第24話

 田舎を象徴する地平を隠す山脈の果て、遠く手の届かない西の空に、一日の役割を終えた太陽が沈みかける夕暮れ時。

 遮蔽物の少ない朱に染まる町並みを、僕は血の繋がっていない姉と妹と共に、共通の帰るべき自宅に戻るためにのんびりと歩いている。

 一つ前の交差点までは隼人も一緒だったけれど、彼の家が建っている方向とはそこで道が分かたれるので、いい加減な挨拶を済ませて夕焼けに照らされる背中を見送った。


「やっと明日だねっ、おにいちゃんっ!」

「大袈裟に言われても、それほど長かったようには思わないけど」

「むーっ! 理奈がどれだけワクワクしてたか知ってるの? 理奈、毎日毎日、朝起きる度に『まだ今日じゃない~!』ってなってたんだからね?」

「月曜日に決めたことなんだから、たった四日だけじゃないか。四日間じゃ、大した日数とは言えないでしょ」

「違う違うっ! 四日〝も〟、だよ! 遠足の前の日みたいな状態がね、四日間も続いたんだよ? これならどれくらいすごいのか、おにいちゃんにもわかるよね?」

「単に気が早すぎるだけのように思うけど」

「理奈としては、これでも遅すぎるくらいだよっ! おにいちゃんとデートできるなら、遅くても一週間前から心の準備をしておきたかったのに!」

「四日前に約束をしたのに、それ以上の日数をどうやって確保するんだよ……」


 根拠もなく得意気に話をしている理奈は、時折頬を膨らませつつも上機嫌な様子で僕と姉の前を歩いている。


「あーっ!」


 唐突に理奈が叫び声に近い大声をあげて足を止めると、彼女はくるりと身軽に振り返った。僕と姉もつられて歩みを中断する。

 焦りとも後悔とも取れる眉根の寄った表情で、理奈は僕の瞳を低い位置から見上げてきた。


「おにいちゃんおにいちゃんっ! 大変だよっ! 理奈、大事なことをおにいちゃんに訊いてなかったよ!!」

「ど、どうしたの、そんなに慌てて」

「大変なんだよっ! 理奈、おにいちゃんに訊いておかないと駄目だったのに! もうデート明日なのにぃっ!」

「よくわからないけど、まだ明日までは時間があるんだから、間に合うんじゃないかな?」

「ほんと?」

「それは、内容を聞いてからじゃないとわからないよ」

「じゃあじゃあ、遅くなっちゃったけど、訊くね? おにいちゃん、明日は理奈にどんな服を着て欲しい? 理奈、明日はずっとおにいちゃんの隣を歩くと思うから、おにいちゃんが一日楽しくいられるように、おにいちゃんの好きな服を着て出かけるよっ!」

「そ、そう」


 妹の剣幕に若干気圧されつつ、二歩分ほど離れた位置で傍観を決め込んでいる姉を眇める。

 姉は口を挟む気はないようで、他人事のようににやにやと口元を緩めていた。

 この姉あって、この妹ありといったところか。実在しない姉妹である二人は、言うまでもなく血も繋がっていないし、性格だって全然違っているのに、どうしてこう面倒な部分は共通しているのだろうか。

 僕は妹の懇願を前にして、三週間前に姉に服装を選ぶよう命令された記憶を蘇らせていた。


「別に、僕は理奈が着たい服を着てくれればそれでいいよ。特にこだわりとかはないから」

「むーっ! おにいちゃんっ?」

「な、なに? なんか理奈、すごい怒ってない?」

「あたりまえだよっ! こういう時はね、どーでもいいっていうのが一番困るし、嫌がられるんだよ? だってそれ、相手に興味がないみたいじゃんっ!」

「いや……」


 その推察は決して間違いでもなかったけれど、素直に口にすることは流石に良心が咎めた。しかし続く台詞を思いつかず言葉に詰まり、結局怪しい空気になってしまう。


「もーっ! もしかして理奈の服装には興味ないって言うつもりなのっ? ひどいひどいひどいっ! 理奈はおにいちゃんのたったひとりの妹なのにっ! もっと大切にしてよっ!」

