第7話
ノール達が孤児院に帰ってくる頃には、今にも沈みそうなほど陽が傾いていた。遠くの眩い夕焼けが、森の中までも赤く染め上げている。
食材の入った紙袋を抱えるふたりが木々の間を抜けて孤児院に辿り着く。ふたりの姿を見るなり、庭にいた孤児達が近寄ってきた。出かける前にも会った三人組だ。
「ノールお兄ちゃん、メルトお姉ちゃん、おかえりなさーい!」
「うんっ! みんなただいま~っ!」
メルトが朗らかな表情を見せて手を振る。
ノールが挨拶を返さずにいると、女の子の一人が近寄ってきて、彼の着ている服の裾を引っ張った。
「ねぇねぇ、どうだったの?」
「あぁん? 何の話だ?」
「ノールお兄ちゃん、悪い王様を倒してきたんでしょお?」
「んなもんどうだっていいだろ。余計なことに首突っ込むんじゃねぇ」
ノールが口止めの意を込めてメルトを睨みつける。しかし鋭い眼光に気づかない彼女は、何気なく女の子に話しかけた。
「失敗しちゃったんだよ。やっぱり王様はそう簡単に倒せないみたい」
「へぇーそうなんだー。メルトお姉ちゃんでも勝てないのー?」
「一対一なら負けないと思うけど、王様にはたくさん仲間がいるからね。流石のあたしでも、何十人も相手にしたら勝てないよ」
「そうなんだー。王様って強いんだねー」
咎める暇もなく、幼い子供相手に物騒な話をするメルトを見てノールは呆れた。さりげなく自分の腕の自慢をしているのも困ったものだ。
口を挟んでも仕方がないので一旦置いておき、ノールは三人組唯一の男の子に尋ねた。
「マノリアは中にいるのか?」
「うん、いると思うよ。今日はずっと自分の部屋に引きこもってたけど、さっき出てくるのを見かけたから、いまはご飯を作ってるんじゃないかな?」
「そうか。ありがとな」
ノールは男の子に礼を言うと、頭をくしゃくしゃとかき混ぜるように撫でまわした。それからメルトを呼び、孤児院の玄関口へ向かう。
途中で一度振り返り、片手で抱えていた大きな紙袋から手のひらサイズの小さな包みを取り出すと、乱れた髪形を手で整えている男の子に放り投げた。驚きながらも包みを受け取った男の子が、不思議そうな顔でノールを見る。
「三人分しかねぇから、他の奴らにバレねぇよう気をつけろよ。あと、マノリアの奴にも言うんじゃねぇぞ。んなことしたら、二度と買ってきてやんねぇからな」
男の子が不思議そうに中身を確認する様子を、他の女の子達が背後から覗き込む。包装紙の止め具を解くと、こんがりと焼けたクッキーの香りが三人の鼻孔に広がった。
三人組は揃って無邪気な満面の笑みを浮かべてみせて、ノールに向かって大きな声で感謝を伝える。
ノールは僅かに笑みをこぼして、孤児院の中へと入っていった。彼の後ろを、子供に負けないくらい飾り気のない笑顔をしたメルトが続いた。
「それで、本は読み終わったのか?」
帰宅後、すぐに話を聞こうとしたノールだったが、孤児達の世話があるためマノリアに暇ができなかった。仕方なく夕食を終えて孤児達が寝付くのを待ち、再びマノリアの部屋を訪れた。
机の中央にあるランプで照らされたマノリアの室内には、ノールとマノリア、そしてメルトの姿があった。ノールとマノリアは昼間と同じように机を挟んで向かい合っており、メルトは難しい顔で室内をうろうろと歩き回っている。
ランプのすぐそばには、ノールが代読を依頼した本が閉じられた状態で置かれていた。周りの雰囲気もあってか、それは触れてはいけない禁忌のような、禍々しい存在のように感じられる。
「読み終わったよ~。ちゃ~んと全部、最初から最後まで、しっかりとね」
「で、どうだったんだ? どんな内容だった? 何が書かれていたんだ?」
「う~んとね~……」
人差し指を顎に添えて一呼吸を置いてから、マノリアは答えた
