12話
「セバスチャンは、本場の英国執事なのよ。彼の淹れる紅茶は、高村君が淹れたものとは格が違うわ。月とスッポンよ」
おれは、そんな素晴らしい紅茶を飲みながら、セバスチャンの自慢話を聞かされていた。
「それに、セバスチャンが居れば、とても心強いわ。百匹のドーベルマンよりも一人のセバスチャンね。……セバスチャンをただの中年紳士だと思ったら、大間違いよ。昔、私がある組織に身の代金目的で誘拐された時、セバスチャンが一人で助けに来てくれたのよ。たった一人で、組織を壊滅に追い込んだのよ。アクション映画、顔負けよ。だって、空中飛び膝回転蹴りよ。CGではなく、本当に。あの技は『ライトニング・ドロップ』と勝手に命名したわ。それから、セバスチャンは『ライトニング・バトラー』として名を馳せ、様々な組織から恐れられるようになったのよ」
「とにかく、ツッコミ所が多すぎてどこからツッコんだらいいか、分かんねえよ。とりあえず、白鳥は中二病で、セバスチャンはスゲーってことでいいか?」
「中二病は訂正しなさい」
「ふふ、褒め過ぎですよ、美和子様。私はただの中年執事で御座いますよ」
銀髪で青い瞳のイギリス人だが、日本語は流暢。
日本人以上に丁寧だ。謙遜の心も学んでいる。
「あのさ、もしかして、セバスチャンを呼び戻したのはおれがお役御免ってことか?」
白鳥が一人暮らしを始めたのは、高校に入る前の春休みかららしい。つまり、それまではセバスチャンと住んでおり、今回呼び戻したということになるのだ。
「安心しなさい。あなたは一生扱き使ってあげるから。……セバスチャンを呼んだ目的は別よ。事が済んだら、帰国してもらうつもりよ」
別に、好きで下僕な訳じゃねえよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます