「水域」椎名誠

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「 ーーー流れろ。もっと流れていくことだ。 と、七本鰭はハルに話しかけた。 ーーー流れていく。もっと流れていく。 と、ハルは応えたのだった。」


出典:『 水域 』 椎名誠 より

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 今回は椎名誠さんの「水域」を、ご紹介します。


****** これは椎名誠SF三部作(「アド・バード」『水域』(本作品)「武装島田倉庫」)の二番目に当たる作品です。

 近未来と思われる、陸地がないらしく水に覆われた地球。

 その世界を小さな鬼曳舟(きびきふね)で漂う青年ハル。

 ハルが出会う人々。美しいズーとの出会いと、つかの間の愛の暮し。

 ―― これは漂い流れ続けていくハルの物語なのです。


 ◇


 椎名作品の特徴として、シーナワールドともいえる変てこな「名前」の数々があると思います。

 しかし椎名さんは、この名付けに関してほとんど説明しません。

 だから読者は、その奇妙な名前を当たり前のように突きつけられるわけです。

 でも不思議なことに、そのうち奇妙だったはずの名前が元から当たり前にあったような存在感を持ってきます。


 そして勿論、この物語でも出会いや別れ、事件も起きますが、それでも一貫しているのは” 流れている、流れていく ”ということ。

 非日常であるはずの漂流が、ここでは日常として描かれます。


 SFというよりもSF的と呼びたくなるような、この不思議な世界を、あなたもハルと一緒に漂流してみませんか。

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