「おもしろかったよ」
間違いではないのだろうが、的外れな簡素すぎる回答にノールは口を尖らせる。
「あぁ? 普通の本を読んだ感想とは訳がちげぇんだぞ! つーか、だとしてももう少しまともな言葉は出てこねぇのかよ。いや、そんなのはどうだっていい。とにかく、俺が聞きてぇのはてめぇのガキみてぇな薄っぺらい感想じゃねぇんだよ! てめぇたくさん本を読んできたんだろ? それらに比べて、この本におかしな点はなかったのか?」
「う~ん、おかしなことって言われても~……ノールが出かける前に教えてくれたように、結末が悲しい以外には特に思い浮かばないよ?」
「そんなわけねぇだろ。親父が命と引き換えにしてまで手に入れた、トラヴィスを倒すための唯一の鍵なんだぜ?」
国王から二度奪われて、二度返された過去もあるが、ノールはその点については触れなかった。
「でも、ホントに変哲のない空想の物語が書かれているだけなんだって~。タイトルがないのは不思議だけどね」
「つまり、てめぇが読んだ限りでは、そう大層なもんには感じなかったっつーわけか」
「そうだよ~。突然文章が現れたのは謎だと思うけどね~」
ノールもその点については同感だった。内容については、もしかすると自分にしか理解のできない秘密が隠されているのかもしれないと思った。
参考に意見を聞いてみようと、彼は落ち着きなく室内を歩き回るメルトに目を向ける。
「メルト、てめぇも聞いてただろ? マノリアの話を聞いて、何か引っかかることはなかったか?」
「……うぅっ……うぅっ!」
声をかけてみたが、彼女は反応を示さず目を瞑り呻っている。
「おいメルト、聞いてんのか?」
声量を上げてもう一度声をかけると、彼女は立ち止まり、恐る恐る片目だけ開けて彼を見た。
「な、なぁに、ノール?」
「同じこと何度も言わせんじゃねぇ。てめぇはこの本についてどう思うかって訊いたんだ。マノリアは普通の本と変わらないって言ってるが、そんなことがあると思うか?」
「えっ、本……? ……本……ほん……うぅぅ……」
急に両手で頭を抱え、呻き声を交えながら〝本〟という単語を繰り返し呟き出す。
メルトの奇妙な反応に、ノールは背もたれに預けていた上体を起こした。
「おい、どうしたんだ? メルト、てめぇ何か知ってんのか?」
「……ほん……ほん…………うぅっ、うぅぅぅぅ!」
この反応は、明らかに忘れている何かを思い出そうとして苦しんでいる。なぜ彼女が国王の本についての情報を知っているのかは見当がつかないが、その記憶が蘇ってくれれば、目的に対して大きな一歩を踏み出せる。希望の光明を得られたと確信したノールは、メルトの口からこぼされる次の一言を待った。
ノールが注視していると、やがて彼女は顔を上げて、同時に大きな声で言い放った。
「もう無理っ! むりムリ無理っ!」
「ど、どうした? 思い出したのか?」
「あぁっ! もう限界っ! 本の話なんてされたって、難しすぎてあたしには全然わかんないよぉ!」
「……は? 難しい? てめぇ何言ってんのか全然わかんねぇぞ」
「うぅぅぅ……うん、わかった。お、落ち着く。落ち着くよ。落ち着くために、ちょっと身体動かしてくる!」
「はぁ? なんで身体を動かす必要があんだ――っておいっ! 待てっ! メルトっ!」
制止するノールの声を無視して、メルトは部屋を出て行った。マノリアが暢気に手を振って「いってらっしゃ~い」と平和そうに見送る。
廊下の先から足音が聞こえなくなり、ノールはマノリアを見た。
「いったい何だ? あんなに狼狽するメルト、初めて見たぞ」
「仕方ないわよ~。メルトはのんびりとしたところとか、やさしいところはお姉さんとよく似てるんだけど、本に対してだけは正反対なのよね~。お姉さんは本を読むことが得意だし、大好きなんだけど、メルトは本を読むのが苦手で、本という単語を聞いただけでも拒絶反応が起きちゃうのよ」
