「椿びより」「椿だより」イシノアヤ

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「 史生(ふみお)ちゃんの キャラメルは かすかに苦く とてもとても甘かった」


 出典:『 椿びより 』イシノアヤ より


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「 不可思議だけど うらやましいくらい なんだかとっても たのしそう」


 出典:『 椿だより 』イシノアヤ より

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 → 『 椿びより 』

 ****** 椿 太郎は都会に住む、おひとりさま男子。そんな椿が偶然再会したのは、中学時代の同級生でバツイチの平岩とその娘、史生。そんな二人と椿の緩やかで温かな交流と優しい日常が描かれます。


 この椿くん、巻き毛でおっとりとしていて妖精のような雰囲気です。

 手仕事を生業として淡々と、でも、ゆっくり丁寧に毎日を生きているのがわかります。

 そんな中での平岩との再会と史生との出会い。

 この作者さんの子どもの描き方、すごくいいですね。

 何げない表情とか仕草が大人目線の子どもじゃなくて。

 椿くん自身が子どもみたいな純粋さを持っているからか史生ちゃんとの絆が結ばれていく過程も温かくほっこりします。

 そして、いつの間にか平岩に” どっ…きん ”としている自分に気づいてその気持ちが何なのか戸惑う椿。

 元々、椿くんには男女や年齢で人を捉えるという意識は無いように思えます。

 そこにあるのは、自分の大好きな人、大切な人であるということ。

 三人の関係性は家族のようでありながら不思議で作者さんもあとがきで書かれているように” おとぎばなし的 ”です。

 でも自分の胸の中から恋心を見つけてそっと抱きしめるように大切にしている椿くんは可愛くて、このおとぎばなしの様なお話に体温を与えている気がするのです。


   ◇


 → 『 椿だより 』

 ****** 前作「椿びより」の続編です。 あれから5年が経ち、平岩の娘、史生は小学生になりました。 変わらないようで大切に積みあげられていく三人の優しい日々。


 この「椿だより」は刷り色が紺なんですね。(「椿びより」は黒でした)おしゃれだなぁ。

「椿びより」でもそうだったのですが、イシノさんの色づかいすごく好みです。

 そして、今作でも友人夫婦に赤ちゃんができ、史生ちゃんは小学生になったけど、相変わらずにゆっくりとした何でもない日常が描かれます。

 でも、この何でもない日々が読んでいてとても愛おしい。

 確かに三人のつながりが深くなっているのがわかります。

 椿くんは前作で平岩に対する恋心を意識はするけど、それが恋だと自覚していませんでした。 (これもすごく椿くんらしいと思う)

 でも今回、積み重ねてきた三人の時間を想い出しながら「あ!」と気づきます。

「 俺も 史生ちゃんと 平岩がだいすき だいすき 」

 とはいえ、これで大きく二人の関係が変わるわけでもないでしょう。

 きっとこれからも、ゆっくりと丁寧に日常を生きていくんだと思う。

 読み終わるのがもったいないような、何度でも読み返したくなる大切にしたいお話でした。



 この二冊のモノガタリに、わたしからも” だいすき ”と” ありがとう ”を……。

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