「そんな、興味がないなんてまだ言ってないじゃないか!」

「『まだ』ってなんなのっ! これから言おうとしてるってことなのっ?」

「いや、それは、そういう意味じゃなくて!」

「じゃあどういう意味なのっ? 理奈にちゃんと説明できるまで帰っちゃ駄目だよっ!」

「え、えーと……」


 つい墓穴を掘ってしまった僕は、作った穴を埋めるどころか更に広げてしまい、自らがそこに嵌るという間抜けな事態に陥ってしまった。

 妹に帰路を塞がれたまま、自宅のある住宅街の入口手前で立ち尽くす。

 僕は相変わらず状況を楽しむだけの姿勢を保っている姉に、今度は先ほどよりも強い眼光で視線を送った。


「ちょっとおにいちゃんっ! おねえちゃんに助けてもらおうなんて考えちゃ駄目だよっ! 理奈はいま、おにいちゃんに質問してるんだからね?」

「ち、違うよ理奈。僕がさっき言いかけたのは、姉ちゃんに選んでもらった方がいいって話だったんだよ」

「おねえちゃんが、選んだ方がいい? 理奈がデートに着ていく服を?」

「だって、理奈は女の子だよね。同じ性別の姉ちゃんの方が、女の子の服には詳しいはずだし、そっちの方がいいかなって思ったんだよ」

「だけど、理奈とデートするのはおにいちゃんなんだよ? おねえちゃんが選んだ服を着たって意味ないじゃんっ!」

「そんなことないって。僕は、姉ちゃんが選んだ服を理奈に着てほしいんだ。強いて言うなら、それが僕のリクエストになるかな?」

「むー……」


 我ながらうまい具合に補修できたように思うけれど、いまいち説得力に欠けていたのか、妹はもやもやと唇を尖らせている。

 今にも駄々をこね出しそうな様子のまま、彼女はようやく姉に目をやった。


「ねぇおねえちゃん。おねえちゃんは、おにいちゃんが好きなコーディネイトって知ってる?」

「知っているわよ。――って言ったら、理奈はどうするのかしら?」

「教えてってお願いする」

「誰に?」

「おねえちゃんに決まってるじゃん」

「ということは、デートに行くためにお姉ちゃんの力を借りるってことになるわよ? 理奈だけの成果じゃなくて、あたしと理奈の二人の成果になっちゃうわね? それでもいいなら、色々と相談にのってあげるわよ?」

「――っ!」

「どうするの理奈。これは当然のことだけど、あたしの助言を受け入れればお兄ちゃんを一日で陥落させることが可能よ」

「うぅぅー……」


 濁点がつくかつかないか微妙な発音で、地の底から何かが湧きあがってきそうな唸り声が妹の口から漏れている。

 姉に助けを求めたのは僕の咄嗟の判断だったけれど、まさかこんな結果になるとは思わなかった。彼女のことだから、簡単に手を貸そうとしない理由があるとは思うけれど、いったいそれは何なのだろう。

 静かに思考を巡らせ始めた瞬間、臨界点に到達した妹の焦燥が爆発した。


「うぅーっ! ――だめっ! やっぱり駄目ダメだめぇーっ! おねえちゃんのアドバイスはやっぱいらないっ! 理奈は、理奈だけの力でおにいちゃんを喜ばせないと意味ないもんっ! 理奈だけの魅力じゃないと価値が半減しちゃうもんっ! おにいちゃんもそう思うよね? 理奈とデートするなら、本当の意味で理奈だけの理奈の姿で来てほしいよね?」