「なんだそりゃ……アイツの勉強嫌いには困ったもんだな」
「ノールはこの本について、メルトに一回も訊ねたことなかったの~?」
「そいつは、つい昨日までは価値のねぇ紙くずのまとまりでしかなかったからな。傍から見たらゴミに等しい物を持ち出して、なんて感想を求めりゃいいんだよ。そんなのは無理だ。だいたい、メルトはそいつを本と認識してなかったから、苦手意識も持っていなかったんじゃねぇか?」
「たしかに、そうかもね~」
相棒の奇妙な言動に得心がいって、ノールはやるべきことをするために立ち上がる。
「さて、マノリアもわかんねぇってんなら、俺も一通り読んで、てめぇの気づかなかった秘密が隠されてねぇか確かめてみるか。この本は持ってくぜ」
「うん、わかった~。力になれなくてごめんね」
「勘違いすんじゃねぇよ。重要な情報が記されてたとしても、そいつがマノリアじゃあ気づけねぇってのははっきりしたじゃねぇか。それだけで充分だ」
「わ~! ノール優しい~!」
「おい! 近寄ってくんな!」
素早く立ち上がったマノリアが、椅子から離れたばかりのノールに抱きつこうとする。咄嗟に彼は一歩後退して、彼女をかわした。マノリアが前のめりになり、修道服の裾をひらひらと踊らせて地面に転ぶ。
「おいおい、馬鹿かてめぇは。転んじまうとかどんな勢いだよ。恐ろしい奴だな」
「えへへ……嬉しすぎて、つい」
「なにが『えへへ』だ。もう少し歳相応の大人びた笑い方はできねぇのか」
「ノールは、大人っぽい方が好みなの?」
「どっちも嫌いだ」
ノールは本を手に取り、床にくっついたように座り込むマノリアを放置したまま部屋を出て行こうとした。
「そういえば、ノールの方はどうだったの~?」
「あぁん?」
「お姉さんが本を読んでる間、都で王様のことを調べてたんでしょ~? ほしい情報は見つかった?」
「ああ、そのことか……」
声をかけられて、ノールは足を止める。別に隠すつもりもなかったので、彼は立ったまま昼間あったことを話し始めた。
「気合いれて動向を調査するなんて抜かしたけどよ、大して苦労はしなかったな。なんせ向こうの方から出てきてくれたんだからよ。トラヴィスが城から下りてきたのは、自分の力を誇示するためだったみてぇだ。けっ……くだらなさすぎて考えんのもめんどうだが、まぁおそらく、自国の国民が八年前みたく反乱を起こさねぇよう釘を刺したつもりなんじゃねぇか」
「ノールは国王から忠告を受けたりしなかったの?」
「直接的にはなんもされてねぇよ。俺はな。だが、大層に広場に高台なんざ作って、偶然現れた脱獄者を大衆が見ている状況で殺しやがった。公開処刑ってやつだ。自分に逆らったらどうなるか、実際に反逆者の末路を見せつけることで教えたつもりなんだろうな」
話しながら、ノールの脳裏では昼間の光景が再現されていた。あの俯瞰的な態度と、なによりも罪人を殺した後の気味の悪い笑い声に、胸糞悪い嫌悪感を抱いた。
そして去り際に目が合った時の――そうだ、あれは確実に目が合っていた。あの時のトラヴィスの獲物を弄ぶようなふざけた視線、あれは間違いなく、次はお前がこうなるのだと語っていた。
「ねぇ、ノール」
「あぁ?」
つまらない記憶に不快感を覚えるノールに、マノリアが上目遣いで訊ねる。
「もしかして、王様と会う前って、買い物してた?」
「そりゃそうだろ。てめぇに頼まれたんじゃねぇか」
「殺されちゃった脱獄者の人って、剣を使って王様に襲いかかったの?」
「ああ。俺様の記憶が確かなら、あの男は結構な腕前だったはずだ。その割には、信じられねぇくらいあっさりと殺されちまったがな」
