第5話 不思議の実験
「MPはあれだろ? 魔法とか使うのに必要なやつ。スキルってのも使うとMPが減るやつだな。そういえば魔法とスキルって何が違うんだ?」
「知らん。ネット小説では説明ないのが多いし有っても作品毎にバラバラだな」
何かの作品では魔法スキルなんて言い方があった気がするし、以前やってたゲームではマジックスキルなんて呼び方だったので違いを訊かれても答えようがない。十分に発達した科学は魔法と見分けがつかないって言葉があるがどちらも不思議パワーだとより違いがわからなさそうだ。
そもそもネット小説の知識を頼りにするのが間違ってるのだろうが他に参考になるものが無いので仕方ない。
「分かり易いものだとスキルは画一的なもので魔法は精霊の力を借りて行使するものなんて説明もあったかな」
「まぁどちらも不思議パワーってイメージでいいか」
随分といい加減な結論だが考えても仕方ないのでそれで良いだろう。大事なのはその効果や性能だ。
「ストレージってのは知ってる。亜空間みたいな所に収納できるやつだよな?」
大樹が早速「ストレージ」とスキルの名称を口にすると、20センチ四方の黒い正方形が空中に現れる。俺は大樹に落ちてた野球ボールより少し大きめの石を拾って渡すと黒い正方形に向かって下投げで放る。
「あっ、と。ちゃんと入ったみたいだな」
「入ってる物はリストが出るのか?」
「いやリストが有るんじゃなくて、なんとなく脳裏に浮かぶ感じだな」
「さっき入れた石は出せるか? 手は使わずにだ」
大樹は地面の近くに平行にストレージを出すとそこから先ほど入れたと思われる石が落ちた。入れる前によく確認はしてないが多分同じものだろう。
「今度は手を使って取り出せるかやってみてくれ」
地面に落ちたさっきの石を地面に平行にして出したストレージに落とすように入れてから一度消し、大樹は自分の正面に出して手を入れようとしたがストレージをすり抜けてしまう。
「ん? 手で取り出すことはできないのか」
続けて『大きさを変えられるか』『複数のストレージを出すことはできるのか』『移動させられるか』を試す。結果はどれも可能だった。ただ移動に関しては大樹自身に追従する形だ。
「今度は座ってる石を入れれるか試してくれ」
「これは持ち上げるのは無理じゃないか? 二人がかりでもキツいだろ」
「そうだな。だから手は使わずにストレージを石に当ててやってみてくれ」
大樹は立つと座ってた石にストレージを使う。ストレージは平面なので石の高さの真ん中くらいに出たそれは見た目が黒い正方形に嵌まった大きな石といった感じだ。
「駄目だな。自重で落ちないかストレージを下の方に展開してもできないな。元から触れてると入れれないのか?」
一つ思い付いたことを口にする。
「ストレージは立体で出すことはできないか?」
紙は平面に見えるが厚みが無いわけではない。それと同じ理屈なら複数出せるストレージは立体で出すこともできるのではないか? そして案の定それは可能だった。
「おっ、できるな。出した後での大きさの変更も可能だ。これならこの石も入るか?」
今度は石をすっぽり覆うようにストレージが展開され消えた後には石の姿もなかった。
「うん、ちゃんと収納できたようだ。あの大きさのも入るんだな」
次はもう一度大きな石を対象に入れれるかを試す。だけど今度は完全にストレージで覆わないようにだ。結果は立体にすればある程度の範囲がストレージに触れていれば収納できるようだな。
それからも色々と大樹に試してもらう。
立体で展開したストレージからは収納してるものを手で取り出せるのか。これの結果は可能で本人曰く空中に固定されてて触れるようだ。しかし俺には触れなかった。
大きい石のほうは立体ストレージの大きさが石の体積よりも小さいと自重で落ちて出てくるようだ。危うく足に落とすところだったと大樹は冷や汗をかいていた。さらに立体ストレージが取り出すものよりも小さすぎると出すことはおろか触ることもできないという結果になった。
最後に野球ボールより少し大きめの石と靴を使って任意に収納できるかも試したらそれも可能だった。
「どれだけ入るかの容量の実験はまた今度機会があればだな。で、お次はもう一つのスキルの武具創造だが…これもまた今度だな」
「え、なんで? 面白そうだから今試してみたいんだが」
「変に周りに被害が出るとお尋ね者になるんだがそれでも試してみるか?」
ストレージは漫画などでは異空間への収納窓口くらいのイメージだったが、武器となると作品によっては馬鹿デカイものを召喚したりする。そうなると器物損壊罪で初日からブタ箱行きになってしまう。
「…それもそうだな。チンピラの件はお巡りさんに泣きつけないだろうけど普通の一般市民だと追われるようになりそうだ」
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