13話
「で、その目的っていうのが、尾行の手伝いかよ」
おれたちは今、セバスチャンの運転する車で、烏丸の乗っている黒塗りのベンツもといポルシェを尾行している。
車は目立たないように、普通の軽自動車をレンタルしてきた。
おれ達は毎度のごとく変装をし、セバスチャンも執事の燕尾服を脱ぎ捨て、ラフなTシャツ姿に着替えている。
烏丸の乗っている車が、例の歓楽街に入る。
「もしかして、ヤバくなったら、セバスチャンに歓楽街ごと一網打尽にしてもらおうとか思ってんじゃないだろうな?」
「そこまではさせないわ」
烏丸が車から出て来た。
運転席の男と共に、店に入る。家ではない、店だ。
「おい、嘘だろ……」
成績優秀、品行方正、皆の憧れの、あの烏丸凛が入った店はなんと、ホストクラブであった。
「ホストクラブ『Night Crow』……。夜のカラスって意味ね。烏丸君にピッタリ」
しかも、烏丸が入った入り口は、スタッフオンリーの方だ。それはつまり……。
「烏丸君は、ホストクラブで働いているということね」
おれ達の学校は、許可を取れば、アルバイトもOKということになっている。
もし、無許可でバイトしてるなんて知れたら、大問題だ。進路にかなり響く。推薦はまずもらえない。
「……これ、かなりヤバいよな」
「こんな所でバイトするなんて、学校に言っても許可もらえないものね。法に引っ掛かっているし」
……だよな。未成年就業法みたいなのに。
「あのさ、烏丸がホストやってるっていう噂を聞いたことがあるんだけどさ。多分、流した奴のひがみだろうけど、もしかして、おれ達以外にも知ってる奴がいるんかな?」
「ただのひがみね」
「適当な噂も当たるもんだな」
これを知ったら、流した奴はビックリだろう。
それに、白鳥だって、烏丸がこんなにヘビーな秘密を抱えてるとは思わなかっただろう。
「で、これからどうすんだ?」
「……彼、きっと何か事情があるのだと思うわ」
何もないのに、こんな所で働いてる訳がない。
「明日、潜入調査をするわ。それで、ここの責任者に話を聞く、その後、親とも話し合って……」
「せ、潜入⁉ ホストクラブにか? しかも、明日って! 急過ぎるぜ」
「勿論よ。……これは、烏丸君を救うためなのよ」
世の中には、知らない方が良いこともあるのだ。
おれも知りたくはなかったし、烏丸だって知られたくはなかったはずだ。
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