元伝承・あとがき・注意事項
*「夜十二時になり鏡の前で『瓜子姫』と言うと鏡の中の自分の頭がもげるが自分の首筋を触るとなんともない」
*「夜十二時になり鏡の前で『瓜子姫』と言うと鏡の中の天邪鬼が出て来て鏡の中へ引きずり込む」
*「夜十二時になり鏡の前で『瓜子姫』と言うと鏡の中の自分が鏡の中へ引きずり込む」
*「夜十二時になり鏡の前で『瓜子姫』と言うと鏡の中の天邪鬼が死神のような鎌を取り出して首を切りつける(この時鏡の中の自分の首ももげる)」
*「夜十二時になり鏡の前で『瓜子姫』と言うと鏡の中の自分の頭がもげるはずなのだが自分の首がもげなかった場合は首を隠して深く(布団の中に)潜って寝なければならない。顔を出した状態で寝ると天邪鬼が鏡の世界からやって来て鎌で首を刈る」
*流行期間:一九七九年、一九八〇年代、一九九〇年、一九九一年と推測(二次オイルショック~バブル期 ※地域、時期によって伝承内容が異なる場合がございます)
というのが当時の瓜子姫都市伝説の主な抜粋ですが、じゃあ鏡の中に引きずり込まれた当時の小中(高)生はどうやって生還してるんでしょうね?
ちなみに「瓜子姫と天邪鬼」で突然瓜子姫の家に押し入り瓜子姫をまな板の上に載せて裸にして包丁で瓜子姫をバラバラにする時の天邪鬼はハイヌヴェレ型神話の中で「刈り取る者」という死神の役割を果たしておりなんと現代の都市伝説でもハイヌヴェレ型神話を踏襲しているという証拠にもなります。元伝承は主に岩手県に広まるものですからもし、元伝承を知っててこの都市伝説を広めていた場合、瓜子姫都市伝説発祥の地は北東北ということまで突き止めることが可能です。瓜子姫というのはマイナー民話ですので該当地域以外の人が「鬼一口型瓜子姫伝承」を知っているとはちょっと考えにくいという理由もあります。ただ、天邪鬼が持っている武器が包丁ではなく死神のような鎌という部分が現代的でしょうか。現代と言ってももう三〇~四〇年前なのですが……。
従来の日本の死神は鎌なんて持ってないですから明らかに西洋文化の影響を受けております。また都市伝説の流行開始期間は一九七九年あたりですからファミコンつまりゲーム作品からの影響がないということも確認できます。ファミコンは一九八三年ごろに本格普及します。
天邪鬼が一見出てこない都市伝説でも筆者は鏡の中の自分の姿こそ「天邪鬼」だと思います。天邪鬼は相手の姿、声を真似ることが多いので。また天邪鬼は基本ツンデレですから構ってほしくて鏡に引き込んだと解釈するのが正しいような気がします。
鏡の中の世界、これを鏡界と言います。鏡界系の都市伝説で有名なのはカーブミラーですね。深夜二時に自分の姿が映っていなかったら鏡の中の異世界へ連れて行かれるという京都市の伝説が特に有名です。これはあるテレビ局が実践して何もなかったことがすでに証明されています。カーブミラーは深夜二時です。「夜十二時に異世界に連れて行かれる」……これは都市伝説あるあるのように見えて実はあまりないんです。たしかに合わせ鏡の都市伝説は深夜十二時なんですけど。
では鏡界から現世に戻るとき、時間差はあるのだろうか?
これは、筆者の推測でしかありませんが無いと思います。何となくですけど日付変更時刻というのは時のはざまのような気がします。だから夜12時に鏡の世界に行って必死に冒険しても戻るときは深夜12時のまま……のような気がします。「気がする」であって違うかもしれませんけど。
ということでこの都市伝説を考察したうえでオリジナルのアレンジを加えました。ただ筆者からお願いがございます。この都市伝説の考察をきっかけに自分も実践しようというバカなことだけはおやめください。物語としてお楽しみいただけたら幸いです。
そして、二〇二二年現在新たな瓜子姫伝承が追加されない限りこの伝承が「ラスト瓜子姫」伝承となります。
私は「都市伝説なんてくだらない」とは思いません。これも立派な現代の民話で社会人類学上の重要な研究テーマだと思います。だからこそこの都市伝説がほぼ消えかかっている二〇二二年の今こそ「民話」として伝えるべき都市伝説であると考え、執筆に至りました。
ただしこの都市伝説ももう誰も伝承しておらず文献に残っているのも非常に少ないです。なので拙著の瓜子姫シリーズから外し「元伝承無の完全な創作」扱いの作品として別枠に移動させることとなりました。
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