「レモンとねずみ」石垣りん

 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

「 夏みかん

 そんなつややかさで

 苦労というものも

 たわわな実りかたをしてくれないか


 顔をしかめながらも

 むしゃぶりつきたくなるような 」


 ***「 夏みかん 」 より抜粋


 出典:『 レモンとねずみ 』石垣りん  より

 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


 今日は続けて、茨木のり子さんと交友の深かった石垣りんさんの詩集をご紹介したいと思います。


 この「レモンとねずみ」という詩集は、没後に童話屋さんから出版された第二詞華集(アンソロジー)です。

(第一詞華集は「空をかついで」同じく童話屋詩文庫)

「レモンとねずみ」には、石垣りんさんの未刊詩より40篇が収録されました。

 谷川俊太郎さんと茨木のり子さんの弔辞も収められています。


 石垣りんさんといえば「表札」が有名ですね。

(「表札」は「レモンとねずみ」ではなく、第一詞華集「空をかついで」に収録されています)


   ◆


「自分の住むところには 自分の手で表札をかけるに限る。 精神の在り場所も ハタから表札をかけられてはならない」

  ***「表札」より抜粋


   ◆


 この、きっぱりと潔い言葉。


 石垣さんの詩は綺麗なだけではありません。 等身大の生活者の視点から“生きる”ことのにがさ、悲しさ、心の叫びが描かれています。でも決して声高ではない。 力強くも温かく、時にユーモラスに詩人はうたいます。 そこには人間への愛おしさがあるのです。


 今回、第二詞華集である「レモンとねずみ」の方をご紹介したのは、この詩集が未刊詩の40篇を選んでまとめられているということと、谷川俊太郎さんと茨木のり子さんの弔辞も収められているというところから。

「表札」は知っているけど他の詩はあまり……という方に、是非読んでいただきたい詩集です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る