「えっ? う、うん。まぁ、そうだね」

「うん? おにいちゃん、なんだかはっきりしないね? 理奈に言いたいことがあるなら、ちゃんと言ってほしいな」

「いや……僕は、理奈が正しいと思うやり方を取ってくれれば、それでいいよ。理奈が楽しめなかったら、僕も楽しめないだろうしね」

「わーっ! そこまで理奈に気を遣ってくれるなんて、理奈とっても嬉しいな! 絶対におにいちゃんが喜んでくれる服を選んでくるからねっ! 夜遅くになって眠くなっても、決めるまでは寝ないよう頑張るからっ!」

「う、うん。とりあえず、遅くまで起きてて寝坊しないように気をつけてね」

「そこは心配いらないよっ! だって理奈、今日はおにいちゃんのベッドで寝るって決めてるもんっ! 理奈が夜更かししても、おにいちゃんが起こしてくれるんでしょ?」

「……姉ちゃん、しっかり見張っておいてよ」

「そうね。それだけは見逃してあげないわよ。あなたのお姉ちゃんとして」

「むーっ! おねえちゃんのケチーっ!」


 話が落ち着くまでに想像以上の時間を要してしまったけれど、なんとか理想に近い形で着地できたようだった。あとは、姉が宣言通り妹の侵入を阻止してくれれば、妹に悩まされる回数は最小限に抑えられるだろう。

 姉にはもう一つ、あとで感謝しておかなければならないことがある。

 妹への助力を拒んでくれたことだ。

 僕は、妹が心から楽しみ満足してくれるように、精神状態も含めて完璧な状態で明日を過ごすべきだと思っていた。だから僕は、姉の手を借りることでオシャレをしてもらおうと提言したのだけれど、それは僕の押し付けでしかなかったと反省した。

 妹は、自分だけで成功を収めたいと願っている。自分一人の力でそれが出来るのだと、それこそが根底にある真実の願望のように思う。

 ならば、それを守らなければ願いは果たされない。

 妹の願いが残りなく完全に成就されなければ、樹木に変化は訪れない。

 目の前に吊るされた餌を獲得することに必死だった僕は、本命の標的を見失ってしまっていたらしい。

 姉がいなければ、ほぼ確実に泥沼に嵌っていただろう。

 今回の件だけじゃない。

 僕には、姉がいなければ――――。


「理奈、まったく関係ないけれど、一つ教えてくれるかしら」

「ん? なに、おねえちゃん?」


 知らぬうちに言い争いに決着をつけていた二人のうち、瞳に強い光を宿した姉が、能天気な表情の妹に喋りかける。

 さっきまで世界を朱に染め上げた夕日は既に九割沈んでおり、夜の帳が空から下りてきていた。


「朝は夕方を経由して、夜を迎える。一度は暗く閉ざされた世界も、同じだけの時間が経過すれば再び明るい朝が夜を地球の裏側に追いやってくれる。この世界は、この世界に住む人が誰一人としていなくなっても終わらない。たとえ住民が消えても回り続けるようにできているわ」

「ねぇおねえちゃん、変なこと言ってないで、訊きたいことがあるなら早く訊いてよ~!」

「……理奈、理奈の住むこの世界は、いつかなくなってしまうと思う? 理奈が両足で立っている地球のことじゃないわよ。あたしが定義している世界とは、地球を包む宇宙や、過去から未来までの時間全てを指しているわ。その世界が、いつか終わる可能性があると思うかしら?」

「むー……、難しいこと訊かないでよ。おねえちゃんはどう思うの?」

「あたしは理奈に訊いているのよ。理奈に答えてもらわないと意味がないわ」

「そんなこと言われたって、そんな難しいこと、理奈がわかるわけないじゃんっ!」

「なら、質問を少し変えるわ」


 姉が間を置いた隙に、紅い残り火を灯していた空が暗い海に沈んだ。


「もしも二週間後に世界が終わるとしたら、理奈は最後の時間をどうやって過ごすかしら?」

「世界が、おわる……? それって、二週間後に理奈が死んじゃうとしたら、死んじゃうまでをどうやって生活するのかってこと……?」

「理奈だけの終わりではないわ。理奈なんて、世界単位で考えれば見えないくらい小さな粒子の一つに過ぎない。ただ、世界に属している以上、理奈個人の死と世界の死は結び付くでしょうから、大雑把に捉えればその認識に間違いはないわ」

