第一話

 勉強を終えて深夜のテレビ番組を見る佳子。


 「佳子~? もう寝なさいよ~?」


 「は~い」


 テレビを消し、鏡の前に立つ佳子。


 腕時計をはめて十二時になったかどうかを確かめる。


 そして十二時になった。


「瓜子姫!」


 鏡の前で言った。


(なんだ、やっぱり何も起こらないじゃん)


 そう思った矢先……。


 鏡の向こうに映ってる自分の首が突然もげて転がった!


 あまりの恐怖で言葉が出ない。そして小鬼らしき人物がやってきた。


 「君が瓜子姫?」


 そう言うと背中にあったまるで死神のような鎌を取り出し……鏡の外にいる自分に向かって切りつける!


 切りつけられたが血が出ない。そしていきなり小鬼が鏡の中に引き込んでいく。なすすべもなく佳子は鏡の中に引き込まれていった。


 鏡の中の世界は……。


 あれ? 自分の家じゃん。でも電気が付いてない。スイッチを入れようとしても付かない。


 「無駄だよ」


 佳子は振り向いた。


 「やあ、こんばんわ。僕は天邪鬼のラロ」


 「ここは……?」


 「ここは鏡の中の世界」


 (鏡の中!?)


 「脅かしてごめんね」


 「本当よ!! 首が取れたかと思ったじゃない!!」


 「本当に邪悪な人間は首が取れるんだよ」


 「えっ!?」


 「僕たち天邪鬼の別名は『刈り取る者』」


 (えっ? ってことは本物の死神!?)


 「最近、『瓜子姫』と唱えて鏡の中へ行くのが中学生の間で流行ってるらしいね」


 佳子は無言でうなずく。


 「ここは人間の負の感情を現した世界なんだ。だから君たちみたいな普通の子が着てはいけない」


 鬼は佳子をひっぱる。


 「だから、こっちに来て」


 一緒に連れて行ってもらうともっと大きな鏡があった。


 (家の中にこんなものあったっけ?)


 「ここで『天邪鬼!』って唱えてごらん」


 「天邪鬼!」


 すると鏡がどんどん渦巻く!


 そして鏡からの光でラロの姿が分かった。皮膚は赤色。額には小さい2本の角が生えている。たしかに鬼だ。


 「さあ、もうここに来てはいけないよ」


 どんと背中を押される。すると元の鏡の前に立っていた。


 「あ……ああ……あああ!」


 声にならなかった。


 「きゃー!」


 「うるさいわねえ、佳子」

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