第五章「【誤】 ある少女への手紙」
手紙
一ノ宮王人は、怪死事件から四年の月日を経て、そこに辿り着いていた。
そこは、故エイデン・マクスウェルの家宅であり、既にもぬけの殻になっていた。
エイデン・マクスウェルは四年前に不慮の事故に遭い、その命を絶った。
もっとも、その事故はマクスウェルが交通道路に飛び出したことで撥ねられ、死亡したという内容で、催眠術師によるものという可能性は考えられていた。
この事故は不可解ではあったが、マクスウェルが少年ではなく成人男性であり、『非籍民』ではなく貴族の人間だったということで、『紫龍園連続怪死事件』に加えられることは無かった。
結局、民衆は自分達にとって『都合の良い』話題を語りたいだけだったのだ。
王人がマクスウェルの家宅を調査していると、どうやらそこは、既に誰かしらが調べ終えた後だということに気付いた。
しかし、彼は何かしらの手掛かりを得るために必死に捜索を続ける。
すると、床下に違和感があることに気付いた。
その違和感の正体は、床のタイルの一部が、色が違っているということだ。
彼は、藁にも縋る思いでそのタイルを力ずくで引っ剥がす。
すると、封筒のようなものが一枚、隠されているのを発見した。
それは、手紙だった。
誰に宛てたかはわからない、しかし、確かにある人物への謝罪を語る手紙だった。
手紙に記されていたのは、ある双子に関する内容。
そして、紫龍園の闇に脅かされた、自分自身の過去。
王人は最初、そこに記されていたことが信じられなかった。
しかし、それは間違いなく真実だと考えるに至った。
エイデン・マクスウェルが死の前に誰かに謝罪をしようとしたこと。
双子の娘について語ったこと。
紫龍園の闇を伝えたかったこと。
王人にとって、それは『都合の良い』真実だったのだ。
だからこそ彼は気付かなかった。
その手紙に書かれた内容の、たった一つの『誤り』を――。
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