「少年アリス」長野まゆみ

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「 睡蓮の開く音がする月夜だった。アリスは部屋の燈(あかり)を消して月光の射す、織り模様のついた敷布の上にに創り上げたばかりの石膏の卵を置いて眺めていた。磨き上げた表面は光を浴びて鍾乳石(しょうにゅうせき)のように瑞々(みずみず)しく光っている。」


 出典:『 少年アリス 』長野まゆみ より

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 静謐せいひつな世界を、そっと覗き見ているような……。

「少年アリス」の、この最初の部分で、わたしの心はすっかり魅せられたのでした。


 今日は、長野まゆみ作品の原点ともいえる「少年アリス」 を、ご紹介したいと思います。


 少女ではなく少年。

 幻想的でありながら感傷的でない端正で何処か硬質な繊細さ。


 アリスと友人の蜜蜂みつばち、そして蜜蜂みつばちの飼っている犬の耳丸みみまる

 

 長野作品に登場する名前や物は、その音の響きとともに、視覚からも、不思議な美しさで、わたし達を惹きつけてやみません。


 ソーダ水ではなくて曹達水、ガラス細工でなくて玻璃細工。 石膏の卵に、烏瓜からすうりり貫いて蛍星を入れて作った灯などなど。


 そして、蜜蜂みつばちの兄の忘れ物を取りに夜の学校へと向かった二人は、誰もいない筈の理科室で不思議な授業を覗き見ることになるのです………。


   ◇◇◇


 心に" 少年 "を今も棲まわせている全てのひとたちへ……。

 長野作品への入り口の扉🚪

 あなたもどうか開いてみてください。


   ◇◇◇◇◇◇


※長野まゆみさん、もう少し続きます。

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