「難しいよ、おねえちゃん」

「考えて。理奈、二週間後に世界が終わるのよ。あなたが自分の意思で考えて行動できる時間は、あと二週間――時間に換算すれば、三三六時間しか残されていない。世界が終われば、あなたも終わる。喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、それらの感情を抱けるのは、まだあなたが生きているからなのよ。死ねば何も感じなくなる。時間制限付きの貴重な生命を、あなたならどんなことに費やしたいと思うのか、お姉ちゃんに教えてほしいの」

「…………理奈、わかんない」

「いいえ、あなたは知っているはずよ。あなたは、あたしと同じ存在であるはず。世界と密接に寄り添い、生命を共にする存在。だから、破滅の鼓動だって耳に届かずとも心に響いているはず」

「理奈……わかん、ない……」

「あなたは世界の破滅を感じられるはず。残りの人生で、あなたが最後に望むことは何? 叶えたい望みは、本当に優くんと二人の時間を過ごすことだけなの?」

「理奈……理奈……」

「答えるのよ理奈。これは、とても大切なことなの。比喩でも誇張でもなく、世界の命運を左右するくらいの――」

「理奈わかんないよっ!」


 姉に詰め寄られた理奈が、大声を張り上げて僕の背後に回り、僕が離れてしまわないように学生服の裾を引っ張った。

 脅威から隠れたいと願っての行動だろう。いうまでもなく、脅威とは姉のことで間違いない。


「おねえちゃん、なんか怖いよっ! 理奈、おねえちゃんに悪いことしたっ?」

「いえ、なんにもしていないわ。理奈、あたしは、別に怒っているわけじゃないのよ?」

「怒ってるよっ! だって怖いもんっ! おねえちゃんが怒ってなかったら、怖いなんて思うわけないもんっ!」

「誤解よ。あたしはただ、理奈の意見を聞きたかっただけなの」

「だったら理奈答えたじゃん! 『わからない』って。それが理奈の答えだよっ! ねぇおにいちゃん。おにいちゃんは、理奈が正しいって思うでしょっ?」


 背後から、攻められるような、それでいて汚れのない眼差しを向けられる。逃れるように正面に視線を戻すと、凛とした佇まいでありながらも当惑した瞳を携えた姉の姿があった。


「理奈が嘘をついていないなら、理奈が正しいと僕は思うよ。本当に、何もわからないのならね」

「ほんとだよっ! おにいちゃんも理奈を疑うの?」

「いや、信じるよ。理奈は正しい。理奈が悪いことはまったくないよ」

「そーだよねっ! なのに、おねえちゃんは理奈が嘘ついてるって言うんだよ。悪いのは理奈じゃなくておねえちゃんじゃんっ!」

「あたしは、嘘をついているなんて口にした覚えはないけれど」


 火花を散らしあう姉妹。またこうなるのかと肩を落としつつも、飛び散る火の粉の熱量が普段よりも熱いように感じられた。

 妹はいつも通りの態度と言葉遣いだけれど、姉はいつになく無愛想で意地を張っているように僕の目には映っている。


「理奈、姉ちゃんの言う通り、姉ちゃんは理奈が嘘をついたなんて一回も言ってないよ」

「じゃあなんで理奈に怒ったの?」

「怒ってもいないよ。姉ちゃんは理奈に質問したかっただけだって。説明が難しかったのは確かだけど」

「そうだよっ。理奈に訊きたいことがあるなら、ちゃんと理奈にわかるように話してくれないとわかんないよっ!」

「そうだね。そこは、姉ちゃんが悪いだろうね。――そうでしょ、姉ちゃん」

「え、ええ……。訊き方が良くなかったのは認めるわ。ごめんなさい、理奈。あなたを不快にさせるつもりはなかったのよ」

「むー……」

「機嫌を直してちょうだい。理奈のお願いを、無償で一つ聞いてあげるから」

「ぶー……」

「〝無償で〟というのは、本来なかった扱いになるわ。だから、ここで頼むお願いは、理奈を手伝ったことにはならないのよ? 許してくれるなら、一つだけ〝無償で〟願いを叶えてあげるわ」

