮いていた。
やがて野外での実践的な講習になり、地味にも思える生活上に使う魔法やら、魔物を狩猟するための呪文やらを憶えていった。
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