「からくりサーカス」 藤田和日郎
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「 この世の中に生まれた者は、誰のものでもないんだよ。
誰の操り人形でもなくて・・・
したいことは全部ちゃんと自分で選べるんだ。
ぼくらを造った神さまがいるとしたって・・・
そんなぼくらを、もう自分の人形なんて思わないと思う。
自分で考える物は、モノじゃない。
造ったところまでは神さまのお役目・・・
なんの糸にも操られずに自分で立って・・・
ちゃんと生きて
ちゃんと死ぬのが、
ぼく達の役目だ!」
***第58幕「勝の一喝」より抜粋
出典:『 からくりサーカス 』 藤田和日郎 より
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前回の「うしおととら」から引き続き、藤田和日郎 作品のご紹介です。
「からくりサーカス」は「週刊少年サンデー」で1997年から2006年にかけて連載された作品で、作者の二作目の長編になります。
遺産相続がらみで命を狙われる少年“ 才賀 勝(さいが まさる)”、人を笑わせないと死んでしまうゾナハ病にかかった男 “ 加藤 鳴海 ”、そして勝を守るために懸糸傀儡(あるるかん)を操る銀髪の美女“ しろがね ” 3人が出逢った時、数奇な運命の歯車は回りだします。
藤田先生の描く少年はみんな、弱さも持ち合わせているけれど真っ直ぐな視線で物事を見ることができる。
熱くなることは格好悪いことみたいになってしまっている世の中だけど、これは迷い転びながらも懸命に大切なものを見つけようとする少年の成長譚でもあります。
勝は気が弱いいじめられっ子でした。だから最初は鳴海にも しろがねにも守られていて自身も仕方ないと思っていたところがあります。けれども、鳴海が勝を救出するために爆発に巻き込まれ切断された片腕を残して行方不明になった時、自分の運命と向き合う決意をします。
鳴海と背中を合わせて戦える男になりたい、と。
藤田作品の登場人物達は(自動人形でさえも)とても人間的です。
そこには愛ゆえのすれ違いや葛藤、傷つき傷つけずにいられなかった苦悩があります。
それは憎んでも飽き足らなかったはずの最大の“悪”の存在へすら、哀しみと一抹の救いが与えられていることからも感じられるのです。
沢山の名台詞がある「からくりサーカス」ですが最後に心に残る台詞をもうひとつだけ。
◇
「 幸せが似合わない人なんて、いない。」 【勝】
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