「――っ!」


 なんとも露骨で見え見えの算段であるけれど、純真無垢で疑うことも知らず熟考もしない妹は、名案を閃いたといった明るい表情を浮かべる。


「いいこと思いついたっ! おねえちゃん、ちょっと耳貸してっ!」

「ふふっ。いいわよ~」


 僕の着ている学生服の裾にしわを残し、手を離した妹が今度は姉の方に駆け寄る。

 緊張を解いた姉は手玉に取った妹を前にして、彼女の要求に従い膝を屈めて片方の耳を差し出した。

 妹が口元を手で囲い、万が一にも僕に漏れ聞こえないように内緒の話を姉に伝える。残念ながら、大方の内容には見当がついてしまっていることが、隠そうとしている彼女に対してほんの少し申し訳なかった。


 ――それにしても。


 これまで踏み込まなかった領域に、姉が強引に足を踏み入れたことには驚いた。

 いくら妹が疑わしいと思いつつも、それは僕達だけの裏のやりとりでしか話題に出さなかった。

 彼女が確実に手がかりを握っていると推量しつつも、直接本人に確かめる行為は避けてきた。

 なぜなら、彼女もまた何も知らされていない、もしくは強固な意志で隠そうとしていると判断していたからだ。

 訊いたところで答えを知らないのだから意味がない。隠そうとしているのだから効果がない。

 しかし、大胆に直球的な質問をすることで、なにかしらの有益な情報が得られるかもしれないと唐突に思ったのだろうか。

 妹の願望の実現が救済に近づく条件とみなしたのは、僕達がそう推測したからだ。妹の願望が僕と共にいる時間を過ごすことだと判断したのも、僕達の勝手だ。

 これ以外に可能性はないと確信したから、僕は彼女の願望を叶えなければいけないと考えた。

 けれども、それが叶えるべき〝願望〟なのかを裏付ける証拠はなにもない。僕も姉も、命を張れるほどの自信があるわけではなかった。ましてや僕なんて、その推測に従えば自分を過大評価することになるのだからなおさらだ。

 もしかすると間違っているかもしれないけれど、やるだけやってみよう。僕としては、失敗しても自分に損失のない実験を行うくらいの気軽さで彼女の願いを叶えようとしていた。

 けれど姉は違った。

 姉は、なんとしてでも今回の件を無駄にしないため、妹の願望と僕達の想像が乖離していないか、行動に移る前に明らかにさせておきたかったのだろう。そのために、破滅なんていう物騒な単語まで持ち出した。

 妹が死ぬ前にやっておきたいことがあるとすれば、それこそが彼女の正真正銘の願いだと立証できるからだと思う。

 更に深く考えてみると、彼女が破滅という言葉を伝えたのは、単に願望の形を確認することだけが目的ではなかったかもしれない。

 憶測でしかないけれど、彼女は別のことも確かめておきたかったのだろう。だからきっと、嘘をつかれてもそれを見逃さないように集中を高めて精神を研ぎ澄まし、鋭利な刃物のような雰囲気をまとっていたのかもしれない。

 妹が、十三月について本当に何も知らないのかを見極めるために。

 そして、その結果は――。


「――そういうことだから、夜ご飯食べてお風呂入ったら、部屋にいてよねっ! 絶対だよっ!」

「そんなに念を押さなくても、わかっているわよ」

「絶対に、絶対だよ?」

「ええ。大丈夫よ」


 歳の数だけ交流を重ねてきた血縁の姉妹に見紛う二人を見るに、姉は妹を白と判断したようだった。

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