「後ろから、兵士さんの槍に刺されて?」
「ああ、そうだ――」
答えかけたノールが、会話のおかしな点に気がついて目を見張る。
「いや待て」
ありえないことだった。買い物の件はともかくとして、その後の事実を彼女が知っているはずがない。
「なんでそこまで知ってんだ?」
半ば脅すような形相のノールにも怯まず、彼女は平然と普段通りの落ち着いた様子で答えた。
「知ってるっていうか、同じなだけだよ? お姉さんも驚いたよ。だって、これじゃあまるで超能力者みたいじゃない」
「マジでその通りだ。見てもねぇのに知ってるなんざ、普通なら絶対にありえねぇ。つーか、〝同じ〟ってのは何だ?」
「同じなんだよ。本に書かれてる物語の展開と、ノールの話してる内容が」
マノリアの話を耳にした瞬間、ノールの脳内に多くの情報が駆け巡る。思考が爆発的に働き、いくつもの考えが浮かんでは消えていく。
トラヴィスの口にしていた予言とは何のことか。どうしてあの脱獄者は簡単に殺されてしまったのか。この本の正体とは。親父がこれでトラヴィスを倒せると思った理由は。そしてなぜ、トラヴィスはこの本を取り返さなかったのか。
様々な思考の渦にのまれ、揺られ、混乱に陥りそうになる。考えることを放棄したくもなったが、ここで逃げてしまえば、また両親の悲願を達成する日が遠のいてしまう。
ノールは頭を捻り続けて、過去の出来事と本を、ひとつの仮説で結び付けた。
それは到底ありえない考えだ。だから否定する必要があった。そのために、ノールは真偽を確かめようとする。
「どのページだ」
「えっ?」
「俺の話した出来事が記されてんのは、どのページだって訊いてんだ!」
机に本を叩きつけて、ノールはマノリアに振り向いた。さすがのマノリアも少しばかり焦った表情を露にして、さっと起き上がり表紙に手を伸ばす。
「えっ、えーと~、た、確か、この辺り……」
マノリアがページを送る手をとめて、隣にいるノールに視線を向ける。
「あ、あった! ここ。ここを見て!」
そこには、こう書いてあった。
〝男は刃を振り下ろすこともなく、背後から突き刺さった槍によって絶命した。〟
それだけではない。その一文の手前では、広場に国民が集められたことや、主人公が買い物をするなど、ノールの体験と酷似した文章が綴られている。
「なんだこれは……今日起きた出来事が、過去にあったことみてぇに書かれてやがる」
ノールが主人公に置き換わり、彼の周りで起きた事柄が過去形で記録されている。
本の物語では現実と似たような事件が起こっており、その都度物語の主人公がとった行動もまた、ノールの選択と一致していた。
トラヴィスの自信に満ちた態度を思い出す。
『私が未来を予知することができるからです』
あの男がそう告げた直後、彼の宣言した通りに罪人が現れ、そして無惨に殺された。
自然ではなく人の手によって起こされる事象を狂いなく言い当てるなど不可能だ。だから当時は、全てトラヴィスが予言通りになるよう仕掛けたのだと、余計なことを考えないためにそう解釈した。
だが、思い返してみれば違和感はトラヴィスと再会した今朝の時点で明確な形となって現れていたのだ。それが〝予知〟という単語を聞いた瞬間に和らいだのも否定の出来ない事実だ。
明言すれば認めることになる。
しかし前進するためには、まずは知らなければならない。
「あらかじめ未来に起こる出来事を知ってて、そいつをもとに物語に書いたのかもしれねぇ」
「未来の出来事を、本に? そんな超能力を使える人、ホントにいるのかな?」
「知るかよ。だがな、この物語の始まり方といい、主人公のとる行動や周りで起きる事柄といい、いくらなんでも似すぎてる。未来を予知なんざできるはずがねぇ。そう思いてぇが、そうでもなきゃ説明がつかねぇし、そう考えると納得ができちまう」
