甘いブラックコーヒー(主人公が大人になるまでの話)
私はコーヒーが苦手だった。
小さい頃、飲んだコーヒーの味が怖かったからだ。 大人になるまで、コーヒーを飲むことはない。
今ならコーヒーの味を理解できると思ったので、久しぶりにコーヒーを飲もうと決めた。
とりあえず、コーヒーを淹れてみる。
今日はブラックコーヒーにでもチャレンジしようか。
ケーキも用意して、ひとときの休みを楽しもう。
ソファに座ってゆったりとブラックコーヒーを飲んでみる。
「あれ、おかしいな……」
不思議なことに、砂糖を入れていないブラックコーヒーなのに甘く感じてしまった。
私は自分の味覚に不安を感じてしまう。だけど、何か懐かしい感情も芽生えてくる。
「真っ黒なコーヒーは苦いと教えられていたのに、実際は甘かった」
そういえば、子供の頃に真っ黒のコーヒーを一口飲んだ時も、全く同じ現象が起きていた。
その時、いままで聞かされたコーヒーの先入観と子供にはまだ早いと悟った私が、大人になるまでコーヒーを受け付けないようにしていたことに気づく。
私は、そんな出来事に懐かしさを感じながら、もう一口コーヒーを飲んでみる。
「……やっぱり苦い」
この後、苦いコーヒーのはずなのに味覚が甘く感じる事は一度もなかった。
その後、私はよく喫茶店に通うようになった。
私はそれ以来、コーヒーの苦味や酸味、そして香りに魅力を感じて、今日は喫茶店のマスターとコーヒーについて語り合っていた。
そして数年ほど経つうちに、その頃の思い出はだんだんと薄れてしまう。
「私は大人になってしまった」
甘いブラックコーヒーを飲んでいた頃の私は、まだ子供だったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます