第二回  『余命通告』


 という訳です。


 しかし、この通告には、続きがあります。


 次のような文面が付いています。


 『なお、合法的な手段で、一定の収入を得た場合は、通告期間の計算を修正する場合があります。通告残期間がなくなっても、通告されない限り、消去は行われず、消去通告後、次の通告時点までは実行されません。消去通告後に一定の収入が確認された場合は、消去が延期されることがあります。』


 つまり、大概のことが『……される場合があります。』なわけで、なにが、される場合なのか、そうではないのか、基準がはっきりしません。


 政府は、その基準を公表しておりません。


 曰く、『中央 コンピューターさんが決めることになっているため。』


 という訳です。


 そんな、いい加減なことで良いのか❗


 と、かつて、デモをした人々もありましたが、全員が、『コンピューター不服従罪』で、消去されたのです。つまり、いま、世界を牛耳っているのは、コンピューターさんなのです。おぞましいことです。政府は、コンピューターさんの作り出す、影にすぎません。 


 しかし、そんなことを実際に言っていたら、すぐに、コンピューターさんに察知されて、空中消去装置が飛んできて、消去光線がふりそそぎ、人間は、あっという間に煙になって、しゅわっと、消されます。


 しゅわっと、ね。


 それについては、忘れたくらい昔に、どこか別のお話がありました。

 


 ところで、コンピューターさんに、無事 認証された場合は、65歳をもって、この監視からは除外されるはずでした。


 しかし、ぼくみたいに、病気で早めに退職した場合とかで、役立たずとして、コンピューターさんに認証されないと、除外されません。


 認証されない場合とは、職場のリーダーなどが、『こいつは、だめなひとです。』として、不認証を上申した場合が、一番、主な理由です。


 それには、反論の余地がありません。


 といっても、働きに出る体力もなく、採用もされる余地がない、ぼくなど、にできるのは、とにかく、おうちの中のものを、リサイクルショップに、売りに出すことです。



 こういう社会ですから、リサイクルショップさんは、大概のものは、買い取ります。


 食器でも、コーヒーカップでも、ガラス戸でも、壁でも、柱でも。風呂桶でも。


 てなわけで、ぼくも、慎重に、おうちのあちこちを、削ったり外したりして、命をつないでおりました。


 そうして、やがて、さいごの柱を、近所のリサイクルショップさんに、ふらふらと、坂道を担いで持ち込んだのです。


 『ああ、なんだか、よく分からないけど、充実した人生だった。』


 ぼくは、なにもなくなったおうちの敷地のなかに座りこんで、思いました。


 敷地も、今日で所有権が移転されます。


 政府に売られるのです。


 まあ、これが、一番お高いものなので、奮励努力の甲斐があり、やっと、老人ホームで、あと、最大2年間生活することが、認証されました。


 しかし、ぼくは、ややこしい、がんだったのですが、小さな土地を売っても、がんを治療するだけのポイントには成らず、半年後には、他界しました。


 お葬式も、祭場でごく簡単に、人工僧侶の声で行われました。


 参列した人は、ありませんでした。


 ぼくを、認証しないように上申したのは、若い時代に、対立することが多かった、ある、上司だったのです。


 認証上申する権限があるのは、その人の最長  上司だったような人に限られます。


 また、他人を、認証しないように上申するのは、その相手の人の命を縮める行為でありまして、大抵は、あとで後悔することが多いため、あまり、みな、やりたがりませんが、やらないと、上司の役割を果たしていないと見られる場合もあります。まあ、ぼくは、よほど、嫌われたようでした。


 つまり、統計上、それを実行すると、なぜだか、大抵は、呪いみたいに、返ってくることが多いからです。


 その上司は、結局、外の誰かの上申により、やはり、65歳認定にはならず、退職後、すぐに、病気で亡くなりました。



 でも、どうやら、中央コンピューターさんが、適当にストーリーを仕組んで、楽しんでいる、というのが、本当らしいのです。 

  

 戦争も、やらせているらしいと、聴きます。


 良いのか、そんな世界で⁉️


 人類は、少なくなる一方です。 


 よく、コンピューターさんを、確かめよ。


 人類を、救え。


 いましか、ないのだから。


 







 


 


 


 


 


 

 


 


 


 

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『余命通告』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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