第15話 シールドの検証
森に降り立つとすぐに薬草採集に取りかかる。『やってしまって事が済むのなら早くやってしまった方が良い』とはシェークスピアの名言だったか。なのですぐに済ませられる事はさっさと済ませてしまう。
ヤムゴ草の採集の注意点を思い出しながら作業を続ける。
注意点の一つ目は葉の裏側を確認することで、葉の形が同じでも裏側が赤紫色の物がヤムゴ草でそうじゃなければ別の種類になるそうだ。鑑定スキルがあるからそれを使えば判別は簡単だが最初くらいは手抜きせずに真面目にやっていく。ちょっと楽しい。
二つ目の注意点は葉の部分だけ採集するということだ。何でも茎や根っこが残っていれば数日後にはまた葉が生えているそうだ。ファンタジーすぎるぜ。
とりあえず二人合わせて30枚のヤムゴ草を採集する。時間にして30分くらいだろうか。体内時計なので全然違うかもしれないが。
納品は三枚からで一人五回分になるがこれだけだと大した報酬にはならないが採集はこれで終わりにする。この後はちょっと実験をしたかったので川辺を探して歩き回る。
「それで何するんだ?」
「スキルの効果が
ゲームではスキルや魔法は決まった事しかできないがネット小説の主人公やその仲間が用途外の使用をすることが
MPの残りはまだ半分以上ある。なので俺は自身の手を基点に
「これの口の部分を上流に向けて川に入れた後に口を上にして引き上げるとどうなると思う?」
「そりゃ水が入った状態で引き上げられるだろ」
実際に試してみると大樹の予想通りになった。俺は一度そのシールドを消してもう一度同じようにシールドを作る。
「じゃあ次はどうなると思う?」
「水が入らないってか? ホントに?」
それを試すんだよ、とさっきと同じように水の中に入れてから引き上げて手元に持ってくる。
「水が入ってないというか濡れてすらいないな」
大樹がそんな感想を口にする。シールドを水に入れたときに抵抗が無かったので俺はそのときに気づいていた。
その実験結果からシールドを作るときに条件を付ければ防ぐものと素通りできるものを選択できるということだ。シールドというよりは結界に近いかもな。
「でもなんでこんな実験したんだ?」
「これからは野宿もすることになりそうだからな。シールドを張って寝られれば安全だろ?」
「モンスター対策か。確かに便利かも」
モンスター対策の面ももちろんあるが虫や毒持ちの生き物対策でもある。シールドの中に入った状態で自分の周りに展開できるのは実験済みだ。
「あとは水の確保だな。日本の水道水は世界一安全だから問題なかったけど、この世界の文明レベルが地球でいう中世くらいのものなら品質は良くなさそうだし、葡萄酒を混ぜるのはあるあるだから自分で調達できると便利だろ」
二十歳未満の飲酒はダメゼッタイ!
こちらのルールでは良いかもしれないけどそこは自分ルールを適用する。異世界に染まりすぎないための防衛策だ。
川の水は日本でも飲むと危ないと聞いたことがあるし異世界でもそれは変わらないだろう。でもシールドで不純物を除けば安全な水が手に入る。
通常のシールドで水を
「俺も安全な水が欲しいからストレージに入れてくれないか?」
「その必要はないんじゃないか? ストレージは任意に収納できるだろ。あと取り出すときも分けれるんじゃないか?」
俺はわざと川底の砂利も掬った濁る水を大樹のストレージに入れさせる。そして二つのシールドの箱の上に二つのストレージの出口を設置させて不純物と水をそれぞれ箱の中に出すように言うとそれぞれ別の出口から分けられて出てきた。
「今回はあえて小石を混ぜて分けさせたけど取り込むときに意識すれば飲める水だけストレージに入ると思うぞ」
俺のアイテムボックスの性能は先程の手間からお察しだ。
水の調達が終わった後は大樹のストレージの性能などを少し調べて街へ戻った。
「薬草の採集をしたので納品したいのですがこちらに提出でいいですか?」
「はい、こちらで大丈夫───ってどうしたんですかその姿は!?」
帰りは門から街に入ったわけだが他にも街に入ろうとしてた人がいて自分たちの番が来るまで結構な時間がかかった。手続き自体は冒険者の証で身元を確認できたからかあっさり終わったが、中に入ったら入ったで冒険者ギルドの位置がわからず歩いて探し回り見つけたときには日が落ちていた。イレギュラーな方法で外に出た事が原因だな。もうホント疲れた。
「相手がなかなか手強くて…」
「ヤムゴ草は襲ってきませんよ!?!?」
実際はストレージの実験で空気の収納を試したらひどい目に遭ったのだが秘密にしとく。冒険者は手の内を隠すものなのだ。
こうして初めてのクエストは終わった。
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