第四話

 以後夜十二時なって「瓜子姫」と言っても何も起きなくなった。


 「何だ、残念」と言いながら多忙な中学校生活を送るようになった。


 高校に行き、みんなバラバラになった。


 佳子は天邪鬼の警告をしっかり覚えていた。そこで手に職をつけるべく管理栄養士の資格を目指すべく栄養学部の道を選んだ。当時は栄養士や管理栄養士は嫁さん修業の場としてしかとらえられていなかった。ゆえに人気も低く、偏差値も低かった。


 大学に行くともう中学校時代の同期とほとんど会えなくなった。そんな時銀行や生保が次々倒産した。佳子は管理栄養士免許を持っていたために老人福祉施設の爆発的需要が幸いして全く超就職氷河期の影響を受けなかった。家から自立し、職場の近所にアパートを借りた。


 佳子はこうして二四歳になった。


 朝は四時から、夕方四時まで仕事というブラックな仕事であった。残業代など出ない。ゆえに職場全員夫探しに真剣であった。


 佳子は管理栄養士の仕事を2年と持たずに辞めてしまった。最後は職場の中で倒れこむような形で寝ていたという。


 体を回復させ退院し、実家に戻ると中学時代の瓜子姫のことを思い出した。佳子は元居た自分の子供部屋で生活する。


 中学校時代と変わらない鏡、変わったのは両親と私。父はリストラに会い早期退職を余儀なくされていた。父はまだ五五歳なのに……。


 家は滅茶苦茶だった。崩壊寸前であった。働いているのは母だけ。それもパートであった。家のローンは父が早期返済したおかげで一家全員ホームレスという最悪の事態だけは免れた。「佐藤」の表札がくすんでいる。


 「瓜子姫!」


 そういうと鏡の中の自分が鏡の世界に引き込む……。

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