「じゃあ、この本の主人公はノールなの?」
「わかんねぇ。ただ、そう考えると、ここの文章はそのまま予言になる」
自分でも無茶苦茶だと疑いたくなるが、そう説明するとマノリアは困ったような顔を見せた。
「……だとしたら、ちょっとマズいかも」
「なに? この先にヤバいことでも書かれてるのか?」
マノリアに訊きつつ、自身でも答えを探そうとページをめくろうとする。
けれどもその必要はなかった。求めていた解答は、すんなりとマノリアの口から教えられた。
「その主人公、その後の展開で住んでいた家と家族を失っちゃうんだよ」
背筋に悪寒が走った。氷塊を当てられているかのように、急激に体温が低下する錯覚に襲われる。
本に伸ばしかけた手を止めて、ノールは存在を確かめるようにマノリアをまじまじと見つめた。
「え、えっと、確か、もう少し先だよ?」
どこに書かれているのか教えるよう促したわけではなかったが、マノリアは彼の目がそういう意図を含んでいるのだと受け取った。硬直してしまったノールに代わってページをめくると、開かれたページの右側の真ん中あたりを指で示す。
ノールが、指示された一文に視線を向ける。
そこには、他の文章と変わらない書体で、こう書かれていた。
〝盗賊に襲われた主人公は、住む場所と大切な家族を失った。〟
読んだ瞬間にノールは我に返り、慌ててその直前の展開を確かめる。
いつ起こる出来事なのか。まだ時間は残されているのか。関連する情報を調べるために、焦燥を額に浮かべて逆から本を読んでいく。
そうして、知ることができた。
主人公の家族が襲撃に遭うのは、主人公が困り事を家族に相談している場面の直後であることを。
「おい――」
逃げろ。
状況を理解して、ノールはそう命令しようとした。
彼が言い終えるまでに、部屋の扉が乱暴な音を立てて開かれる。
そこには、額から汗を流すメルトが立っていた。彼女はドアノブを握ったまま、悲鳴にも似た甲高い声色で告げる。
「マノリアさん、みんなを隠して! 表に危ない人達がいる!」
それが何者なのかなど、考えるまでもない。
眉尻を下げて混乱するメルトに、ノールは決然と宣言する。
「すぐに片付けるぞ」
本の展開がどうであろうと関係ない。まだ孤児達は無事なのだから、敵を無力化すれば同じ展開を辿ったりはしないはずだ。
一抹の不安は残っていたが、ノールはそれを表面に出さぬよう心中に押し留めた。
迎撃のために、ふたりがマノリアの部屋を出ようとする。
廊下に一歩足を踏み入れた時、不意にノールの袖が後ろから引っ張られた。振り返ると、マノリアの腕が彼を掴んでいる。彼女のもう片方の手には、例の本が握られていた。
「ノール、これを持っていって」
「こんな時になんだ。んなもん必要ねぇだろ。ここに置いときゃいい」
「じゃ、勝手にいれちゃうね」
「おい、んなことしてる場合じゃ……」
否定するノールの声も聞かず、マノリアは彼の道具袋の一つを開けると、そこに無理矢理本を押し込んだ。
彼はあまりに強引なマノリアの行動にたじろいだが、取り出す時間も惜しいのでそのまま外へ向かうことにした。
「……けっ、わぁったよ。ガキ共は任せたぜ、マノリア」
「大丈夫。そっちも頼んだよ、ノール、メルト」
「任せといてっ!」
ふたりは薄暗い孤児院の廊下を玄関まで駆け抜けて、〝盗賊〟の待つ外へ続く扉を押し開ける。
外敵との戦闘を前にして、この場所にある全てを絶対に守りぬかなければならない信念を抱きつつも、ノールは相反する懸念を頭の隅から拭いきれずにいた。
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