第14話 初めての依頼は
受付カウンターの有る場所まで戻ってきた俺は天に向かって手を掲げていた。その手にはGと記された冒険者の証があった。
大樹は横顔を見せながら背中で語り、腕を組んでる状態で左の二の腕から右手に持ったGランク冒険者証を見せていた。不敵な笑みがなかなか決まっているな。
決めポーズをする俺たちに冷ややかな視線を向けるマーガレットさんのことは気にしない。気にしたら敗けだ。
登録時の名前は偽名にしようか迷ったが名字は基本的には無さそうだったのでそのままにした。ギルドカードに記されてる名前は片仮名で表記されていた。
決めポーズはもう満足したので依頼を受けることにしマーガレットさんに訊ねる。
「それでしたら途中になってた依頼の種類の説明からさせていただきますね」
マーガレットさんは依頼書の見本を取り出して依頼書の見方を説明してくれる。
「まず依頼書の左上に記されてるアルファベットが受注可能を示すランクになります。お二人はパーティ登録してありますが人数が2人なので受注が可能なランクはGランクのみになります」
その言い方だと人数が増えれば上のランクも受注できそうだな。依頼書の見本にはBと記されている。
「依頼書によってはランクの表記が無くその位置に黒丸『●(黒丸)』の印になってるものがありますが、それは常設依頼という扱いになりまして依頼の受注手続きをしなくても条件を達成すればいつでも報告が可能です」
基本的にはどのランクでも受けられるものになるらしい。おそらくは需要の多い簡単な内容のものだろうな。
「次に大きく書かれているのが依頼の簡単な内容になります。そしてその下にもう少し詳細に説明文が書かれています」
依頼書には、『漆黒兎の討伐』 フルガ村の南西の森で目撃された漆黒兎の討伐。詳細はフルガ村の村長より説明されます。特徴:角の先端が欠けている。依頼の達成条件:個体の討伐確認。
漆黒って、中二病を患った兎かな?
「そして一番下に記されているのが報酬額になります」
報酬:金貨二枚 討伐個体は持ち帰り可。
通貨の価値はまだよく判らないが結構高いのかな? あと討伐個体は持ち帰り可って依頼によっては引き渡しを要求されるのか。
「この他にも護衛依頼などの場合は期間が記されているものもあります。あとは指名依頼がありますがEランクからが基本になりますのでそちらはランクが上がった時に改めて説明させていただきます。以上が依頼書の簡単な説明になります」
俺と大樹はナズナさんにお礼を言って一つ質問をする。
「薬草採取のような依頼はありますか?」
G級とはいえハンターの最初の依頼は採集クエストと相場が決まっているものなのだ。
「ヤムゴ草の採集依頼ですね。そちらは常設依頼になりますのでランクに関係なく受けられます」
ナズナさんは図鑑を取り出しヤムゴ草の特徴や注意事項などを教えてくれたのできっかりと聞く。ちなみに描かれていた絵は手書きだった。
俺たちはもう一度お礼を言って冒険者ギルドを出た。そして向かった先はスラム街だ。
「ところで何でスラム街に来たんだ? 薬草の採取に行くんじゃなかったのか?」
「今の俺たちはこの街に不法侵入してる状態かもしれないんだ。城壁で囲まれてる事からもそう考えて動いた方が良い」
ネット小説では作品によっては異世界から人が来るのがさほど珍しくなく現地世界の人に理解がある物もあるがたとえこの世界の人もそうだとしても極力隠した方が良いだろう。わざわざ教えることもない。
スラム街に来たのは門を通らずに外に出るためだ。スラム方面の城壁ならその上に衛兵が居なかったりこっそり通れたりしないかと思ったからだ。
だが現実はそんなに甘くなかった。衛兵は基本的に一人だが他の衛兵との距離は視認できる距離を保っていた。これだとこっそり通り抜けるのは難しい。
騒ぎを起こしてその隙を作ることも考えたがバレたときにはただでは済まないだろうから却下だ。なのでセカンドプランに移る。
セカンドプランは俺のスキルで作ったシールドを階段変わりに使い視認し辛い高さから越えるというものだ。
偏見かもしれないがスラムの住人なら衛兵とは友好的な関係ではないし接触は殆どないだろうからある程度目撃されても一回くらいなら誤魔化せると踏んだ。
スキルで作るシールドは意識すればある程度白く曇られる事ができることは実験で確認済みだ。なので
そこからの階段の進路はまずは城壁から離れる方向に出す。城壁の衛兵は外敵に注意してるので内側はあまり気にしてないだろうし距離は十分に取ってたが、登るごとに近づいては見られるかもしれないから念のためだ。
十分に高くなった頃に城壁方に進路を変える。その高さでは風が強かったのでMPの消費は増えるが周りを囲むシールドを固定のものに変更した。
そして城壁を越えて十分に距離を取って近くの森に降りたった。
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