第二話

 「京子、行けたわよ。鏡の向こう!!」


 「本当に? 私もそうだったの!!」


 「で……天邪鬼が死神のような鎌持ってて」


 「そうそう。全く同じ!!」


 「何言ってるんだ? てめえら」


 「「男子は黙ってなさいよ!!」」


 男の名前は市川和也。柔道部所属だ。


 「お前ら暇だな」


 やれやれというそぶりを見せる。


 「この受験戦争のご時世によくそんなのんきなこと言えるね」


 「……」


 「男はさ、偏差値五八未満の高校行ったら大学そのものすらほとんど行けないんだぜ。ガテン労働確定ってわけだ」


 「……」


 「女は短大とか逃げ道あっていいよな」


 (本当はうらやましいよ)


 「じゃあな!」


 (俺もこんなくっだらない世界から逃げられるのなら鏡の世界に行きたい)

 

 「あんな奴放っておこうぜ」


 京子も呆れ顔だ。


 「それよりポケベルで合図ね」


 佳子はポケベルを見せる。


 『12-10』(十二時実行)ね。


 「四人に呼び掛けるから。で、一斉に瓜子姫って唱える。塾終わったら鏡の前ね」


 「「うん、それじゃな」」


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